「技術者が足りないので、1人に2つの現場を見てもらいたい」——人手不足の中、こうした相談が増えています。

主任技術者・監理技術者の専任が必要な工事と、兼務を可能にする「専任特例」の全体像は、「配置技術者とは?主任技術者・監理技術者の違いと建設業許可に必要な要件」で解説しました。この記事では、実際に専任特例を使うときに確認すべき細かな要件と運用上の注意点を、監理技術者制度運用マニュアル(最終改正 令和7年1月28日)に沿って掘り下げます。


1. 前提:専任が必要な工事

主任技術者・監理技術者は、公共性のある施設や多数の者が利用する施設などに関する重要な工事では、工事現場ごとに専任でなければなりません(建設業法第26条第3項)。

対象は、次のような施設・工作物に関する工事で、工事1件の請負代金が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上のものです(建設業法施行令第27条第1項)。

  • 国・地方公共団体が注文者である施設・工作物
  • 鉄道、道路、橋、河川、上下水道などの工作物
  • 学校、病院、事務所、ホテル、共同住宅、工場、倉庫など

対象となる施設・工作物の一覧は、建設業法施行令第27条第1項と監理技術者制度運用マニュアル三(1)②に列挙されています。なお、事務所・病院などと戸建て住宅を兼ねた「併用住宅」は、非居住部分の床面積が延べ面積の1/2以下で、かつ面積比で按分した併用部分の請負金額が9,000万円未満(建築一式工事の場合)であれば、戸建て住宅と同様に扱い専任を求めないとされています(監理技術者制度運用マニュアル 三(1)③)。

「専任」の意味

専任とは、他の工事現場の職務を兼務せず、勤務中は常時継続的にその現場の職務にのみ従事していることをいいます。ただし、必ずしも現場への常駐は必要ではなく、研修・休暇などの合理的な理由で短期間(1〜2日程度)現場を離れることは、適切な施工ができる体制を確保すれば差し支えないとされています(同マニュアル 三(1)④)。


2. 専任特例1号の7つの要件

専任特例1号は、主任技術者・監理技術者が専任を要する工事を兼務できる制度です。下請が置く主任技術者にも適用できます(同マニュアル 三(2)①)。次の要件をすべて満たす必要があります。

No.要件根拠
1各工事の請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)建設業法施行令第28条
21日の勤務時間内に巡回可能な距離で、事故などの際の現場間の移動時間がおおむね2時間以内建設業法施行規則第17条の2第1項第1号
3下請次数が3を超えない同項第2号
4各工事に連絡員を置く同項第3号
5現場の施工体制を情報通信技術で確認する措置を講じる同項第4号
6人員の配置の計画書を作成し、現場ごとに備え置く同項第5号・第2項
7映像・音声の送受信が可能な情報通信機器を設置し、通信環境を確保する同規則第17条の3

さらに、兼務できる工事の数は2までです(建設業法施行令第30条)。

要件1:金額

工事途中で請負代金が1億円(建築一式工事は2億円)以上になった場合は、それ以降は専任特例を使えず、工事ごとに専任で配置しなければなりません。

要件2:移動時間

おおむね2時間以内というのは片道の時間です。判断は、その工事で通常使う移動手段(自動車など)を前提に、確実に実施できる手段で行います。

要件3:下請次数

元請が注文者となった下請契約から数えて、下請次数が3を超えてはいけません。工事途中で3を超えた場合は、それ以降は専任特例を使えません。

要件4:連絡員

  • 連絡員は各工事に置く必要がありますが、同じ連絡員が複数の工事を兼務することも、1つの工事に複数置くこともできます
  • 土木一式工事・建築一式工事では、その工事と同業種の工事について1年以上の実務経験がある連絡員を現場に置く必要があります
  • 連絡員に専任・常駐は求められず、直接的・恒常的な雇用関係も不要です
  • 役割は、たとえば工程会議や品質検査が2つの現場で同時期に行われる場合に、遠隔からの指示を現場で伝えるなど、施工管理の補助(事故対応を含む)です

要件5:施工体制を確認するICT

現場作業員の入退場を遠隔から確認できるものであることが必要です。CCUSやCCUSとAPI連携したシステムが望ましいとされていますが、遠隔から入退場を確認できればその他のシステムでも可能です。

要件6:人員の配置の計画書

次の事項を記載した計画書を作成し、現場ごとに備え置きます。電子データでもかまいません。計画書は、帳簿の保存期間と同じ期間、その工事の帳簿を保存している営業所で保存しなければなりません。

  • 建設業者の名称・所在地
  • 主任技術者・監理技術者の氏名
  • 技術者の1日あたりの労働時間のうち、法定労働時間を超えるものの見込みと実績
  • 各工事の名称・所在地、工事の種類、請負代金の額、現場間の移動時間、下請次数、連絡員の氏名・所属・実務経験(一式工事の場合)、施工体制を把握するICT、現場状況を把握する情報通信機器

要件7:情報通信機器

遠隔の現場と必要な情報のやりとりを確実にできればよく、一般的なスマートフォンやタブレット、Web会議システムでも差し支えありません。ただし、山間部などで通信が確実にできない現場は要件を満たしません。


3. 専任特例2号(監理技術者補佐)との違い

専任特例2号は、各現場に監理技術者補佐を専任で置くことで、監理技術者が2現場まで兼務できる制度です(建設業法第26条第3項第2号・第4項、施行令第30条)。監理技術者に関する特例で、主任技術者は対象になりません。詳しくは「監理技術者補佐とは?」の記事で解説しています。


4. 併用できない組み合わせ

マニュアルでは、次のような併用の制限が示されています。

  • 同じ技術者が、専任特例1号を使った現場と専任特例2号を使った現場を兼務することはできません(同マニュアル 三(2)⑤)
  • 「専任特例1号の現場」と「専任を要しない現場」を兼務することは可能ですが、専任を要しない現場も要件2〜7を満たし、かつ全体の現場数が2を超えてはいけません(同 三(2)①8))
  • 営業所技術者等が現場の技術者を兼ねる特例は、専任特例との併用ができません(同 二-二(5)②)

5. 営業所技術者等が現場を兼ねる特例(参考)

営業所技術者等(旧専任技術者)が、専任を要する工事の主任技術者・監理技術者を兼ねる特例もあります(建設業法第26条の5)。主な要件は次のとおりです(同マニュアル 二-二(5)②1))。

  • その営業所で契約した工事であること
  • 兼ねる現場の数が1以下であること(建設業法施行令第34条)
  • 請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること(同令第33条)
  • 専任特例1号の2〜7と同様の要件を満たすこと(「当該工事現場と他の工事現場」は「営業所から当該工事現場」と読み替え)
  • 所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること

6. その他の兼務・専任緩和の仕組み

6-1. 密接な関係のある工事

密接な関係のある2以上の工事を、同じ建設業者が同じ場所または近接した場所で施工する場合は、同一の専任の主任技術者が管理できます(建設業法施行令第27条第2項)。マニュアルでは、工作物に一体性・連続性がある工事などで、現場の間隔が10km程度の近接した場所の場合に該当するとし、1人が管理できる工事は専任が必要な工事を含む場合は原則2件程度としています。この規定は専任の監理技術者には適用されません(同 三(2)③)。

6-2. 専任を要しない期間

元請の技術者は、契約工期中でも、次の期間は現場への専任を要しません。ただし、発注者との間で、設計図書や打合せ記録などの書面で明確になっている必要があります(同 三(3)①)。

  1. 契約締結後、現場施工に着手するまでの期間
  2. 工事用地の確保未了、自然災害、埋蔵文化財調査などで工事を全面的に一時中止している期間
  3. 工場製作のみが行われている期間
  4. 工事完成後、検査が終了し、事務手続・後片付けなどのみが残っている期間

下請工事では、実際に施工されている期間が専任の必要な期間とされます(同 三(3)②)。


7. 現場の標識の記載

専任特例を使う場合、工事現場に掲げる標識の「専任の有無」欄には、専任特例1号なら「非専任(情報通信技術利用)」、2号なら「非専任(監理技術者を補佐する者を配置)」と記載します(同マニュアル 図-3記載要領)。標識については「建設業許可票(標識)の掲示義務」の記事で解説しています。


8. まとめ

  • 請負代金4,500万円(建築一式9,000万円)以上の重要な工事では技術者の専任が必要
  • 専任特例1号は、1億円(建築一式2億円)未満、移動おおむね2時間以内、下請3次以内、連絡員、ICT、計画書、情報通信機器の要件をすべて満たせば2現場まで兼務可能
  • 1号と2号の現場の兼務、営業所技術者等の特例との併用はできない
  • 計画書は帳簿と同じ期間保存する

専任特例は、要件を1つでも欠くと「専任違反」になりかねません。「今の配置で要件を満たしているか確認したい」「人員配置の計画書の様式を整えたい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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