特別管理産業廃棄物を排出する事業場には、「特別管理産業廃棄物管理責任者」を置くことが法律上義務付けられています。廃棄物処理法は、「その事業活動に伴い特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、当該事業場ごとに、…特別管理産業廃棄物管理責任者を置かなければならない」と定めています(廃棄物処理法第12条の2第8項)。ただし、事業者自らが管理責任者となる事業場については、別に置く必要はありません(同項ただし書)。
この管理責任者には、誰でもなれるわけではなく、廃棄物処理法施行規則で定められた資格要件を満たす必要があります(同条第9項、廃棄物処理法施行規則第8条の17)。
誰に設置義務があるのか
設置義務の対象は、特別管理産業廃棄物を「生ずる事業場」を設置している事業者、つまり排出事業者です。病院・診療所など感染性廃棄物を出す医療機関、廃油・廃酸・廃アルカリを出す工場、PCB廃棄物を保管する事業者などが典型例です。
一方、特別管理産業廃棄物処理業の許可基準(施行規則第10条の13、第10条の17)には、管理責任者の設置は掲げられていません。処理業者に求められるのは、後述する「性状の分析を行う者」の知識・技能などです。「処理業の許可を取るために管理責任者が必要」という理解は正確ではないため注意しましょう。
また、「事業場ごと」に置く必要があるため、特別管理産業廃棄物を排出する工場や営業所が複数ある場合は、それぞれの事業場に資格要件を満たす管理責任者を置く必要があります。
感染性産業廃棄物を扱う場合の資格
感染性産業廃棄物を生ずる事業場(病院、診療所等)の管理責任者については、次のいずれかに該当することが資格要件として定められています(施行規則第8条の17第1号)。
- イ:医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、衛生検査技師または歯科衛生士
- ロ:2年以上、廃棄物処理法第20条に規定する環境衛生指導員の職にあった者
- ハ:大学・高等専門学校(旧制の大学・専門学校を含む)において医学、薬学、保健学、衛生学または獣医学の課程を修めて卒業した者(専門職大学の前期課程を修了した者を含む)、またはこれと同等以上の知識を有すると認められる者
医療関係の国家資格を持つ職員がいれば、その方を管理責任者とするのが一般的です。これらの資格を持たない場合でも、「同等以上の知識を有すると認められる者」として資格要件を満たす道が用意されています。
医療関係機関向けの講習会
(公財)日本産業廃棄物処理振興センターは、医療関係機関等を対象にした「医療関係特管責任者講習会」を実施しています。対象は、特別管理産業廃棄物管理責任者の資格者や、必要な知識を習得しようとする方で、学歴・実務経験等の受講資格要件は特にありません。講習会修了者の取扱いは、医療関係機関等に限定した特別管理産業廃棄物を生ずる事業場の「特別管理産業廃棄物管理責任者」として認めるなど、都道府県・政令市によって異なる場合があるとされています(同センター「各講習会の概要と受講料」)。講習の修了をもって管理責任者とする場合は、事業場を管轄する都道府県・政令市の取扱いを事前に確認しておく必要があります。
それ以外の特別管理産業廃棄物を扱う場合の資格
感染性産業廃棄物以外の特別管理産業廃棄物(廃油、廃酸、廃アルカリ、PCB廃棄物等)を生ずる事業場の管理責任者については、学歴と「廃棄物の処理に関する技術上の実務」の経験年数の組み合わせなどで資格要件が定められています(施行規則第8条の17第2号)。
| 号 | 学歴・経歴 | 必要な実務経験 |
|---|---|---|
| イ | 環境衛生指導員の職に2年以上あった者 | ― |
| ロ | 大学(短大を除く)の理学・薬学・工学・農学の課程で衛生工学または化学工学に関する科目を修めて卒業 | 2年以上 |
| ハ | 大学の理学・薬学・工学・農学またはこれらに相当する課程で、衛生工学・化学工学以外の科目を修めて卒業 | 3年以上 |
| ニ | 短大・高専等の理学・薬学・工学・農学等の課程で衛生工学または化学工学に関する科目を修めて卒業 | 4年以上 |
| ホ | 短大・高専等の理学・薬学・工学・農学等の課程で、衛生工学・化学工学以外の科目を修めて卒業 | 5年以上 |
| ヘ | 高校等で土木科、化学科またはこれらに相当する学科を修めて卒業 | 6年以上 |
| ト | 高校等で理学、工学、農学に関する科目またはこれらに相当する科目を修めて卒業 | 7年以上 |
| チ | 学歴を問わない | 10年以上 |
| リ | イ〜チに掲げる者と同等以上の知識を有すると認められる者 | ― |
実務経験年数による資格取得ルートもあるため、資格保有者が社内にいない場合でも、経験年数の要件を満たす従業員を管理責任者として選任できるケースがあります。例えば、学歴にかかわらず廃棄物の処理に関する技術上の実務に10年以上従事した経験があれば、チの要件を満たします。
特管責任者講習会
(公財)日本産業廃棄物処理振興センターは、「特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会(特責)」を実施しています。対象は特別管理産業廃棄物管理責任者の資格や必要な知識を習得しようとする方で、関係条文は施行規則第8条の17第1号・第2号とされています。学歴・実務経験等の受講資格要件は特になく、講習会修了者の取扱いは都道府県・政令市によって異なる場合があるとされています(同センター「各講習会の概要と受講料」)。
2026年度の特管責任者講習会は、2026年3月25日9:00からWebで申込受付が開始されており、事前に講義ビデオを視聴して会場で修了試験を受ける「オンライン講習会」と、会場で講義を受けた後に修了試験を受ける「対面講習会」の2形式で実施されています(同センター「2026年度講習会の開催日程の公表について」)。
処分業における性状分析者の知識・技能
特別管理産業廃棄物の処分業許可の基準では、管理責任者とは別に、感染性産業廃棄物および廃石綿等以外の特別管理産業廃棄物の中間処理または埋立処分にあたり必要な性状の分析を行う者について、特別管理産業廃棄物に関する十分な知識および技能を有していることが求められています(施行規則第10条の17第1号ロ(2)・第2号ロ(2)、愛知県「特別管理産業廃棄物処分業の審査基準」(令和6年1月31日改正)2(2)ウ)。処理する廃棄物の性状を正しく分析できなければ、適正な処理方法の選択や、他の廃棄物との反応リスクの管理ができないため、実務を担う人員体制全体を整えておく必要があります。
施設面でも、廃油、廃酸・廃アルカリ、PCB廃棄物、廃水銀等、有害物質を含む汚泥などの処分施設には、「処分する廃棄物の性状を分析することのできる設備」を備えることが求められています(施行規則第10条の17第1号イ)。分析者と分析設備はセットで審査される要素です。なお、愛知県では、処分する特別管理産業廃棄物の性状の分析を行う者を変更した場合は、変更届出の対象としています(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q20)。
収集運搬業ではPCB廃棄物の従事者に知識・技能が求められる
特別管理産業廃棄物収集運搬業では、PCB廃棄物の収集運搬を業として行う場合に、業務に直接従事する者が、PCB廃棄物の性状に関し特に注意すべき事項、性状に応じた取扱い、事故時の応急措置、緊急時の連絡方法について十分な知識及び技能を有することが求められます(施行規則第10条の13第2号ロ)。審査基準上は、「PCB廃棄物の収集運搬業作業従事者講習」の修了が求められています(愛知県「特別管理産業廃棄物収集運搬業の審査基準」2(2)ウ)。
選任を怠った場合のリスクと実務対応
特別管理産業廃棄物管理責任者の選任は法律上の義務であり、置かなかった者は30万円以下の罰金に処せられます(廃棄物処理法第30条第5号)。法人の従業者が業務に関して違反した場合は、行為者のほか法人にも罰金刑が科される両罰規定の対象です(同法第32条第1項第2号)。
該当する事業場を新たに開設する場合や、既存の管理責任者が退職・異動する場合には、速やかに後任者の資格要件を確認し、選任手続きを進める必要があります。特に次の場面は選任漏れが起きやすいため注意しましょう。
- 新たに特別管理産業廃棄物を排出する工程・設備を導入したとき
- 管理責任者が退職・異動・長期休業したとき
- 事業場を新設・移転したとき(事業場ごとの設置義務のため)
管理責任者が関わる主な実務
管理責任者は、「当該事業場に係る当該特別管理産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせるため」に置かれるものです(廃棄物処理法第12条の2第8項)。排出事業者として求められる次のような実務を把握しておくことが期待されます。
- 特別管理産業廃棄物保管基準に従った保管(同条第2項)
- 委託する際の、処理業者への種類・数量・性状等の文書による事前通知(施行令第6条の6第1号)
- 委託契約書の締結と保存、マニフェストの交付・管理(同法第12条の2第6項、第12条の3)
- 帳簿の備付け(運搬・処分の年月日、運搬先ごとの運搬量等)(同法第12条の2第14項、施行規則第8条の18)
- 前年度の発生量が50トン以上の事業場では、特別管理産業廃棄物処理計画の作成(処理に係る管理体制に関する事項を含む)と、翌年度6月30日までの実施状況報告(施行令第6条の7、施行規則第8条の17の2・第8条の17の3)
まとめ
特別管理産業廃棄物管理責任者は、扱う廃棄物の種類(感染性かそれ以外か)によって求められる資格が異なります。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 設置義務は、特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置する事業者(排出事業者)に、事業場ごとに課される
- 感染性産業廃棄物の事業場は、医師・看護師・臨床検査技師・歯科衛生士等の医療系資格者などが対象
- それ以外の事業場は、学歴と実務経験年数の組み合わせ(最短2年、学歴不問なら10年)などで要件を満たす
- 講習会修了者の取扱いは都道府県・政令市によって異なるため、事前確認が必要
- 処分業では、別途「性状の分析を行う者」の知識・技能が許可基準として審査される
- 設置を怠ると30万円以下の罰金(両罰規定あり)
選任漏れは法令違反となるため、該当する事業場では必ず資格要件を満たす責任者・担当者を配置しましょう。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第12条の2、第12条の3、第30条、第32条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第6条の6、第6条の7)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第8条の17、第8条の17の2、第8条の17の3、第8条の18、第10条の13、第10条の17)
- 愛知県「特別管理産業廃棄物収集運搬業の審査基準」「特別管理産業廃棄物処分業の審査基準」(令和6年1月31日改正)
- 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」
- 公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター「各講習会の概要と受講料」「2026年度講習会の開催日程の公表について」
