「ICTの活用」と聞くと、ドローン測量やICT建機のような大規模な話を想像される方も多いかもしれません。しかし、令和6年の建設業法改正では、施工管理のデジタル化について、特定建設業者に新たな努力義務が設けられました。

建設キャリアアップシステム(CCUS)については「【愛知県版】建設キャリアアップシステム(CCUS)導入のメリットと建設業許可への影響を解説」で解説しました。この記事では、建設業法第25条の28と、国土交通省の「情報通信技術を活用した建設工事の適正な施工を確保するための基本的な指針」(令和6年12月13日公表)の内容を解説します。


1. 建設業法第25条の28の内容

項対象内容
第1項特定建設業者工事の施工の管理に関する情報システムの整備など、適正な施工を確保するために必要なICTの活用に関する措置を講ずるよう努める
第2項発注者から直接請け負った特定建設業者下請負人が、第1項の措置の実施に必要な措置を講ずることができるよう、下請負人の指導に努める
第3項国土交通大臣第1項・第2項の措置の指針を定めて公表する

第3項に基づいて定められたのが、前述の指針です。

公共工事では下請も対象

指針では、公共工事については、入札契約適正化法の改正により、全ての受注者にICTに関する体制整備の努力義務が設けられ、下請業者自らについても体制整備の努力義務が課されたとしています(入札契約適正化法第16条)。


2. 指針の適用範囲

指針は、建設工事に従事する全ての建設業者を対象としています。そのうえで、大規模工事で多数の下請と取引する特定建設業者や、民間工事を牽引する公共工事の受注者の役割が大きいとして、これらを中心にICT活用を進めることが強く求められています。

それ以外の建設業者も、経営規模や工種などに応じて、ICTへの設備投資と人材育成に積極的に取り組むべきとされています。


3. 施工管理のICT活用(取り組むことが望ましい事項)

指針の「第2」では、工事施工の管理の効率化に向けて、次の取組みが示されています。

3-1. 施工管理システムの活用

元請からは下請への書類提出の催促や入力不備の確認に時間がかかること、下請からは元請ごとに異なるシステムに同じ情報を何度も入力する負担があることが課題として指摘されています。

そのため、工事書類の作成・提出や労務・人事管理を効率化する施工管理システムの積極的な活用が望ましいとされ、元請が下請に求める書類の標準化・共通化・簡素化やシステム間の連携の検討が重要とされています。

3-2. CCUSの活用

建設業者は、社会保険未加入者の排除、適正な施工体制の確保、施工体制台帳などの書類作成、就業履歴を使った人員配置、資格の確認などにCCUSを積極的に活用すべきとされています。元請は、カードリーダーなどの利用環境を整え、下請に利用を働きかけることが求められています。

また、公共工事では、CCUSなどで発注者が施工体制を直接確認できる場合、施工体制台帳の写しの提出義務が合理化されたことが紹介されています。

3-3. 建退共の電子申請方式

建設業退職金共済制度の電子申請方式の一層の活用と、CCUSの就業履歴を使った就労実績報告の促進が求められています。

3-4. 電子入札・電子契約

発注者や元請の理解を深め、建設業界の電子商取引の標準規格であるCI-NETの活用をはじめ、電子入札・電子契約の導入と、下請での電子契約の導入を促すべきとされています。電子契約の要件は「建設工事の電子契約の要件」の記事で解説しています。


4. 工事施工のICT活用で留意すべき5つの観点

指針の「第3」では、工事施工でICTを活用する際の留意点として、次の5つが示されています。

  1. 工事工程全体を俯瞰して効果を最大化する:1つの工程だけ効率化しても、後続工程がボトルネックになれば効果は限られるため、工事期間全体への効果で判断する
  2. 求められる精度に応じて適切なICTを選ぶ:工事の種類や発注者の意向によって求められる精度は異なる
  3. 下請との連携・協働で進める:工種によっては下請の方がICT活用の知見が豊富な場合もあり、元請は一方的な指示ではなく十分に協議・相談しながら進める
  4. 技術者・技能者のICTスキルを高める
  5. データ連携で総合力を発揮する:データの標準化を進める

3について、指針では、改正建設業法は独占禁止法の例外を認めるものではないため、元請の指導が優越的地位の濫用などにあたらないよう十分注意する必要があるとしています。

現場技術者の兼任との関係

指針では、令和6年改正で現場技術者の専任制度が合理化され、映像・音声の送受信が可能な環境の整備など関係法令の要件を満たせば、一定規模以下の工事で現場技術者の兼任が可能になったことにも触れています。ただし、安全管理をおろそかにせず、現場を把握する体制を適切に整えることが重要とされています。専任特例の要件は「現場技術者の専任特例(兼任)の要件を徹底解説」の記事をご覧ください。


5. ICT導入の具体例

指針では、次のような技術が例示されています。

技術期待される効果
ドローン広範囲の短時間測量、立入困難箇所の安全な測量、出来形確認
トータルステーション角度と距離の同時測定による効率的な測量、自動追尾型による省力化
3Dスキャナ3次元座標の取得による測量時間の大幅な削減
BIM/CIM調査から維持管理までのデータ活用・共有による効率化
ウェブカメラ・ウェアラブルカメラ遠隔での進捗確認や危険作業の監視
電子小黒板写真管理の効率化、情報共有の円滑化(導入コストが低く習熟も容易)
建設用ロボット・ICT建設機械墨出し、鉄筋結束、溶接、搬送などの代替、精度向上、作業時間短縮

中小の建設業者にとっては、電子小黒板のように比較的操作が容易で導入コストの低いものから始めるのも一つの方法です。


6. 情報セキュリティへの配慮

指針では、ICTを活用するにはセキュリティが確保された環境が不可欠であり、個人情報の取扱い、書類授受の機密性の保持、情報漏洩の防止などセキュリティ対策の徹底が重要だとしています。サイバー攻撃などのリスクは増大傾向にあり、被害が生じれば業務の中断や経済的損失だけでなく、法的責任や信頼の喪失にもつながるため、サプライチェーンを含む建設業界全体でリスクを減らす取組みが必要とされています。


7. まとめ

  • 特定建設業者には、施工管理のICT活用と下請指導の努力義務がある
  • 公共工事では、全ての受注者と下請にICT体制整備の努力義務がある
  • 施工管理システム、CCUS、建退共の電子申請、電子契約の活用が推奨されている
  • 元請の指導は、下請と協議しながら、優越的地位の濫用にならないよう注意する
  • セキュリティ対策もあわせて進める

「どこからICT化を進めればよいか」「電子契約や書類の電子化を進めたい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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