「後継者がいないので、産廃の収集運搬業をやめることにした」
「建設業に専念するため、産廃の許可はもう更新しない」
「一部の品目だけ取扱いをやめたい」
産廃業の許可は、取るときの手続きに比べて、やめるときの手続きはあまり知られていません。しかし、廃棄物処理法には、事業をやめる際にも守るべき義務が定められており、怠ると罰則や行政処分の対象になります。特に、処理が終わっていない廃棄物を抱えたまま事業をやめる場合は、排出事業者への通知義務があり、残った廃棄物の保管について行政から命令を受けることもあります。
この記事では、産廃収集運搬業・処分業を廃業・休業するときの手続きを、法令と愛知県の運用例をもとに整理します。
第1章|「廃止届」が必要になる場面
事業の全部または一部を廃止したとき
産業廃棄物処理業者は、事業の全部もしくは一部を廃止したときは、都道府県知事に届け出なければなりません(廃棄物処理法第14条の2第3項で準用する第7条の2第3項)。届出の期限は、廃止の日から10日以内です(廃棄物処理法施行規則第10条の10第2項)。
愛知県の手続きQ&Aでは、廃止届出が必要な場面として次のものが挙げられています(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q20)。
- 取り扱う品目の削除
- 積替え保管施設の廃止(収集運搬業)
- 処分方法の廃止(処分業)
- 収集運搬業または処分業の業自体の廃業(廃業の場合は許可証の原本の返納が必要)
品目を一部やめるだけでも「一部廃止」として届出が必要になる点に注意が必要です。一方、事業の範囲を広げる場合は変更許可、役員や車両などの変更は変更届出と、手続きの種類が異なります(「産業廃棄物処理業の事業範囲変更許可の手続き」「産廃収集運搬業許可の変更手続き完全マニュアル」参照)。
届出の方法(愛知県の例)
愛知県では、廃止届出書は郵送でも提出でき、必要部数の届出書と切手を貼った返信用封筒を同封して郵送するとされています。廃業する場合は許可証の原本も同封します(同Q23-1)。届出に手数料はかかりません(同Q9)。
届出をしなかった場合
廃止の届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は、30万円以下の罰金の対象です(廃棄物処理法第30条第2号)。法人にも罰金刑が科されます(同法第32条第1項第2号)。
第2章|許可証の返納
国の通知では、処理業者が事業の全部を休止もしくは廃止する場合は許可証を返納させるものとし、事業の休止の場合は、休止期間中の一時返納とされています(「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号。以下「許可事務通知」)第1の13(2))。許可が失効した場合(更新しなかった場合を含む)も同様に返納の対象です(同)。
なお、許可証を紛失していて返納できない場合、愛知県では、許可証の紛失等による再交付の手続として再交付申請書の提出、新しい許可証を受け取る際に旧許可証がない場合は紛失した旨の申立書の提出が案内されています(愛知県「手続きQ&A」Q19)。廃業時の取扱いは申請先に確認しましょう。
休業(休止)する場合
事業を一時的に休む場合、上記のとおり許可証の一時返納が求められています。休止期間中に許可の有効期限が来る場合は、更新をしなければ許可は失効します。愛知県は、許可期限が切れてからの申請は新規許可申請になり、更新期限に関する案内も行っていないとしています(愛知県「手続きQ&A」Q7)。休業中でも許可を残したい場合は、有効期限の管理を忘れないようにしましょう(「産廃収集運搬業許可の更新完全マニュアル」参照)。
第3章|最重要:処理が終わっていない廃棄物の委託者への通知
10日以内に書面で通知する義務
事業の全部または一部を廃止した者で、その事業に係る産業廃棄物の収集・運搬・処分を終了していないものは、遅滞なく、事業を廃止した旨を、処理を終了していない産業廃棄物の処理を委託した者に書面で通知しなければなりません(廃棄物処理法第14条の2第4項)。
具体的な手続は次のとおりです(施行規則第10条の10の4・第10条の10の5)。
- 通知期限:事業の全部または一部を廃止した日から10日以内
- 通知方法:書面を送付する
- 記載事項:収集運搬業者・処分業者の氏名または名称、住所、法人の場合は代表者の氏名/事業を廃止した年月日及び事由の内容
- 保存:通知の写しを、通知の日から5年間保存する
国の通知では、この通知は、処理を終了していない産業廃棄物に係る委託契約を締結している排出事業者等の全てに対して行うこととされています(「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の施行について(通知)」(平成30年3月30日環循適発第18033010号・環循規発第18033010号。以下「施行通知」)第三2)。
特別管理産業廃棄物処理業者にも同じ義務があります(廃棄物処理法第14条の5第4項・第5項)。許可を取り消された場合も、取消しの日から10日以内に同様の通知が必要です(同法第14条の3の2第3項、施行規則第10条の10の6)。
通知を怠った場合の罰則
通知をしなかった場合や虚偽の通知をした場合、通知の写しを保存しなかった場合は、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(廃棄物処理法第29条第4号・第5号)。この義務は平成29年の法改正で設けられたもので、施行通知でも違反には罰則の適用があることが明示されています(施行通知第三3)。
排出事業者側の対応
通知を受けた排出事業者は、マニフェストの写しの送付をまだ受けていない廃棄物について、状況を把握し必要な措置を講じたうえで、通知を受けた日から30日以内に都道府県知事に報告書を提出しなければなりません(廃棄物処理法第12条の3第8項、施行規則第8条の29)。廃業する側としては、委託者がこうした対応をとれるよう、どの廃棄物がどこまで処理済みかを正確に伝えることが重要です(排出事業者側の対応は「処理困難通知とは?」で解説しています)。
第4章|残った廃棄物には「保管等に係る命令」が出ることも
事業を廃止した者や許可を取り消された者(旧許可業者等)が、処理基準に適合しない産業廃棄物の保管を行っていると認められるときは、都道府県知事は、処理基準に従って保管することその他必要な措置を講ずべきことを命ずることができます(廃棄物処理法第19条の10第2項)。
国の行政処分の指針では、この制度が設けられた理由を次のように説明しています(「行政処分の指針について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033028号。以下「指針」)第11の1)。
- 旧許可業者等には処理基準が適用されず、改善命令の対象ではなかった
- 生活環境の保全上の支障が生ずるおそれがある状態でなければ措置命令の対象にもならず、強制力のない行政指導によらざるを得なかった
命じられる「必要な措置」の例として、指針は、処理基準に適合した方法での保管に加え、中間処理前の廃棄物であれば排出事業者に働きかけて速やかに新たな処理業者と契約するよう促すこと、中間処理後の廃棄物であれば最終処分業者等を速やかに選定し契約することなどを挙げています。ただし、自ら処分をすることまでは求めないとされています(指針第11の2(2))。この命令に違反した場合は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科の対象です(廃棄物処理法第26条第2号)。
つまり、「廃業したから後は知らない」では済まず、残った廃棄物が適正に引き継がれるまで責任が続くと考えておくべきです。廃業を決めたら、受入れを段階的に止め、手元の廃棄物を処理し終えてから廃止日を迎えるのが理想的です。
第5章|廃業のタイミングで注意したいこと
聴聞の通知を受けた後の廃業届は通用しない
許可取消処分に係る聴聞の通知を受けた後、処分がされるまでの間に事業の全部廃止の届出をした場合、その者(相当の理由がある者を除く)は届出の日から5年間、廃棄物処理業の許可について欠格要件に該当します。法人の場合は、聴聞通知の日前60日以内に役員等であった者も同様です(廃棄物処理法第7条第5項第4号ヘ・ト、指針第2の6)。取消処分を避けるための「駆け込み廃業」は、欠格要件を免れる手段になりません(「産業廃棄物処理業の欠格要件とは?」参照)。
全国での許可がなくなると固有番号は欠番に
許可番号の下6桁は全国統一の「固有番号」で、業の全部廃止や許可の失効により全ての都道府県市で業が行われなくなった場合、その固有番号は失効し、欠番として扱われます(「産業廃棄物処理業者及び特別管理産業廃棄物処理業者に係る許可番号等取扱要領について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033022号)別添3③)。将来再び許可を取る場合は、新規許可として一から手続きが必要です。複数の都道府県で許可を持っている場合は、廃業する都道府県ごとに廃止届が必要になります。
処理施設を持っている場合
産業廃棄物処理施設を設置している場合、施設を廃止・休止したとき、休止した施設を再開したときは、遅滞なく届出が必要です(廃棄物処理法第15条の2の6第3項で準用する第9条第3項、施行規則第12条の10の2第1項第6号)。最終処分場については、埋立処分の終了の届出(終了の日から30日以内)が必要なほか、処分場の状況が技術上の基準に適合していることについて知事の確認を受けたときに限り廃止できるとされています(同法第15条の2の6第3項で準用する第9条第4項・第5項)。
帳簿の保存
許可業者の帳簿は、1年ごとに閉鎖し、閉鎖後5年間事業場ごとに保存するとされています(施行規則第10条の8第3項で準用する第2条の5第3項)。通知の写しの5年保存とあわせて、廃業後の書類の保管場所と責任者を決めておきましょう(「産廃収集運搬業者の帳簿の記載事項と保存方法」参照)。
第6章|廃業手続きのチェックリスト
- 廃止日までに、受託中の廃棄物の処理を終えられるか確認した
- 処理が終わらない廃棄物がある場合、委託者全員に廃止日から10日以内に書面で通知した(写しを5年保存)
- 許可を受けている都道府県・政令市ごとに、廃止日から10日以内に廃止届を提出した
- 許可証の原本を返納した(休止の場合は一時返納)
- 処理施設がある場合、施設の廃止・休止の届出をした
- 帳簿・通知の写し・契約書などの保存体制を決めた
第7章|廃業・休業の手続きは行政書士へ
産廃業は、始めるときと同じくらい、やめるときの手続きが重要です。まとめると次のとおりです。
- 事業の全部・一部を廃止したら、10日以内に廃止届。廃業の場合は許可証を返納
- 処理が終わっていない廃棄物があれば、委託者全員に10日以内に書面で通知し、写しを5年保存
- 残った廃棄物について、知事から保管等に係る命令が出ることがある
- 聴聞通知後の廃業届では欠格要件を免れられない
三澤行政書士事務所では、複数の自治体にまたがる廃止届の提出や、委託者への通知文書の作成、許可の一部廃止と変更の整理などをお手伝いしています。東海エリアの事業者様は、お気軽にご相談ください。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第7条第5項、第7条の2第3項、第9条第3項〜第5項、第12条の3第8項、第14条の2、第14条の3の2第3項、第14条の5、第15条の2の6、第19条の10、第26条、第29条、第30条、第32条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第2条の5、第8条の29、第10条の8、第10条の10、第10条の10の4〜第10条の10の7、第12条の10の2)
- 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の施行について(通知)(平成30年3月30日環循適発第18033010号・環循規発第18033010号)
- 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)
- 産業廃棄物処理業者及び特別管理産業廃棄物処理業者に係る許可番号等取扱要領について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033022号)
- 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」