建設業許可の欠格要件に「暴力団員等」が含まれていることは、「建設業許可の「欠格要件」とは?」で解説しました。これは「自社の役員などが暴力団員等に該当しないか」という話です。

一方、現場の責任者として直面しうるのが、外部の暴力団員等から不当な要求や工事妨害を受けたとき、どう対応するかという問題です。

この記事では、国土交通省の通知「建設業からの暴力団排除の徹底について」(平成19年3月2日 国総入企第59号)に沿って、求められる対応を解説します。


1. 基本姿勢:断固拒否と警察への通報

通知では、従来から、建設業者があらゆる不正な要求に対し断固としてこれを拒否するとともに、暴力団員から暴力的要求行為その他の不当な要求による被害を受けた場合には、警察や暴力追放運動推進センターへ通報を行うことなどを求めてきたとしています。

そのうえで、暴力団員等からの不当要求や工事妨害等があった場合には、速やかに警察に通報するとともに、捜査上必要な協力にも努めるよう、建設業者団体を通じて建設業者に徹底を求めています。

「暴力団員等」とは

通知に添付された警察庁の依頼文では、「暴力団員等」を暴力団員、暴力団準構成員及び暴力団関係業者としています。


2. 公共工事の受注者に求められる「通報」と「報告」

2-1. 背景

通知では、政府の犯罪対策閣僚会議で、公共工事からの暴力団排除を徹底する観点から、暴力団員等から不当介入を受けた公共工事の受注業者に対し、警察への通報と発注機関への報告を義務付け、その実効性を担保する措置を導入することが合意されたと説明しています。

2-2. 地方整備局発注工事での措置

これを受けて、国土交通省の地方整備局が発注する工事では、現場説明書に次の内容を追加する措置がとられることとされました(通知 別添2)。

  1. 暴力団員等による不当要求または工事妨害(不当介入)を受けた場合は、断固としてこれを拒否するとともに、不当介入があった時点で速やかに警察に通報を行い、捜査上必要な協力を行うこと
  2. 警察に通報し、捜査上必要な協力を行った場合には、速やかにその内容を記載した書面により発注者に報告すること
  3. 不当介入を受けたことにより工程に遅れが生じる等の被害が生じた場合は、発注者と協議を行うこと

2-3. 義務を怠った場合の措置

同通知では、地方整備局発注工事で、不当介入を受けた請負者が警察への通報や発注者への報告を怠ったことが確認された場合の措置として、次のものを挙げています。

措置内容
指名停止または文書注意指名停止の期間は原則として2週間。指名停止を行わない場合は書面による注意喚起(文書注意)
工事成績評定の減点指名停止を受けた者は10点、文書注意を受けた者は8点減点
公表指名停止の理由として、通報や報告を怠った旨を明記して公表
下請等の禁止指名停止を受けた者について、下請等の承認をしない
表彰からの除外指名停止または文書注意を受けた者を、優良工事施工団体表彰の対象から除外

適用範囲についての注意
ここで紹介した措置は、平成19年の通知で、国土交通省の地方整備局が発注する工事について定められたものです。地方公共団体など他の発注者の工事での扱いは、それぞれの発注者の契約書、現場説明書、指名停止の措置要領などで確認してください。各発注者の具体的な運用は、本記事の範囲外とします。


3. 通報した建設業者は保護される

通知に添付された警察庁の依頼文では、公共工事受注業者が通報や捜査上の協力を行った際には、不当介入を行った暴力団員等の迅速かつ確実な取締りを実施すること、そして通報や協力を行った公共工事受注業者の保護対策に万全を期すことについて、警察庁から各都道府県警察に周知徹底されているとしています。


4. 現場での対応の流れ(通知の内容を整理)

通知の内容を、現場での対応の流れとして整理すると次のとおりです。

  1. 拒否する:不当な要求には応じない
  2. 通報する:不当介入があった時点で速やかに警察に通報する
  3. 協力する:捜査上必要な協力を行う
  4. 報告する:公共工事では、通報・協力の内容を書面で発注者に報告する
  5. 協議する:工程の遅れなどの被害が出た場合は、発注者と協議する

現場の責任者が一人で抱え込まず、会社として対応できるよう、社内の報告ルールをあらかじめ決めておくことが大切です。中小建設企業のための内部統制向上ガイドラインでも、企業の信用やコンプライアンスに関わる重要な問題については、すぐに情報をつかめる体制を持ち、迅速に対応することが不可欠であり、報告・連絡・相談の仕組みを整備することが重要だとしています。


5. 建設業許可との関係

建設業法では、暴力団員等が役員等であるなどの場合は許可の欠格要件に該当し、許可を受けた後に該当するに至った場合は許可の取消し事由になります(建設業法第29条第1項第2号)。

国土交通省の「建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問」No.47では、脅迫などの犯罪行為を受けた場合は、職場の所在地を管轄する警察署に相談するよう案内しています。


6. まとめ

  • 暴力団員等からの不当要求・工事妨害には、断固として拒否し、速やかに警察に通報する
  • 地方整備局発注工事では、通報・捜査協力と、書面による発注者への報告が求められている
  • 怠った場合は、指名停止(原則2週間)や工事成績の減点などの措置がある
  • 工程に影響が出た場合は、発注者と協議する
  • 社内の報告ルールを整え、現場任せにしない

「現場で不当要求を受けたときの社内マニュアルを整えたい」「公共工事の受注にあたって必要な対応を確認したい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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