「グループ会社から出向してきた技術者を、うちの現場の主任技術者にしたい」——こうしたご相談をいただくことがあります。
実は、出向社員の扱いは、営業所の技術者と現場の技術者で大きく異なります。営業所技術者等については、常勤性の観点から「【2026年最新】建設業許可の「常勤性」とは?」で解説しました。この記事では、現場に置く主任技術者・監理技術者として出向社員を配置できるかを、監理技術者制度運用マニュアルなどに沿って解説します。
1. 結論:営業所はOK、現場は原則NG
| 立場 | 出向社員を充てられるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 営業所技術者等 | 常勤性が確認できれば認められる | 愛知県「建設業許可に関するよくある質問と回答」A2-14 |
| 現場の主任技術者・監理技術者 | 原則として認められない(企業集団制度などの特例あり) | 同A2-14、「建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問」No.7 |
愛知県のFAQ(令和8年4月1日版)A2-14では、「出向社員であっても、常勤性が確認できれば営業所技術者等として認められます」としたうえで、「なお、現場配置技術者は原則出向者の配置が認められませんので、ご注意ください」と明記しています。
国土交通省のFAQ No.7でも、出向社員は基本的に現場技術者として配置できないが、企業集団制度を活用すれば配置が可能と回答しています。
2. なぜ現場の技術者はダメなのか
2-1. 「直接的かつ恒常的な雇用関係」が必要
現場の監理技術者等(主任技術者、監理技術者、監理技術者補佐)は、所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが必要とされています(監理技術者制度運用マニュアル 二-四)。
2-2. 「直接的な雇用関係」とは
マニュアルでは、直接的な雇用関係を次のように説明しています(二-四(2)①)。
監理技術者等とその所属建設業者との間に第三者の介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金、労働時間、雇用、権利構成)が存在すること
そのうえで、在籍出向者や派遣社員については、直接的な雇用関係にあるとはいえないと明記しています。
2-3. 「恒常的な雇用関係」とは
恒常的な雇用関係とは、一定の期間にわたりその建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていることに加え、技術者と建設業者が互いの技術力を熟知し、建設業者が責任を持って技術者を現場に設置できることなどをいいます(同(3)①)。
特に公共工事では、元請の専任の主任技術者・監理技術者、専任特例の場合の監理技術者、監理技術者補佐について、入札の申込みのあった日(指名競争で申込みを伴わない場合は入札執行日、随意契約の場合は見積書提出日)以前に3か月以上の雇用関係が必要です。
3. 例外となる特例
マニュアルでは、次の場合について、直接的かつ恒常的な雇用関係の取扱いの特例が定められていることを示しています(二-四(4))。
- 建設業者の営業譲渡・会社分割に係る場合(平成13年5月30日 国総建第155号)
- 持株会社の子会社が置く主任技術者・監理技術者の場合(平成28年12月19日 国土建第357号)
- 企業集団内の出向社員に係る場合(令和6年3月26日 国不建技第290号)
- 官公需適格組合における組合員からの在籍出向者の場合(令和5年3月13日 国土建第601号)
国土交通省のFAQ No.7では、企業集団制度を活用した技術者の配置について、「企業集団内の出向社員に係る監理技術者等の直接的かつ恒常的な雇用関係の取扱い等について」で詳細をまとめているとしています。
本記事の範囲について
企業集団制度の具体的な要件(対象となる企業集団の範囲、手続きなど)は、上記の通知で定められています。本記事の元にした資料には通知本文が含まれていないため、具体的な要件の解説は本記事の範囲外とします。制度の利用を検討する場合は、通知本文と許可行政庁の案内を確認してください。
その他のみなし規定
マニュアルでは、次のような取扱いも示されています(二-四(3))。
- 合併、営業譲渡、会社分割などの組織変更で所属建設業者が変わった場合、変更前の建設業者と3か月以上の雇用関係にある者は、変更後の建設業者とも恒常的な雇用関係にあるものとみなす
- 再雇用制度・勤務延長制度などの継続雇用制度の適用を受けている者は、雇用期間にかかわらず恒常的な雇用関係にあるものとみなす
- 震災などの自然災害の発生またはそのおそれがあり、最寄りの建設業者が即時に対応することが最も合理的で、その建設業者に要件を満たす技術者がいない場合など、緊急の必要その他やむを得ない事情がある場合は、3か月の要件の限りではない
4. 雇用関係の確認資料
直接的な雇用関係は、次のような資料で確認できることが必要です(マニュアル 二-四(2)①)。
- 監理技術者資格者証の写し
- 市区町村が作成する住民税特別徴収税額通知書の写し
- 健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書の写し
- 所属会社の雇用証明書の写し、またはこれらに準ずる資料
監理技術者資格者証には所属建設業者名が記載されており、所属建設業者名が変わった場合は、30日以内に指定資格者証交付機関に記載事項の変更の届出または新たな資格者証の交付を受けなければなりません(同(2)②)。
5. 派遣社員・業務委託はどうか
マニュアルでは、派遣社員についても直接的な雇用関係にあるとはいえないとしています(二-四(2)①)。
なお、専任特例1号で各現場に置く「連絡員」には、直接的・恒常的な雇用関係は求められていません(同 三(2)①4))。連絡員と主任技術者・監理技術者の要件を混同しないよう注意が必要です。
6. 一括下請負との関係
国土交通省の通知「一括下請負の禁止について」では、現場に元請と直接的かつ恒常的な雇用関係を有する適格な技術者が置かれない場合は、「実質的に関与」しているとはいえないとしています。雇用関係の要件を満たさない技術者の配置は、一括下請負の問題にもつながりかねません。
7. まとめ
- 出向社員は、常勤性が確認できれば営業所技術者等になれる
- 現場の主任技術者・監理技術者は「直接的かつ恒常的な雇用関係」が必要で、在籍出向者・派遣社員は原則として認められない
- 公共工事では、元請の専任技術者などに3か月以上の雇用関係が必要
- 企業集団内の出向など、通知で定められた特例がある
- 資格者証の所属建設業者名の変更は30日以内に手続き
「グループ会社間で技術者を融通したい」「この技術者を現場に配置して問題ないか確認したい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。