営業停止処分を受けた建設業者の方から、最初にいただく質問は「今やっている工事は止めなければいけないのか」「見積りの依頼が来たらどうすればいいのか」というものです。
この記事では、営業停止期間中にできること・できないことを、国土交通省の「建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問」と建設業法の規定に沿って整理します。
監督処分の全体像は「建設業者の監督処分(指示・営業停止・許可取消)の基準」の記事をご覧ください。
1. 営業停止処分とは
許可行政庁は、建設業者が建設業法第28条第1項の各号に該当するときなどに、1年以内の期間を定めて、営業の全部または一部の停止を命ずることができます(建設業法第28条第3項)。
営業停止には、地域、業種、公共工事かそれ以外かといった限定が付される場合があります。
2. 営業停止期間中に「できない」こと
FAQ No.27では、営業停止期間中にできない行為として、次のものを挙げています。
- 新たな建設工事の請負契約の締結(仮契約などに基づく本契約の締結を含む)
- 処分を受ける前に締結した請負契約の変更であって、工事の追加に係るもの(工事の施工上特に必要があると認められるものを除く)
- 1・2と、営業停止期間満了後の新たな請負契約の締結に関連する入札、見積り、交渉等
- 地域限定が付されている場合は、その地域内での1〜3の行為
- 業種限定が付されている場合は、その業種に係る1〜3の行為
- 公共工事またはそれ以外の工事の限定が付されている場合は、その工事に係る1〜3の行為
特に注意したいのは3です。停止期間が終わった後の契約に向けた見積りや交渉も、停止期間中はできません。
3. 営業停止期間中に「できる」こと
FAQ No.28では、営業停止期間中にできる行為として、次のものを挙げています。
- 建設業の許可、経営事項審査、入札の参加資格審査の申請
- 処分を受ける前に締結された請負契約に基づく建設工事の施工
- 施工の瑕疵に基づく修繕工事等の施工
- アフターサービス保証に基づく修繕工事等の施工
- 災害時における緊急を要する建設工事の施工
- 請負代金等の請求、受領、支払い等
- 企業運営上必要な資金の借入れ等
つまり、処分前に契約していた工事は、原則として施工を続けることができます。
4. 処分前の契約に基づく工事を続けるときの注意点
建設業法第29条の3では、営業停止を命じられた者について、次のように定めています。
4-1. 注文者への通知(2週間以内)
処分前に締結された請負契約に係る工事に限り施工することができますが、処分を受けた後2週間以内に、その旨を工事の注文者に通知しなければなりません(第1項)。
4-2. 注文者は30日以内なら契約解除ができる
注文者は、通知を受けた日、または処分があったことを知った日から30日以内に限り、請負契約を解除することができます(第5項)。
4-3. 施工の差止め
許可行政庁は、公益上必要があると認めるときは、その工事の施工の差止めを命ずることができます(第3項)。
5. 役員等にも営業禁止が及ぶ
営業停止を命じる場合、法人であればその役員等と、処分の原因について相当の責任がある一定の使用人(処分前60日以内にその地位にあった者を含む)に対しても、停止期間と同じ期間、停止の範囲の営業を新たに開始すること(その営業を目的とする法人の役員になることを含む)が禁止されます(建設業法第29条の4第1項)。
「別会社を作って営業を続ける」といったことはできない仕組みになっています。
6. 取引先の立場から
営業停止中の業者と取引する側にも注意点があります。
- 建設業者が、情を知って、営業停止を命じられている者や営業を禁止されている者と、その停止・禁止の範囲の下請契約を結んだときは、指示処分の対象になります(建設業法第28条第1項第8号)
- 取引先の処分歴は、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で確認できます(愛知県「建設業許可に関するよくある質問と回答」A7-2)。詳しくは「取引先の建設業許可・行政処分歴の調べ方」の記事をご覧ください
7. 営業停止処分に違反すると
営業停止処分に違反した場合は、許可を取り消さなければならないとされています(建設業法第29条第1項第8号)。さらに、この場合は、役員等に対し5年間の営業禁止が命じられます(同法第29条の4第2項)。
個別の事案で判断に迷う場合は、各許可行政庁に問い合わせるよう案内されています(FAQ No.27・28)。
8. まとめ
| できないこと | できること |
|---|---|
| 新たな請負契約の締結 | 許可・経審・入札参加資格審査の申請 |
| 処分前の契約の追加工事に係る変更(施工上特に必要な場合を除く) | 処分前の契約に基づく工事の施工 |
| 新規契約に関連する入札・見積り・交渉(停止期間満了後の分を含む) | 瑕疵修繕・アフターサービスの修繕工事 |
| (限定がある場合)その地域・業種・工事区分の上記行為 | 災害時の緊急を要する工事 |
| 代金の請求・受領・支払い、資金の借入れ |
- 処分前の契約に基づく工事は、2週間以内に注文者へ通知して施工を続けられる
- 注文者は30日以内なら契約解除できる
- 営業停止に違反すると許可取消し
「営業停止処分を受けたが、進行中の工事や取引先への対応をどうすればよいか」というご相談も、お気軽に当事務所へお寄せください。