「契約した後になって、元請から『この資材はA社の製品を、B商店から買って使って』と言われた。いつもの仕入先より高いし、もう注文済みの資材もあるのに……」

こうした状況は、建設業法第19条の4が禁止する「不当な使用資材等の購入強制」にあたる可能性があります。ただし、資材の指定がすべて違反になるわけではありません。

この記事では、どのような場合に違反となるのかを、建設業法令遵守ガイドライン(第12版)7章に沿って整理します。


1. 建設業法第19条の4の内容

建設業法第19条の4は、次のように定めています。

注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはならない。

元請・下請の関係では、元請が「注文者」、下請が「請負人」にあたります(建設業法令遵守ガイドライン第12版 7章(1))。


2. 違反のおそれがある事例

ガイドラインでは、次の2つを違反のおそれがある事例として挙げています(同7章)。

  1. 下請契約の締結後に、元請が下請工事に使う資材や機械器具、またはその購入先を指定し、下請が予定していた価格より高い価格で購入することになった
  2. 下請契約の締結後、元請が指定した資材を買わせたため、下請がすでに購入していた資材を返却せざるを得なくなり、金銭面と信用面で損害を受け、それまで継続的に取引していた販売店との関係が悪化した

3. 違反になるための4つの要素

要素① 「契約締結後」の指定であること

規制の対象は、下請契約の締結後の行為に限られます(同7章(2))。

ガイドラインでは、その理由を次のように説明しています。建設工事の請負契約は元請の希望するものを作る契約なので、契約締結にあたって元請が資材や購入先を指定するのは当然のことです。契約前に指定されていれば、下請はそれに従って適正な見積りをし、適正な代金で契約できるため、利益が害されることはない、という考え方です。

要素② 取引上の地位の不当利用

取引上優越的な地位にある元請が、下請の指名権・選択権などを背景に、下請を経済的に不当に圧迫するような取引を強いることをいいます(同7章(3))。

要素③ 商品名や販売会社を指定すること

「資材等またはその購入先の指定」とは、「○○会社○○型」のように会社名や商品名を指定する場合や、購入先の販売会社などを指定する場合をいいます(同7章(4))。

要素④ 下請の利益を害すること

「利益を害する」とは、次のように金銭面・信用面で損害を与えることをいいます(同7章(5))。

  • 予定していた購入価格より高く買わざるを得なかった
  • すでに購入した資材を返却せざるを得なくなり、継続的な取引先との関係が極度に悪化した

逆に、元請が指定した資材の方が安く、返却などの問題も起きない場合は、利益を害したことにはならないとされています。


4. 元請が資材を指定したいときは「見積条件」で

ガイドラインでは、使用資材や購入先を指定する場合、元請はあらかじめ見積条件としてその項目を示す必要があるとしています(同7章(6))。

見積条件の段階で示しておけば、下請は指定品の価格を前提に見積りができ、トラブルを防げます。見積条件の示し方は「下請への見積依頼のルール」の記事をご覧ください。


5. 違反した場合の扱い

第19条の4は、許可行政庁の指示処分の根拠となる規定(建設業法第28条第1項)からは除かれており、独占禁止法との関係で扱われる仕組みになっています。

  • 建設業者が第19条の4に違反し、その事実が独占禁止法第19条にも違反すると認められるときは、許可行政庁は公正取引委員会に措置請求ができます(建設業法第42条。ガイドライン14-1章)。公正取引委員会の「建設業の下請取引に関する不公正な取引方法の認定基準」では、「購入強制」がこれに対応する項目とされています。
  • 発注者(独占禁止法上の事業者を除く)が第19条の4に違反した場合は、許可行政庁が発注者に勧告できます(建設業法第19条の6第1項)。

また、下請が購入強制の事実を許可行政庁や公正取引委員会などに通報したことを理由に、元請が下請代金を一方的に減額するなどの不利益な取扱いをすることは禁止されています(建設業法第24条の5)。ガイドラインでも、まさにこのケースが不利益取扱いの違反のおそれがある事例として挙げられています(同12章)。


6. まとめ

  • 規制されるのは「契約締結後」に、取引上の地位を利用して資材・機械・購入先を指定し、下請の利益を害する行為
  • 契約前に見積条件として指定するのは問題ない
  • 指定品の方が安く、返却などの問題も起きなければ利益を害したことにはならない
  • 通報を理由とした報復は、別途禁止されている

「契約後に資材を指定されて困っている」「自社の資材指定のやり方に問題がないか確認したい」という方は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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