「代表者が高齢になったので、建設業をたたむことにした」「ほとんど受注のない業種の許可を整理したい」——建設業許可は、取るときだけでなくやめるとき・減らすときにも手続きが必要です。
この記事では、建設業の廃業届について、建設業法と愛知県の「建設業法による変更届等の手引(変更届出書編)」(令和8年4月)、「建設業許可に関するよくある質問と回答」(令和8年4月1日版)に沿って解説します。
1. 廃業届が必要になる場合と届出者
建設業法第12条では、許可を受けた建設業者が次のいずれかに該当した場合、それぞれの者が30日以内に許可行政庁へ届け出なければならないと定めています。
| No. | 廃業等の理由 | 届出者 |
|---|---|---|
| (1) | 許可を受けた個人事業主が死亡したとき(相続の認可を申請しなかった場合) | 相続人 |
| (2) | 法人が合併により消滅したとき(合併の認可を受けなかった場合) | 消滅した法人の役員であった者 |
| (3) | 法人が破産手続開始の決定により解散したとき | 破産管財人 |
| (4) | 法人が合併・破産以外の事由により解散したとき | 清算人 |
| (5) | 許可を受けた建設業を廃止したとき(譲渡などの認可を受けた場合を除く) | 個人事業主本人、または法人の役員 |
愛知県の手引では、廃業届の届出者は理由ごとに法律で定められており、適法な届出者以外の者が届け出た場合は受理できないとしています。窓口で届出者の確認が行われるため、登記事項証明書や戸籍謄本など、届出者であることを証明できる資料を持参する必要があります。
2. 全部廃業と一部廃業
廃業届(様式第二十二号の四)には、「全部の業種の廃業」と「一部の業種の廃業」の区分があります。
2-1. 全部廃業
全部の業種をやめる場合は、廃業届を提出します。
愛知県のFAQ Q6-1では、全部廃業の廃業届を出したいが、事業年度終了届や変更届に未提出のものがあるという質問に対し、全部の業種を廃業する場合は廃業届のみの提出で足り、未提出の変更届などの提出は不要と回答しています。
2-2. 一部廃業
許可業種の一部だけをやめる場合は「一部廃業」の届出をします。
愛知県のFAQ Q6-2では、一部廃業の届出の際には、次の書類も必要になるとしています。
- その業種を担当する営業所技術者等を削除する届出書(様式第二十二号の三)
- 変更届出書の第一面・第二面(様式第二十二号の二)
建設業許可事務ガイドライン(【第12条関係】)でも、一部の業種の廃業の場合は、営業所技術者等証明書(様式第八号)による変更、または届出書(様式第二十二号の三)による削除が必要となるので、同時に提出させることとしています。
2-3. 愛知県の手引の事例
手引では、次のような事例が紹介されています(従たる営業所がない場合)。
事例1:大工と内装を担当している営業所技術者Aを削除し、大工を担当する営業所技術者Bを追加し、内装を廃業する場合
- Aを削除する届出書(様式第二十二号の三)
- Bを追加する営業所技術者等証明書(様式第八号)
- 内装を一部廃業する廃業届(様式第二十二号の四)
- 主たる営業所の業種廃止と営業所技術者等の変更の変更届出書(様式第二十二号の二 第一面・第二面)
事例2:大工と内装を担当している営業所技術者Aの担当を内装のみに変更し、大工を廃業する場合
- Aの担当業種を変更する営業所技術者等証明書(様式第八号)
- 大工を一部廃業する廃業届(様式第二十二号の四)
- 主たる営業所の業種廃止と営業所技術者等の変更の変更届出書(様式第二十二号の二 第一面・第二面)
営業所技術者等の変更届の区分については、「営業所技術者等が退職・交代したときの届出」の記事でも解説しています。
3. 愛知県で必要な添付・本人確認資料
愛知県の手引では、廃業の理由ごとに次のような資料が示されています。
| 理由 | 主な資料 |
|---|---|
| (1) 死亡 | 戸籍謄本等(相続関係と死亡年月日が分かるもの) |
| (2) 合併による消滅 | 消滅した法人の閉鎖事項証明書 |
| (3) 破産による解散 | 破産したことが確認できる登記事項証明書、または破産管財人の証明書(裁判所証明のもの) |
| (4) その他の事由による解散 | 法人が解散したことが確認できる登記事項証明書 |
| (5) 建設業の廃止 | 法人:登記事項証明書(届出時3か月以内、届出時点の代表者が分かるもの)の原本提示+本人確認資料 |
(5)の本人確認資料は、次の順で確認されます。
- 許可通知書、許可申請書副本、届出書副本のいずれかの原本を提示
- 提示できない場合は、事業所名が確認できる名刺・社員証など
- それも提示できない場合は、登記事項証明書に記載された役員の運転免許証など(個人の場合は事業主本人の運転免許証など)
手引では、登記事項証明書は本人確認書類ではないので、代行申請の場合も本人確認資料が必要だとしています。なお、一部廃業で経営業務の管理責任者等や営業所技術者等の変更を伴う場合は、本人確認資料の提示は不要とされています。
行政書士が代行する場合
理由(5)の場合は、代行申請でも本人確認資料に代えて、届出者からの委任状の提出が必要です(愛知県 変更届出書編)。
建設業許可申請の手引(申請手続編)では、廃業届の委任状の委任の範囲について、「以下の許可業種に係る建設業法第12条の規定に基づく廃業等の届出に関する一切の件 ○○工事業、○○工事業」のように具体的に記載するよう案内しています。
届出者の住所
変更届などでは届出者の住所に主たる営業所の所在地を書きますが、廃業届については、法人の場合は登記上の所在地、個人の場合は住民票の住所を記載します(愛知県 変更届出書編、FAQ A2-1)。
4. 許可が失効した場合
愛知県のFAQ Q6-3では、許可が失効してしまった場合、廃業届を提出する必要はないと回答しています。
建設業許可事務ガイドライン(【第12条関係】)でも、許可行政庁側の整理区分として、「廃業」「取消」とは別に「失効(許可の有効期間が経過しても更新の手続がとられていない場合)」が設けられています。
なお、失効後に改めて許可を受ける場合は新規申請となり、財産要件の確認も省略されません(FAQ Q3-2・Q3-6)。
5. 廃業届を出すと許可はどうなるか
廃業届の事由に該当するに至った場合、許可行政庁は許可を取り消さなければなりません(建設業法第29条第1項第5号)。建設業許可事務ガイドラインでは、国土交通大臣許可の場合、形式上の要件を満たした廃業届の提出があった日を、許可の取消しの日として扱うとしています。
廃業前に契約した工事
許可の取消しなどの処分を受けた場合でも、処分を受ける前に締結された請負契約に係る工事に限り、施工することができます。この場合、処分後2週間以内に注文者に通知しなければなりません(建設業法第29条の3第1項)。
6. 法人成りの場合
個人事業主が法人成りする場合、個人の許可について廃業届を出し、法人として新規申請する方法と、事業譲渡による承継の認可を受ける方法があります(愛知県FAQ A7-5)。承継については「【愛知県版】建設業許可の法人成り・承継ガイド」で解説しています。
7. 電子申請も可能
建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)では、廃業届も提出できます(愛知県 建設業許可申請の手引(申請手続編)Ⅶ)。
8. まとめ
- 建設業をやめたとき・業種を減らしたときは、30日以内に廃業届を提出する
- 届出者は理由ごとに法律で決まっており、適法な届出者以外は受理されない
- 全部廃業なら廃業届のみでよく、未提出の変更届などは不要(愛知県FAQ)
- 一部廃業は、営業所技術者等の削除・変更と変更届出書も同時に出す
- 許可が失効した場合は廃業届は不要
「廃業の手続きを任せたい」「業種を整理したいが、営業所技術者等の届出をどうすればよいか分からない」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。
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