決算変更届(事業年度終了届)のように「提出する書類」は意識していても、「社内で保存しておかなければならない書類」まで把握している事業者様は多くありません。
建設業法では、建設業者に帳簿の備付け・保存と営業に関する図書の保存を義務付けています。令和7年12月12日からは、保存の対象に見積書と打合せ記録も加わりました。
この記事では、帳簿と図書の保存義務を、建設業法施行規則と建設業法令遵守ガイドライン(第12版)13章に沿って解説します。
1. 建設業法第40条の3の義務
建設業法第40条の3は、建設業者は、営業所ごとに、営業に関する事項で省令で定めるものを記載した帳簿を備え、その帳簿と営業に関する図書で省令で定めるものを保存しなければならない、と定めています。
ガイドラインでは、次の3つを違反となる事例として挙げています(建設業法令遵守ガイドライン第12版 13章)。
- 営業所に帳簿と添付書類を備え付けていなかった
- 帳簿と添付書類は備え付けていたが、5年間保存していなかった
- 発注者から直接請け負った工事の完成図などの営業に関する図書を、10年間保存していなかった
2. 帳簿に記載する事項
帳簿の記載事項は、建設業法施行規則第26条第1項で次のように定められています。
① 営業所の代表者
- 氏名と、営業所の代表者になった年月日
② 注文者と結んだ請負契約
- 請け負った工事の名称、工事現場の所在地
- 契約年月日、注文者の商号・名称(氏名)・住所、注文者が建設業者の場合は許可番号
- 完成を確認する検査が完了した年月日、目的物を引き渡した年月日
③ 発注者と結んだ住宅新築工事の請負契約(発注者が宅地建物取引業者の場合を除く)
- 住宅の床面積
- 建設瑕疵負担割合(複数の建設業者が関わる場合)
- 住宅瑕疵担保責任保険法人の名称(保険で資力確保措置をとった場合)
④ 下請負人と結んだ下請契約
- 下請に出した工事の名称、工事現場の所在地
- 契約年月日、下請負人の商号・名称・住所、下請負人が建設業者の場合は許可番号
- 完成を確認する検査が完了した年月日、目的物の引渡しを受けた年月日
⑤ 特定建設業者が、資本金4,000万円未満の法人または個人である一般建設業者と下請契約を結んだ場合
- 支払った下請代金の額、支払年月日、支払手段
- 手形を交付した場合は、手形の金額、交付年月日、満期
- 一部を支払った場合は、その後の残額
- 遅延利息を支払った場合は、その額と支払年月日
3. 帳簿の添付書類
帳簿には、次の書類を添付しなければなりません(建設業法施行規則第26条第2項)。
- 契約書(建設業法第19条第1項・第2項の書面)またはその写し
- ⑤の下請契約の場合は、支払った下請代金の額・支払年月日・支払手段を証明する書類(領収書など)またはその写し
- 施工体制台帳を作成しなければならない工事の場合は、台帳のうち、技術者の氏名・資格、下請負人の商号・許可番号、下請工事の内容・工期、下請の主任技術者の氏名・資格などが記載された部分
3の施工体制台帳の部分は、目的物の引渡しまでは帳簿に添付しなくてよいとされています(同条第3項)。
4. 記載のタイミング
帳簿への記載と書類の添付は、請け負った工事ごとに、事実が生じたとき、または明らかになったときに、遅滞なく行わなければなりません。記載事項に変更があったときは、遅滞なく、変更年月日を付記して変更後の事項を記載します(建設業法施行規則第27条)。
5. 営業に関する図書
5-1. 保存すべき図書
「営業に関する図書」は、建設業者の立場によって次のように異なります(建設業法施行規則第26条第5項)。
| 図書 | 元請(台帳作成義務なし) | 元請(施工体制台帳の作成建設業者) | その他(下請など) |
|---|---|---|---|
| ① 完成図(作成した場合または発注者から受領した場合) | ○ | ○ | − |
| ② 工事内容に関する発注者との打合せ記録(相互に交付したもの) | ○ | ○ | − |
| ③ 施工体系図 | − | ○ | − |
| ④ 材料費等記載見積書(作成した場合) | ○ | ○ | ○ |
| ⑤ 契約締結前に必要に応じて作成した④の見積書の内容に関する注文者との打合せ記録(相互に交付したもの) | ○ | ○ | ○ |
④と⑤は、令和7年12月12日から加わったもので、下請の立場の建設業者も保存が必要です(「建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問」No.12)。
6. 保存期間
| 保存するもの | 保存期間 | 起算点 |
|---|---|---|
| 帳簿と添付書類 | 5年間(発注者と結んだ住宅新築工事に係るものは10年間) | 目的物の引渡しをしたとき(債権債務が消滅した場合はそのとき) |
| 営業に関する図書 | 10年間 | 目的物の引渡しをしたとき |
(建設業法施行規則第28条)
専任特例1号の「人員の配置の計画書」も
専任特例1号を使った工事の「人員の配置の計画書」は、帳簿の保存期間と同じ期間、その工事の帳簿を保存している営業所で保存しなければなりません(監理技術者制度運用マニュアル 三(2)①6))。
7. 電子保存も可能
帳簿の記載事項、添付書類、営業に関する図書は、電子計算機のファイルなどに記録し、必要に応じて営業所で画面表示や印刷ができれば、紙に代えることができます。添付書類はスキャナで読み取ったデータでもかまいません(建設業法施行規則第26条第6項〜第8項)。
8. 実務での管理のポイント
- 工事ごとにフォルダを作り、契約書・変更契約書・検査日・引渡し日などを記録する
- 見積書と、見積りに関する注文者との打合せ記録を、工事ごとにセットで保存する
- 住宅新築工事など10年保存が必要なものは、区別して管理する
- 引渡し後は、施工体制台帳の必要部分を帳簿に移す
中小建設企業のための内部統制向上ガイドラインでも、発注者とのやり取りなど重要な事項は記録を残し、関係者間で共有・引継ぎするルールを決めておくことが重要とされています。
9. まとめ
- 建設業者は営業所ごとに帳簿を備え、契約書などを添付する
- 帳簿は原則5年(発注者と結んだ住宅新築工事は10年)、営業に関する図書は10年保存
- 令和7年12月から、材料費等記載見積書と見積りに関する打合せ記録も10年保存の対象に(下請も対象)
- 電子データでの保存も認められている
「帳簿や図書の保存ルールを社内で整えたい」「電子保存に切り替えたい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。
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