「毎回契約書を作るのは手間なので、注文書と請書のやり取りで済ませている」——継続的に取引している元請・下請の間では、こうした運用が多いのではないでしょうか。

注文書・請書による契約そのものは可能です。ただし、一定の要件を満たさないと、建設業法第19条違反になります。この記事では、国土交通省の通知「注文書及び請書による契約の締結について」(最終改正 令和7年9月30日)に沿って、その要件を解説します。


1. 注文書・請書だけの契約は違反になり得る

建設業法第19条第1項では、契約書に法定事項を書いて相互に交付することが求められています。

建設業法令遵守ガイドライン(第12版)2-1章では、基本契約書を交わさず、または契約約款を添付せずに、注文書と請書だけ(またはどちらか一方だけ)で契約した場合は、同項違反となる事例として挙げられています。

一方、「建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問」No.19では、注文書と請書を利用する契約は「可能です」と回答し、前述の通知を案内しています。つまり、正しい形式をとれば問題ないということです。


2. 2つのパターンと要件

通知では、次の2つのパターンについて要件を定めています。

パターン①:基本契約書+注文書・請書

当事者間で基本契約書を締結したうえで、個々の取引は注文書・請書の交換で行う方法です。次の要件をすべて満たす必要があります(通知1.(1))。

  1. 基本契約書に、個別の注文書・請書に書く事項を除き、建設業法第19条第1項の各事項を記載し、署名または記名押印して相互に交付する
  2. 注文書・請書には、同項第1号〜第4号の事項(工事内容、請負代金の額、工事着手・完成の時期、工事を施工しない日・時間帯の定め)その他必要な事項を記載する
  3. 注文書・請書に、「ここに書かれていない事項は基本契約書の定めによる」旨を明記する
  4. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名または記名押印する

パターン②:注文書・請書+契約約款

基本契約書を交わさず、注文書・請書の交換だけで行う方法です。次の要件をすべて満たす必要があります(通知1.(2))。

  1. 注文書・請書のそれぞれに、同じ内容の基本契約約款を添付する
  2. 約款には、個別記載事項を除き、建設業法第19条第1項の各事項を記載する
  3. 注文書・請書と約款が複数枚になる場合は、割印を押す
  4. 個別記載欄に、同項第1号〜第4号の事項その他必要な事項を記載する
  5. 個別記載欄に、「ここに書かれていない事項は約款の定めによる」旨を明記する
  6. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名または記名押印する

3. 署名・押印を省略できる3つの条件

パターン①(基本契約書+注文書・請書)の場合、次の3つの要件をすべて満たすときは、注文書・請書への署名または記名押印は必ずしも必要ないとされています(通知1.(1)④ただし書)。

No.要件
(ア)注文者が、消費者契約法第2条第1項に規定する「消費者」でないこと
(イ)基本契約書の締結時に、注文者と請負者が、建設業法令遵守ガイドラインの考え方に従い、対等なパートナーシップに基づく関係にあることを相互に確認すること
(ウ)基本契約書の締結時に、注文者と請負者が、両者の間で反復継続的な取引実績が蓄積されていることを相互に確認すること

なお、契約金額や工期などを考えて、双方の合意で署名・押印することは妨げられません。

また、これらの要件を満たしたうえで、電磁的措置(電子メールなど)で注文書・請書を交付する場合も、建設業法第19条第3項(電子契約の規定)が適用されることに注意が必要です。


4. 注文書・請書による契約の変更

注文書・請書で結んだ契約を変更する場合は、次の方法によることができます(通知2.)。

(1) 変更内容が注文書・請書の個別記載事項だけの場合

  • 注文書・請書の双方に変更内容を明記する
  • 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名または記名押印する(パターン①で上記3要件を満たす場合は、署名・押印を省略できる場合があります)

(2) 個別記載事項以外の事項も変わる場合

  • 変更内容を書面に記載する
  • 署名または記名押印して相互に交付する

5. 実務上の注意点

5-1. 「注文伝票」は契約書類にならない

施工体制台帳に添付する契約書類について、「施工体制台帳の作成等について(通知)」では、建設業法第19条第1項の事項を網羅していない注文伝票などは、ここでいう書類に該当しないとしています。注文書・請書の形式でも、法定事項が網羅されていることが前提です。

5-2. 注文書だけでは許可申請の資料としても弱い

愛知県の「建設業許可に関するよくある質問と回答」(令和8年4月1日版)A2-9では、経営業務の管理責任者の経験確認資料として、工事請負契約書がなく注文書しかない場合は、注文書と入金が明確に分かるもの(通帳や預金取引明細票など)の写しを提出するよう案内されています。日頃から適切な形式で契約しておくことは、将来の許可申請でも役立ちます。


6. まとめ

  • 注文書・請書による契約は可能だが、基本契約書または約款との組み合わせが必要
  • 注文書・請書には工事内容・代金・工期・施工しない日時などを記載し、それ以外は基本契約書(約款)による旨を明記する
  • 基本契約書がある場合、3つの要件をすべて満たせば署名・押印を省略できる
  • 変更時も、個別記載事項かどうかで手続きが異なる

「今の注文書・請書の運用で問題ないか確認したい」「基本契約書を整備したい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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