工務店やリフォーム会社では、建設業に加えて、宅地建物取引業(宅建業)や建築士事務所を営んでいるケースが少なくありません。
そのとき問題になりやすいのが、「宅建業の専任の宅建士や、建築士事務所の管理建築士が、建設業許可の経営業務の管理責任者(経管)や営業所技術者等を兼ねられるのか」という点です。
常勤性の一般的な考え方は「【2026年最新】建設業許可の「常勤性」とは?」で解説しました。この記事では、兼業の場面に絞って、愛知県のFAQと国土交通省の建設業許可事務ガイドラインに沿って解説します。
1. 原則:他の法令で専任が必要な人は「常勤」と認められない
愛知県の「建設業許可に関するよくある質問と回答」(令和8年4月1日版)A2-17では、経管や営業所技術者等は「常勤性」が要件となっているため、次のような場合は常勤性が認められないことがあるとしています。
- ア. 住所が営業所から遠距離にあり、毎日の通勤が困難と考えられる場合
- イ. 他の業者の経管や営業所技術者等である場合
- ウ. 建築士事務所を管理する建築士や宅地建物取引業者の専任の取引士など、他の法令により専任を要するとされている者
国土交通省の建設業許可事務ガイドライン(【第7条関係】)でも、「役員のうち常勤であるもの」について、建築士事務所を管理する建築士、宅地建物取引業者の専任の宅地建物取引士など、他の法令で専任を要するものと重複する者は、専任を要する営業体及び場所が同一である場合を除き、「常勤であるもの」には該当しないとしています。
2. 例外:同一企業の同一営業所なら兼任できる
愛知県のFAQ A2-17では、上記ウについて、「ただし、同一企業の同一営業所である場合は兼任も可能」としています。
| ケース | 兼任できるか |
|---|---|
| 同じ会社の、同じ営業所で、宅建業の専任の宅建士と、建設業の営業所技術者等を兼ねる | 可能 |
| 同じ会社だが、宅建業の事務所と建設業の営業所が別の場所 | 認められない |
| 別の会社の専任の宅建士・管理建築士を、自社の経管・営業所技術者等にする | 認められない |
つまり、ポイントは「同じ会社」かつ「同じ場所(営業所)」であることです。
3. 注意:宅建士は「登記上の本店勤務」が要件
愛知県のFAQ A2-17では、さらに次の注意を加えています。
宅地建物取引業者の専任の取引士は、登記上の本店勤務が要件のため、建設業許可の営業所が登記上の本店と異なる場合は違反となりますので、ご注意ください。
たとえば、登記上の本店がA市にあり、建設業の主たる営業所をB市の事務所にしている会社で、同じ人をA市の本店の専任の宅建士と、B市の営業所の営業所技術者等の両方にすることはできない、ということです。
兼任を考える場合は、登記上の本店と建設業の営業所の所在地が一致しているかを必ず確認しましょう。
4. 経管の「他社の役員との兼務」も不可
兼業とは少し異なりますが、グループ会社で建設業と他の事業を分けている場合に注意したいのが、他社の役員との兼務です。
愛知県のFAQ A2-4では、経営業務の管理責任者は許可を受けようとする営業体で「常勤」でなければならず、仮に勤務場所が同じであっても、他社の常勤役員との兼務は認められないとしています。
5. 兼業事業だけを行う事務所は「営業所」にならない
愛知県のFAQ A1-7では、単なる連絡事務所や、建設工事以外の事業(兼業事業)を行う営業所は、建設業許可申請における営業所とは見なされないとしています。
たとえば、宅建業の店舗だけを行っている支店は、建設業の営業所として届け出ることはできません。建設業の営業所の要件は「「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」とは?」をご覧ください。
6. 決算変更届では「兼業事業」を分けて書く
兼業している会社は、毎年の事業年度終了届(決算変更届)で、建設業と兼業事業を区別して財務諸表を作成します。
愛知県の「建設業法による変更届等の手引(事業年度終了届編)」(令和8年4月)の記載例では、損益計算書で「完成工事高」と「兼業事業売上高」、「完成工事原価」と「兼業事業売上原価」を分けて記載しています。貸借対照表でも、完成工事高に計上した請負代金の未収額には兼業事業売上高に係る売掛金を含めず、兼業事業売上原価に係るものは別途「買掛金」に計上するなど、区別して記載するよう案内されています。
また、直前3年の各事業年度における工事施工金額の記載要領では、「その他」の欄に計上する施工高について、製造・販売・雇傭・委任などの兼業売上は除くとされています。
決算変更届の全体は「【愛知県版】建設業の事業年度終了届(決算変更届)完全ガイド」をご覧ください。
7. 宅建業者が発注者のときの帳簿の記載
建設業者の帳簿には、発注者と結んだ住宅新築工事について、床面積や住宅瑕疵担保責任保険法人の名称などを記載する必要があります。ただし、この「発注者」からは宅地建物取引業者が除かれています(建設業法施行規則第26条第1項第3号)。
帳簿の記載事項は「建設業の帳簿の備付けと保存期間」の記事で解説しています。
8. まとめ
- 専任の宅建士や管理建築士は、原則として建設業許可の経管・営業所技術者等の「常勤」と認められない
- ただし、同一企業の同一営業所であれば兼任できる
- 宅建士は登記上の本店勤務が要件のため、建設業の営業所が本店と異なると兼任できない
- 兼業事業だけを行う事務所は、建設業の営業所にならない
- 決算変更届では、兼業事業の売上・原価を分けて記載する
兼業している会社の許可申請では、「誰を、どの営業所の、どの立場に置くか」の組み立てが重要です。「宅建業と建設業の体制をどう組めばよいか」「兼任が認められるか確認したい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。
関連記事:建設業許可の「常勤性」とは?/建設業許可の取得に必要な「適切な経営体制」とは?/「営業所技術者等(旧専任技術者)」に必要な資格・要件一覧