産業廃棄物処理業の許可は、施設基準や能力基準を満たしていても、申請者が一定の事由に該当する場合には許可を受けることができません。この事由を「欠格要件」といいます。せっかく準備を進めても、欠格要件に該当していれば許可は下りませんので、申請の前に必ず確認しておきたいポイントです。
国の通知では、欠格要件は「法に従った適正な業の遂行を期待し得ない者を類型化して排除するために申請者の一般的適性についての要件を定めたもの」とされ、許可にあたっては該当事由の有無を確実に調査し、該当する場合は速やかに不許可処分を行うこととされています(「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号。以下「許可事務通知」)第1の5(1))。
欠格要件は許可を取るときだけの問題ではありません。許可を受けた後に欠格要件に該当するに至った場合、都道府県知事は許可を取り消さなければならないとされています(廃棄物処理法第14条の3の2第1項)。つまり、欠格要件は「許可を持ち続けるための条件」でもあります。
欠格要件に該当する主なケース
廃棄物処理法第14条第5項第2号は、産業廃棄物処理業の欠格要件として、同法第7条第5項第4号イからチまでの事由を引用したうえで、暴力団関係の事由などを加えています。現行法の内容を整理すると、次のとおりです。
| 条文 | 欠格要件の内容 |
|---|---|
| 法7条5項4号イ | 心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として環境省令で定めるもの |
| 同号ロ | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 |
| 同号ハ | 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 |
| 同号ニ | 廃棄物処理法、浄化槽法、政令で定める生活環境保全法令、暴力団対策法に違反し、または刑法の傷害・現場助勢・暴行・凶器準備集合等・脅迫・背任の罪や暴力行為等処罰ニ関スル法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、執行を終わった日等から5年を経過しない者 |
| 同号ホ | 廃棄物処理業等の許可を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者(法人の場合は、聴聞通知の日前60日以内にその法人の役員であった者で5年を経過しないものを含む) |
| 同号ヘ | 許可取消処分に係る聴聞通知があった日から処分の日までの間に事業の全部廃止の届出をした者(相当の理由がある者を除く)で、届出の日から5年を経過しない者 |
| 同号ト | ヘの期間内に廃止届出があった法人の、聴聞通知の日前60日以内の役員・政令使用人で、届出の日から5年を経過しない者 |
| 同号チ | その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者(おそれ条項) |
| 法14条5項2号ロ | 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(暴力団員等) |
| 同号ハ | 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が欠格要件に該当するもの |
| 同号ニ | 法人で、その役員または政令で定める使用人のうちに欠格要件に該当する者があるもの |
| 同号ホ | 個人で、政令で定める使用人のうちに欠格要件に該当する者があるもの |
| 同号ヘ | 暴力団員等がその事業活動を支配する者 |
これらは申請者本人だけでなく、法人であれば役員等も対象となる点に注意が必要です。また、過去に許可を取り消された経歴がある場合、その取消しの理由や経過期間によって、新たな申請にも影響することがあります。
以前の「成年被後見人」「禁錮」の規定は改正されている
かつては「成年被後見人若しくは被保佐人」が一律に欠格要件とされていましたが、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和元年法律第37号)により、現在は「心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者」に改められています(許可事務通知前文、同第1の5(2))。具体的には、精神の機能の障害により、廃棄物の処理の業務を適切に行うにあたって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者をいうとされています(同第1の5(2))。
また、刑罰の欠格要件も、刑法改正に伴い「拘禁刑以上の刑」という表記になっています(廃棄物処理法第7条第5項第4号ハ)。古い解説記事の「禁錮以上の刑」「成年被後見人」という表記はそのまま当てはまらないため注意してください。
「生活環境の保全を目的とする法令」の範囲
罰金刑で欠格要件に該当する「生活環境の保全を目的とする法令」は、政令で次のとおり定められています(廃棄物処理法施行令第4条の6)。
- 大気汚染防止法
- 騒音規制法
- 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
- 水質汚濁防止法
- 悪臭防止法
- 振動規制法
- 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
- ダイオキシン類対策特別措置法
- ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
一方、拘禁刑以上の刑については、法令の種類を問わず欠格要件に該当します。例えば道路交通法違反であっても拘禁刑に処せられれば、執行を終えてから5年間は欠格要件に該当することになります(「行政処分の指針について(通知)」(以下「行政処分指針」)第2の2(4)②の例示)。
執行猶予を受けた場合の考え方
刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は、猶予期間中は欠格要件に該当しますが、執行猶予を取り消されることなく猶予期間を経過したときは、刑の言渡しの効力そのものが失われるため、刑罰の欠格要件には該当しなくなります。ただし、おそれ条項には該当し得るとされています(行政処分指針第2の2(4)①)。
「役員」には相談役・顧問・大株主も含まれ得る
欠格要件でいう「役員」は、業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者に加え、「相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者」を含みます(廃棄物処理法第7条第5項第4号ホ)。
行政処分指針では、この「同等以上の支配力を有する者」の典型例として、相談役・顧問等の名称を有する者、法人に多額の貸金があることに乗じて経営に介入している者、一定比率以上の株式を保有する株主・出資者を挙げ、申請書に記載する5%以上の株主・出資者は「該当する蓋然性が高い」としています。求められる支配力は平取締役と同等以上で足りるとされています(行政処分指針第2の2(4)②)。一方、会計参与や、監査の範囲を会計に限定された監査役は、通常は法上の役員に該当しないとされています(同)。
役員を通じた「連鎖」の範囲
ある法人Aが許可を取り消された場合、その役員を兼務している別法人Bの許可にまで影響が及ぶかどうかは、取消しの理由によって異なります。平成22年改正により、役員兼務を通じて他法人の許可が取り消されるのは、悪質性が重大な許可取消原因(不法投棄等の廃棄物処理法違反による罰金刑など)に該当する場合に限定されました(行政処分指針第2の2(4)②)。
行政処分指針が示す例は次のとおりです。
- 役員aが道路交通法違反で拘禁刑に処せられた場合:法人Aは許可を取り消されますが、Aの役員bが兼務する法人Bは欠格要件に該当しません
- 役員aが不法投棄で罰金刑に処せられた場合:法人Aの許可が取り消され、Aの役員bが兼務する法人Bも欠格要件に該当して許可が取り消されます。ただし、Bの役員cが兼務する法人Cまでは連鎖しません
欠格要件に該当した後に役員を辞任させても取消しは免れない
欠格要件に「該当するに至ったとき」は許可を取り消さなければならないため、役員が欠格要件に該当した後にその役員を解任・辞任させても、許可の取消しを免れることはできないとされています。退任時期を遡らせた変更登記を行う事例については、特段の事情がない限り在職中に欠格要件に該当したものとして扱って差し支えないとされています(行政処分指針第2の2(4))。
「おそれ条項」の具体的な判断基準
欠格要件の中には、「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」に該当するかどうかという、いわゆる「おそれ条項」による判断があります(廃棄物処理法第7条第5項第4号チ)。国の通知では、他の欠格要件のいずれにも該当しないが、申請者の資質及び社会的信用の面から、将来その業務に関して不正又は不誠実な行為をすることが相当程度の蓋然性をもって予想され、業務の適切な運営を期待できないことが明らかである者を許可しない趣旨とされています(許可事務通知第1の5(5))。実務上、審査基準では、次のいずれかに該当する場合にこの条項が適用されるとされています(愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」「産業廃棄物処分業の審査基準」(令和6年1月31日改正)ほか)。
- 過去において、繰り返し許可の取消し処分を受けている場合
- 廃棄物処理法・浄化槽法等の関係法令、または暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に違反し、あるいは傷害・現場助勢・暴行・凶器準備集合等・脅迫・背任といった刑法上の罪や暴力行為等処罰ニ関スル法律の罪を犯し、公訴を提起され、または逮捕・勾留等の強制処分を受けている場合
- 生活環境の保全を目的とする法令やそれに基づく処分に係る違反を繰り返しており、行政庁の指導等が累積している場合
- 廃棄物処理施設の拡張のために、森林法に違反した無許可の森林伐採、都市計画法・農地法に違反した無許可の開発行為・農地転用など、施設整備に関連して他法令に違反し、繰り返し罰金以下の刑に処せられている場合
- 自己・自社・第三者の不正な利益を図る目的、または第三者に損害を加える目的で暴力団員を利用している場合
- 暴力団員に対して自発的に資金等を供給し、または便宜を供与するなど、暴力団の維持・運営に協力・関与している場合
- 暴力団排除条例に基づき氏名・名称等を公表され、その公表の日から一定期間を経過していない場合(愛知県の審査基準では、愛知県暴力団排除条例第26条第1項により公表され、公表の日から1年を経過しない者)
- その他、上記と同程度以上に的確な業の遂行を期待できないと認められる場合
このように、単に前科の有無だけでなく、行政指導の累積状況や、暴力団との関係性の有無まで幅広く審査の対象となる点が特徴です。
収集運搬業者の「過積載」もおそれ条項の例に挙がっている
国の通知では、上記4の「廃棄物処理業務に関連した他法令違反」の例として、処分業者の森林法・都市計画法・農地法違反に加えて、「収集運搬業者が道路交通法に違反して廃棄物の過積載を行い、繰り返し罰金以下の刑に処せられた者」を明示しています。さらに、繰り返し罰金刑に処せられるまでに至っていなくても、廃棄物処理業務に関連した他法令違反に係る行政庁の指導等が累積している場合は、上記8に該当すると解して差し支えないとされています(許可事務通知第1の5(5)⑤)。運送を伴う収集運搬業では、道路交通法の遵守も許可の維持に直結すると考えておくべきです。
暴力団関係の具体例
国の通知では、上記5・6の具体例として次のような行為を挙げています(許可事務通知第1の5(5)⑥⑦)。
- 自社と友誼関係にある者が暴力団員であることを告げたり、暴力団の名称入り名刺を示したりして、その影響力を利用する行為
- 相手方が暴力団員であることを知りながら、自発的に用心棒等の役務の有償提供を受け、または暴力団員が行う事業・興行・いわゆる「義理ごと」に参画・参加・援助する行為
また、「暴力団員等がその事業活動を支配する者」(廃棄物処理法第14条第5項第2号ヘ)には、暴力団員等の親族等が役員であることや多額の出資・融資を行っていること、暴力団員等が多額の金品等の利益供与を受けていることなどにより、事業活動に相当程度の影響力を有している場合も含まれるとされています(行政処分指針第2の2(4)④)。
欠格要件の確認方法
申請時には、欠格要件に該当しないことを確認するため、申請者本人(個人)、法人の役員、5%以上の株主・出資者、政令で定める使用人について、住民票の写しと「欠格要件に該当しないかどうかを審査するために必要と認められる書類」の添付が求められます(廃棄物処理法施行規則第9条の2第2項第9号・第11号〜第14号)。心身の故障に関する欠格要件の審査書類としては、医師の診断書、認知症に関する試験結果、登記事項証明書等が例示されています(許可事務通知第1の5(2))。あわせて、欠格要件に該当しない者であることを誓約する書面も必要です(施行規則第9条の2第2項第10号)。
法人の場合は、代表者だけでなく業務を行う役員についても、同様の証明書類の提出が必要になるのが一般的です。役員が複数いる法人の場合は、対象となる役員全員分の書類を揃える必要があり、書類収集に時間がかかることもあります。
行政側の調査方法
行政側は、申請書類の確認に加えて、次のような方法で欠格要件を調査します(許可事務通知第1の5(3)(4)(6))。
- 破産:個人は本籍地の市町村への照会等、法人は商業登記簿で調査
- 刑罰:個人は本籍地の市町村、法人は本店所在地を管轄する地方検察庁、外国人は居住地を管轄する地方検察庁(大正以前生まれは東京地方検察庁)、外国法人は東京地方検察庁に照会
- 暴力団員等:新規・更新の許可をするときは、都道府県警察本部長の意見を文書で聴取(廃棄物処理法第23条の3第1項)
申請書に記載のない役員・株主等が後から判明すると、それ自体が問題となり得るため、記載漏れのないよう注意が必要です。
許可取得後の届出義務
許可取得後に、申請者や役員等が一定の欠格要件に該当するに至った場合は、該当するに至った日から2週間以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければなりません(廃棄物処理法第14条の2第3項で準用する第7条の2第4項、施行規則第10条の10の3)。この届出義務は、欠格要件に該当しても行政庁が直ちに把握できず処理業を続ける「取消処分逃れ」が横行したことから平成17年10月に設けられたもので、違反は直罰の対象です(行政処分指針第2の2(4))。
また、役員や5%以上の株主、政令使用人に変更があった場合は、変更の日から10日以内(登記事項証明書の添付が必要な場合は30日以内)に変更届を提出する必要があります(施行規則第10条の10第1項第2号・第2項)。変更届では、新たに就任した役員等について住民票の写しや欠格要件の審査書類を添付するため(同条第3項第2号)、役員の就任時にも欠格要件のチェックが必要です。
聴聞通知後の「駆け込み廃業」は通用しない
許可取消処分に係る聴聞の通知を受けた後、処分がされるまでの間に事業の全部廃止の届出をした場合、その者(相当の理由がある者を除く)は届出の日から5年間、欠格要件に該当します。法人の場合は、聴聞通知の日前60日以内に役員等であった者も同様に5年間欠格要件に該当します(廃棄物処理法第7条第5項第4号ヘ・ト、行政処分指針第2の6)。取消処分を避けるために先に廃業届を出しても、欠格要件を免れることはできません。
更新申請中に欠格要件が判明した場合
更新申請中で許可の有効期間が満了した後も、処分がされるまでは従前の許可の効力が続きます(廃棄物処理法第14条第3項)。そのため、有効期間満了後に欠格要件への該当が明らかになった場合でも、更新前の許可が取り消され、更新申請は不許可となります(行政処分指針第2の5、許可事務通知第1の5(1))。
まとめ
欠格要件は、産業廃棄物処理業の許可における「入口」の審査であり、ここに該当すると施設基準等を満たしていても許可を受けられません。さらに、許可取得後に該当すれば許可取消しの対象となり、2週間以内の届出義務もあります。押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 対象は申請者本人だけでなく、役員(相談役・顧問・大株主等の実質的支配者を含み得る)、政令使用人にも及ぶ
- 拘禁刑は法令の種類を問わず5年間、罰金刑は廃棄物処理法や生活環境保全法令等の違反の場合に5年間、欠格要件に該当する
- 「おそれ条項」では、行政指導の累積や、収集運搬業者の過積載のような業務関連の他法令違反まで考慮される
- 役員の事後的な辞任や、聴聞通知後の廃業届では欠格要件・取消しを免れられない
過去に法令違反や許可取消しの経歴がある場合、また役員の就任予定者に不安がある場合は、申請前に行政書士等の専門家へ相談することをおすすめします。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第7条第5項、第7条の2、第14条第5項、第14条の2、第14条の3の2、第23条の3)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第4条の6、第4条の7、第6条の10)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第9条の2、第10条の10、第10条の10の3)
- 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
- 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)
- 愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」「産業廃棄物処分業の審査基準」(令和6年1月31日改正)
