産業廃棄物処理業の許可は、許可を受けた事業者自身が事業を行うことを前提としています。許可を持たない他人に、自らの許可(名義)を使わせて事業を行わせる「名義貸し」は、法律で明確に禁止されている行為です。
廃棄物処理法は、「産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者は、自己の名義をもつて、他人に産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を業として行わせてはならない」と定めています(廃棄物処理法第14条の3の3)。特別管理産業廃棄物処理業者についても同様の規定があります(同法第14条の7)。
名義貸しが禁止される理由
産業廃棄物処理業の許可制度は、施設基準・能力基準・欠格要件などを審査した上で、その事業者自身に事業を行わせることで、適正処理を担保する仕組みです。名義だけを借りて実際には別の(無許可の)者が処理を行うようなことがあれば、この審査の意味が失われ、不適正処理や不法投棄のリスクが高まります。
国の行政処分の指針も、許可制度について「産業廃棄物の処理を業として行うことを一般的に禁止した上で、事業の用に供する施設及び事業を行う者の能力が…一定の基準に適合すると認められるときに限って許可することにより、産業廃棄物の適正な処理を確保するもの」と説明しています(「行政処分の指針について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033028号。以下「行政処分指針」)第2の1)。名義貸しは、この仕組みの前提を崩す行為です。
名義貸しの罰則と行政処分
名義貸しに対しては、廃棄物処理法の中でも最も重い区分の罰則が定められています。
| 違反 | 罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| 名義を貸して他人に処理業を行わせた(名義貸し) | 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科 | 法25条1項7号 |
| 許可を受けずに処理業を行った(名義を借りた側) | 同上。法人には3億円以下の罰金 | 法25条1項1号、32条1項1号 |
| 許可業者以外の者が処理を受託した | 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科 | 法14条15項、25条1項13号 |
さらに、名義貸しを行った許可業者は行政処分の対象にもなります。行政処分指針では、廃棄物処理法第25条から第27条までに掲げる違反行為を行った場合は、「情状が特に重いとき」(業務停止命令等を経ずに直ちに許可を取り消すことが相当である場合)に該当すると解して差し支えないとしています(行政処分指針第2の2(5))。名義貸しは法第25条の違反行為であるため、許可取消しに直結し得る行為といえます。
許可を取り消されると、その法人は取消しから5年間は許可を受けられず、さらに聴聞通知前60日以内に役員であった者も5年間欠格要件に該当します(廃棄物処理法第7条第5項第4号ホ)。名義貸しは、会社だけでなく役員個人の将来にも影響する違反です。
名義を借りる側・仲介する側も違反になる
名義を借りて処理業を行う者は、許可を受けずに処理業を行った無許可営業として罰則の対象になります(法第25条第1項第1号)。また、行政処分指針は、許可業者が他人の違反行為を「助け」た場合も事業停止等の要件に該当するとし、その例として、収集運搬業者が無許可業者の事業場まで運搬を行う場合や、無許可業者への仲介・斡旋を行う場合を挙げています(行政処分指針第2の2(1)③)。名義を貸すだけでなく、無許可業者の業務に手を貸す行為も、許可業者にとっては処分対象になり得るということです。
名義貸しと「再委託」の違い
「自社で運びきれない分を他の業者に回す」行為は、名義貸しとは別に「再委託」の問題になります。収集運搬業者・処分業者は、受託した処理を他人に委託することが原則として禁止されており(廃棄物処理法第14条第16項)、例外として認められるのは、あらかじめ排出事業者に再受託者の氏名・名称等を明らかにし、排出事業者の書面による承諾を受けるなど、政令の基準に従う場合に限られます(施行令第6条の12)。基準に従わない再委託は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象です(法第26条第1号)。
自社の名義で受注し、実際の運搬は他社にさせるという形は、実態によっては名義貸しや無許可の再委託と評価されるおそれがあります。他社に処理を任せる必要がある場合は、正規の再委託の手続を踏むことが不可欠です。
車両の貸借にも潜む名義貸しリスク
名義貸しは、許可そのものの又貸しだけでなく、運搬車両の取り扱いをめぐっても問題になり得ます。たとえば、営業用ナンバー(緑ナンバー)の車両を借りて収集運搬に使用する場合、実務上は「貨物自動車運送事業者から貨物自動車運送事業者への貸借であること」「運転手付きではなく車両だけの貸借であること」が賃貸借契約書上明らかになっている必要があるとされています(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q24-3)。運転手付きで車両を借り受けてしまうと、実質的には貸主側の運転手が収集運搬を行っていることになり、許可を受けた事業者自身が事業を行うという大原則に反し、名義貸しに該当するおそれがあります(同)。車両を借りて事業を行う場合には、契約内容がこうした要件を満たしているかを必ず確認しましょう。
愛知県の運用では、このほかにも車両の使用権原について次のような基準が示されています(同Q24-4、Q24-6)。
- 車両が自己所有かどうかは、車検証の「使用者」欄が申請者の名前かどうかで判断する
- 法人の場合、使用者が会社名なら自己所有車、代表取締役等の個人名なら借用車として扱う
- レンタカーは、1年以上の契約期間がある場合に収集運搬車として使用できる
許可申請時に登録した車両以外の車両で運搬したり、登録車両を入れ替えたのに変更届を出していなかったりすると、実際に誰の車両で誰が運んでいるのかが不明確になります。車両のナンバーを変更した場合も変更届出書の提出が必要とされています(同Q24-7)。
許可申請に関わる名義の問題
許可申請の段階でも、「名義」をめぐる問題があります。例えば、欠格要件に該当する者が実質的な経営者でありながら、その者を役員として登記せず、別人の名義で許可を取得するようなケースです。廃棄物処理法上の「役員」には、相談役・顧問その他いかなる名称であっても、取締役等と同等以上の支配力を有するものと認められる者が含まれ(廃棄物処理法第7条第5項第4号ホ)、行政処分指針は、法人に多額の貸金があることに乗じて経営に介入している者や一定比率以上の株主なども典型例として挙げています(行政処分指針第2の2(4)②)。
また、許可申請書や添付書類(商業登記簿等)に虚偽の記載をして許可を受けることは、「不正の手段」による許可として許可取消しの対象となり(廃棄物処理法第14条の3の2第1項第6号、行政処分指針第2の2(6))、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科の対象にもなります(同法第25条第1項第2号)。実質的な経営者と名義上の経営者が異なる形での許可取得は、名義貸しと同様に重大な違反となり得ます。
排出事業者側が注意すべきポイント
排出事業者としては、委託しようとしている処理業者が、実際にその許可を保有している事業者本人であるかを確認することが重要です。契約書上の名義と、実際に廃棄物を運搬・処分している事業者が異なる場合、名義貸しに巻き込まれているおそれがあります。
排出事業者は、産業廃棄物の処理を他人に委託した場合であっても、委託基準に従っていない委託や、不適正処理があった場合には、措置命令等の対象となり得る立場にあります。行政処分指針では、産業廃棄物処理業の許可は「実際に許可を受けた者が適正に処理を行うことまで保証するものではなく、許可業者に対する処理委託が排出事業者の責任を免ずるものではない」とし、信頼に値する処理業者かどうかは最終的には排出事業者自身の責任において見極める必要があるとしています(行政処分指針第10の1)。委託先の実態確認を怠らないことが、自社を守ることにもつながります。
具体的なチェック方法
具体的には、許可証に記載された事業者名・許可番号と、実際に運搬車両に表示されている事業者名・許可番号(下6桁等)が一致しているかを確認することも、簡易的なチェック方法として有効です。
許可番号は11桁で構成され、6〜11桁目(下6桁)は許可業者ごとに付与される全国統一の「固有番号」とされています。固有番号は、既に付与されている業者に新たに付与せず、更新・変更許可があっても変更しない運用とされているため(「産業廃棄物処理業者及び特別管理産業廃棄物処理業者に係る許可番号等取扱要領について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033022号)別添2(1)、3)、複数の都道府県の許可を持つ業者でも、下6桁は原則として共通です。車体には許可番号の下6けたを表示することが義務付けられているため(廃棄物処理法施行規則第7条の2の2第1項第3号)、許可証の下6桁と車体表示の番号を照合すれば、許可を持つ本人の車両かどうかを確認する手がかりになります。
このほか、次の点も確認しておくと安心です。
- 運搬車に、許可証の写しとマニフェスト(電子マニフェストの場合は所定の書面等)が備え付けられているか(施行規則第7条の2の2第4項で準用する第7条の2第3項)
- マニフェストの運搬担当者欄・収集運搬業者欄の記載が、契約先の業者と一致しているか(施行規則第8条の22)
- 契約書に記載された受託者の事業の範囲に、委託する廃棄物が含まれているか(施行令第6条の2第1号・第4号、施行規則第8条の4の2第3号)
まとめ
名義貸しは、処理業者・排出事業者のいずれにとってもリスクの大きい行為です。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 名義貸しは5年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金の対象で、許可取消しにも直結し得る
- 名義を借りた側は無許可営業(法人は3億円以下の罰金)となる
- 他社に運搬を回すなら、排出事業者の書面承諾を得る正規の「再委託」の手続が必要
- 運転手付きの車両借用は名義貸しに当たるおそれがあり、緑ナンバー車の貸借は契約内容に注意
- 排出事業者は、許可証の下6桁と車体表示の照合など、委託先の実態確認を怠らない
許可そのものの又貸しだけでなく、車両の貸借契約の内容によっても名義貸しに該当し得る点に注意し、委託先を選定する際は、許可証の名義と実際に事業を行う主体が一致しているかを必ず確認しましょう。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第7条第5項、第14条、第14条の3の2、第14条の3の3、第14条の7、第25条、第26条、第32条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第6条の2、第6条の12)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第7条の2、第7条の2の2、第8条の4の2、第8条の22)
- 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)
- 産業廃棄物処理業者及び特別管理産業廃棄物処理業者に係る許可番号等取扱要領について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033022号)
- 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」
