「印紙代もかからないし、そろそろ電子契約に切り替えたい」「元請から電子契約サービスで契約してほしいと言われたが、建設業法上問題ないのか」——電子契約についてのご相談が増えています。
建設工事の請負契約は、建設業法第19条第3項により、一定の要件を満たせば電子契約で結ぶことができます。国土交通省は令和7年9月30日に「電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン」を施行し、要件を具体的に示しました。
この記事では、そのガイドラインに沿って電子契約のルールを解説します。
1. 電子契約の法的な位置づけ
建設業法第19条第1項・第2項では、契約内容を書面に記載し、署名または記名押印して相互に交付することが求められています。
同条第3項では、これに代えて、契約の相手方の承諾を得て、国土交通省令で定める情報通信技術を利用した方法(電磁的措置)で契約することができ、その場合は書面での措置を講じたものとみなされます。
建設業法令遵守ガイドライン(第12版)2-1章(4)でも、書面契約に代えて、CI-NETなどによる電子契約も認められるとしています。ただし、電子契約でも契約書の法定記載事項はすべて記載しなければなりません。
2. 要件①:相手方の「事前承諾」
電子契約をするには、あらかじめ次の2点を行う必要があります(建設業法施行令第5条の5、電磁的措置ガイドライン2.)。
(A) 電磁的措置の種類と内容を示す
示すべき内容は次のとおりです(建設業法施行規則第13条の5)。
- どの電磁的措置を使うか(サービスの名称も示すことが望ましい)
- ファイルへの記録の方式
ガイドラインでは、記録の方式として、契約書データの形式(PDFなど)、使用するソフトウェアの形式やバージョン、電子署名やタイムスタンプの形式などを示すことが望ましいとしています。
(B) 書面または電磁的方法で承諾を得る
承諾は、書面のほか、電子メールやクラウドサービス、CDなどの電磁的記録媒体で得ることができます(建設業法施行規則第13条の6。ガイドライン2.(B))。
なお、相手方から電子契約を使わない旨の申出があったときは、再び承諾を得ない限り電子契約はできません(建設業法施行令第5条の5第2項)。
3. 要件②:使える方式
電子契約に使える措置の例として、ガイドラインでは次のものを挙げています(同3.)。
- 電子メール
- ファイル転送サービス、クラウドサービス(非対面)
- クラウドサービス(対面)
- CDなどの電磁的記録媒体
クラウドサービスなどで契約事項を相手の閲覧に供する方式の場合は、記録した旨を相手方に通知するシステムであることが必要です(建設業法施行規則第13条の4第3項)。ただし、相手方が閲覧したことを確認したときは、この限りではありません。
4. 要件③:3つの技術的基準
電子契約は、次の3つの技術的基準に適合しなければなりません(建設業法施行規則第13条の4第2項)。
| 要件 | 規則の内容 | ガイドラインで示された措置 |
|---|---|---|
| 見読性 | 相手方がファイルを出力して書面を作成できること | ディスプレイや書面に速やかに表示できるようにする。契約成立後は自らの端末に保存することが望ましい |
| 原本性 | 改変が行われていないか確認できる措置を講じていること | 公開鍵暗号方式による電子署名、タイムスタンプ、またはこれらと同等の効力がある方法を利用する |
| 本人性 | 相手方が本人であることを確認できる措置を講じていること | 第三者機関(特定認証業務を行う事業者など)が発行する電子証明書を添付することが望ましい |
4-1. 見読性のポイント
電子契約では、契約データが当事者の端末に直接保存されないこともあります。ガイドラインでは、必要なときにいつでも見られるよう、契約が成立したらすぐに契約書データを自社の端末に保存するなどの対応が望ましいとしています。記録の適切な管理や検索機能の実装も望ましいとされています。
4-2. 原本性のポイント
建設工事の請負契約は、金額が大きく期間も長いことが多いため、改ざんされていないことを確認できる契約書が重要だとされています。
5. 電子署名サービスを使うときの注意点
ガイドラインでは、電子署名の方式として次の3つを紹介しています(同4.)。
- 当事者署名型(ローカル署名):当事者が自分の署名鍵で、第三者を介さず契約する
- 当事者署名型(リモート署名):当事者が自分の署名鍵で、第三者の契約サービスを介して契約する
- 事業者署名型(立会人型):契約サービスを提供する第三者の署名鍵を用いて契約する
3の事業者署名型を使う場合は、次の点に注意が必要とされています。
- 原本性について:技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたことが担保されているサービスを使うこと
- 本人性について:真の契約当事者が電子署名したことを証明するため、2要素認証などを利用することが望ましい
6. その他の注意点
- 電子署名法のほか、電子文書の保存に関する法律や電子帳簿保存法など、関係法令の要件にも注意が必要です(ガイドライン5.)
- 電子契約を締結した場合の施工体制台帳の取扱いについては、「電子契約を行った場合の施工体制台帳の取扱いに関するガイドラインについて」(令和5年)で示されています
- 注文書・請書の交換を電子メールなどで行う場合も、建設業法第19条第3項が適用されます(「注文書及び請書による契約の締結について」)
- 帳簿に添付する契約書類や営業に関する図書は、電子データで保存することもできます(建設業法施行規則第26条第6項〜第8項)
7. まとめ
- 建設工事の請負契約は、相手方の事前承諾を得れば電子契約で結べる
- 承諾の前に、使う電磁的措置の種類と記録の方式を示す
- 見読性・原本性・本人性の3つの技術的基準を満たす必要がある
- 事業者署名型のサービスを使う場合は、2要素認証などで本人性を補強する
電子契約の導入は、印紙代や郵送の手間を減らせる一方で、要件を満たさないと「書面で契約していない」ことになりかねません。「承諾書の書式を作りたい」「導入予定のサービスが要件を満たすか確認したい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。