産業廃棄物の処分業許可を受けるだけでは、焼却施設のような一定規模以上の処理施設を設置することはできません。こうした施設については、処分業許可とは別に「産業廃棄物処理施設設置許可」を受ける必要があります(廃棄物処理法第15条第1項)。本記事ではその手続きの概要を紹介します。
設置許可は「施設」に対する許可で、処分業許可は「事業」に対する許可です。そのため、処分業者だけでなく、製造業者などが自社の事業活動で生じた産業廃棄物を自ら処理するために一定規模以上の処理施設を設ける場合にも、設置許可が必要になります。国の通知でも、製造事業者が自社処分のための施設を設置しようとする場合を想定した記述があります(「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号。以下「許可事務通知」)第2の6)。
許可なく産業廃棄物処理施設を設置した場合は、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科の対象になります(廃棄物処理法第25条第1項第8号)。
どのような施設が許可の対象になるか
廃棄物処理法施行令では、焼却施設、汚泥の脱水施設、廃油の油水分離施設、廃プラスチック類の破砕施設など、施設の種類ごとに、設置許可が必要となる処理能力の規模基準を定めています(廃棄物処理法施行令第7条)。規模基準未満の施設であれば設置許可は不要な場合もあるため、計画している施設の処理能力を事前に確認することが重要です。
| 施設 | 設置許可が必要となる規模 |
|---|---|
| 汚泥の脱水施設 | 処理能力10m³/日超 |
| 汚泥の乾燥施設 | 処理能力10m³/日超(天日乾燥は100m³/日超) |
| 汚泥の焼却施設 | 5m³/日超、200kg/時以上、または火格子面積2m²以上 |
| 廃油の油水分離施設 | 10m³/日超 |
| 廃油の焼却施設 | 1m³/日超、200kg/時以上、または火格子面積2m²以上 |
| 廃酸・廃アルカリの中和施設 | 50m³/日超 |
| 廃プラスチック類の破砕施設 | 5t/日超 |
| 廃プラスチック類の焼却施設 | 100kg/日超、または火格子面積2m²以上 |
| 木くず(建設業等から生じたもの)・がれき類の破砕施設 | 5t/日超 |
| その他の産業廃棄物の焼却施設 | 200kg/時以上、または火格子面積2m²以上 |
| 有害物質を含む汚泥のコンクリート固型化施設、水銀を含む汚泥のばい焼施設、廃水銀等の硫化施設、シアン化合物の分解施設、廃石綿等・石綿含有産業廃棄物の溶融施設、PCB廃棄物の焼却・分解・洗浄・分離施設 | 規模にかかわらず |
| 産業廃棄物の最終処分場(遮断型・安定型・管理型) | 規模にかかわらず |
建設業者ががれき類や木くずの破砕を始める場合は、「日量5トン」が設置許可の要否の分かれ目になります。
処理能力の考え方
申請書に記載する処理能力は、1時間当たりの処理能力、稼働時間、これらを乗じた1日当たりの処理能力を記載します。処理能力とは、1日当たりの実稼働時間における定格標準能力を意味し、実稼働時間が1日8時間に達しない場合は、稼働時間を8時間とした場合の定格標準能力とするとされています(許可事務通知第2の1(1)④)。「短時間しか動かさないから日量5トン以下」という計算は認められないということです。
なお、処理能力の記載にあたっては、メーカーのカタログやパンフレットの数値をそのまま記載するのではなく、施設の構造・仕様に基づいて計算した能力計算書を添付することが求められるのが一般的な運用です。能力計算で係数を用いる場合には、その根拠も明記する必要があります(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q28)。
許可申請に必要な事項
設置許可の申請にあたっては、施設の位置・構造・設備、処理する産業廃棄物の種類、処理方式、維持管理に関する計画などを記載した申請書の提出が必要です。法律上の記載事項は次のとおりです(廃棄物処理法第15条第2項)。
- 氏名または名称、住所、法人の場合は代表者の氏名
- 設置の場所
- 施設の種類
- 処理する産業廃棄物の種類
- 処理能力(最終処分場の場合は埋立地の面積と埋立容量)
- 位置、構造等の設置に関する計画
- 維持管理に関する計画
- 最終処分場の場合は災害防止のための計画
- その他環境省令で定める事項
国の通知では、記載方法を次のように整理しています(許可事務通知第2の1)。
- 「施設の位置」は、設置予定場所の敷地内での施設配置を図面で記載する
- 「処理方式」は、焼却施設であればストーカ式、ロータリーキルン方式、流動床方式等の別を記載する
- 「構造及び設備」は、平面図、立面図、断面図、構造図等を用いて記載する
- 「排ガス及び排水の量及び処理方法」には、煙突の数・位置・高さ、放流口の数・位置・放流先等も記載する
- 維持管理計画には、周辺の生活環境の保全のため自ら達成することとした排ガス濃度・放流水質等の数値、測定頻度、施設の点検等を記載する
- 「廃棄物の搬入及び搬出の時間及び方法」には、搬入・搬出の手段、経路、時間等を記載する
- 処理する廃棄物に石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨を明記する
あわせて、施設の設置が周辺の生活環境に与える影響について調査した「生活環境影響調査」の結果を添付することが求められます(廃棄物処理法第15条第3項)。この調査は、大気・水質・騒音・振動など、施設の種類に応じた項目について行われます。
生活環境影響調査の内容
国の通知では、生活環境影響調査について次のように整理しています(許可事務通知第2の3)。
- 調査事項:施設の存在・稼働、廃棄物の搬出入・保管に伴って生じる大気質、騒音、振動、悪臭、水質、地下水。施設建設のための土地の改変や工事の影響は原則として対象外(最終処分場建設に伴う地下水の流れへの影響は対象)
- 項目の選定:施設の種類・規模、廃棄物の種類・性状、地域特性を勘案して申請者が選定する。例えば焼却施設の排ガスは二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質、塩化水素、ダイオキシン類など、廃棄物運搬車両の排気ガスは二酸化窒素と浮遊粒子状物質など
- 現況把握:既存の文献・資料または現地調査により行う。気象・水象は年間を通じた変化をおおむね把握できる程度
- 予測:大気質はプルーム式・パフ式等の大気拡散式、騒音・振動は距離減衰式など、一般的な予測手法で行い、影響が最大になると想定される時期について予測する
- 調査しない項目:排水を出さない施設の水質のように影響が想定されない項目は調査不要だが、その項目と理由を記載する
- わかりやすさ:利害関係者が意見を述べる際の基礎情報となるため、図表を用いるなど分かりやすく記述し、出典を明らかにする
環境影響評価法や条例に基づく評価書で生活環境影響調査に相当する内容を持つものは、そのまま添付して差し支えないとされ、2以上の施設を近接して設置する場合は併せて調査を行うこともできます(同(8)(9))。
環境保全措置の具体例
環境保全設備・環境保全措置についても、施設の特性や周辺の土地利用状況を踏まえた具体的な対策が求められます。一般的には、粉じん対策としての集塵機の設置や散水、騒音対策としての防音壁の設置や低騒音型機器の導入、振動対策としての防振ゴムの設置、悪臭対策としての脱臭設備の設置、降雨時・散水時の汚水対策としての沈砂池の設置、排水が生じる場合の排水処理施設の設置、油の付着がある場合の防油堤・油水分離槽の設置、地下浸透防止のための床面のコンクリート舗装などが挙げられます(愛知県「手続きQ&A」Q30)。
申請者の能力・欠格要件
設置許可の基準は、①設置計画が技術上の基準に適合すること、②設置計画・維持管理計画が周辺地域の生活環境の保全と周辺の施設について適正な配慮がなされたものであること、③申請者の能力が基準に適合すること、④申請者が欠格要件に該当しないこと、の4つです(廃棄物処理法第15条の2第1項)。要件を満たせば必ず許可しなければならず、知事に許可するかどうかの裁量はないとされています(許可事務通知第2の2)。ただし、ごみ処理施設や産業廃棄物処理施設の過度の集中により大気環境基準の確保が困難となると認めるときは、許可をしないことができます(廃棄物処理法第15条の2第2項)。
経理的基礎の審査は処分業許可と同様の考え方で行われますが、製造事業者が自社処分のための施設を設置しようとする場合などは、審査対象をその施設に係る事業だけでなく、廃棄物処理部門や事業全体の見通しに広げて判断されることがあります(許可事務通知第2の6)。
縦覧・意見聴取の手続き
産業廃棄物処理施設の設置許可申請では、申請内容を告示して一定期間の縦覧に供するとともに、関係市町村長の意見を聴き、関係住民等からの意見書の提出を受け付ける手続きが設けられています。これは、施設周辺の生活環境への配慮という観点から設けられている手続きで、通常の許可申請よりも時間を要する点に留意が必要です。
縦覧手続の対象となる施設
縦覧等の手続が必要となるのは、政令で定める施設です(廃棄物処理法第15条第4項、施行令第7条の2)。具体的には、汚泥・廃油・廃プラスチック類等の焼却施設、廃水銀等の硫化施設、廃石綿等・石綿含有産業廃棄物の溶融施設、PCB廃棄物の焼却・分解・洗浄・分離施設、最終処分場などが該当します。破砕施設・脱水施設・中和施設などは、設置許可は必要でも縦覧等の手続の対象にはなっていません。
手続の流れ
| 手続 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 告示 | 申請者名、設置場所、施設の種類、処理する廃棄物の種類、申請年月日、縦覧場所等を告示 | 法15条4項 |
| 縦覧 | 申請書と生活環境影響調査書を告示の日から1か月間縦覧 | 法15条4項 |
| 市町村長の意見 | 生活環境の保全上関係がある市町村長に通知し、期間を指定して意見を聴く | 法15条5項 |
| 利害関係者の意見書 | 縦覧期間満了の日の翌日から2週間以内に意見書を提出できる | 法15条6項 |
| 専門家の意見 | 生活環境の保全に関し専門的知識を有する者の意見を聴く | 法15条の2第3項 |
国の通知では、次のような運用上の考え方が示されています(許可事務通知第2の4、第2の5)。
- 申請書に形式上の不備がある場合は、補正を求めたうえで告示・縦覧の手続を行う
- 申請内容が技術上の基準に適合しない場合は、告示・縦覧を経ずに不許可処分としても差し支えない
- 告示は地方公共団体の公報等、利害関係者が通常その内容を知り得る方法で行い、縦覧場所は設置予定場所の近傍の保健所等とする
- 縦覧期間の1か月は告示の日の翌日から起算し、休日も含む
- 意見書を提出できる者には、周辺に居住する者のほか、周辺で事業を営んでいる者等も含まれるが、意見は生活環境の保全上の見地からのものに限られる
- 専門家の意見聴取は、既存の審議会の活用や専門家への個別の意見聴取等でも差し支えない
- 都市計画決定がなされる施設については、都市計画担当部局と十分な整合を図る
縦覧を要する施設の許可申請書は、通常の許可申請よりもはるかに多い部数(愛知県では50部)の提出が求められることもあり、書類の準備自体にも相応の労力がかかります(愛知県「手続きQ&A」Q10)。
許可後の手続:使用前検査・定期検査・情報公表
許可を受けた後も、施設を使い始めるまでに次の手続があります。
- 使用前検査:施設の設置者は、都道府県知事の検査を受け、施設が申請書に記載した設置に関する計画に適合していると認められた後でなければ、施設を使用してはなりません(廃棄物処理法第15条の2第5項)。検査は実地で、申請時の書類・図面との相違を確認しつつ、設置者または技術管理者の立会いのもとで行うとされています(許可事務通知第2の9)
- 定期検査:縦覧対象の施設の設置者は、環境省令で定める期間ごとに、施設が技術上の基準に適合しているかについて知事の検査を受けなければなりません(廃棄物処理法第15条の2の2)
- 維持管理と情報公表:設置者は技術上の基準と維持管理計画に従って維持管理しなければならず、縦覧対象施設では維持管理の計画・状況に関する情報をインターネット等で公表する必要があります(同法第15条の2の3)
許可には生活環境の保全上必要な条件を付すことができ、例えば産業廃棄物の搬入時間の指定などが考えられるとされています(同法第15条の2第4項、許可事務通知第2の8)。
設置後に変更する場合・施設を引き継ぐ場合
処理する廃棄物の種類、処理能力、設置計画、維持管理計画を変更する場合は、軽微な変更を除き変更許可が必要です(廃棄物処理法第15条の2の6第1項)。軽微な変更については別記事で解説しています。
施設を譲り受けたり借り受けたりする場合は、譲受け等の許可が必要です。施設を借りた者が返還し、当初の貸主が再び稼働させる場合にも、あらかじめ譲受け等の許可が必要とされています(許可事務通知第4の4)。また、設置許可を受けても施設の建設(基礎部分のみの工事を除く)に着手していない段階では、譲受けの対象施設が存在しないため許可されないとされています(同第4の1)。
設置許可が取り消された施設を、別の者が過去の許可と同一の維持管理計画等で新たに許可を取得して稼働しようとする場合は、生活環境影響調査書の添付と調査書の縦覧は不要とされていますが、申請書の縦覧や関係市町村・利害関係者からの意見聴取は省略できません(許可事務通知第2の3(10))。
まとめ
処理施設設置許可は、処分業許可とは別の手続きであり、生活環境影響調査や縦覧手続きなど、通常の許可申請よりも準備に時間がかかります。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 対象施設と規模は施行令第7条で定められ、破砕施設は日量5トン超などが基準。処理能力は8時間稼働を前提に計算する
- 申請書には設置計画・維持管理計画を記載し、生活環境影響調査書を添付する
- 焼却施設・最終処分場などは、告示・1か月の縦覧・市町村長と専門家の意見聴取・利害関係者の意見書提出の手続を経る
- 許可後も使用前検査に合格するまで使用できず、縦覧対象施設は定期検査と情報公表が必要
- 無許可設置は5年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金の対象
処理能力計算書の作成や環境保全設備の検討も含め、施設の設置を検討する段階から、スケジュールに余裕をもって計画を進めることをおすすめします。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第15条、第15条の2、第15条の2の2、第15条の2の3、第15条の2の6、第25条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第7条、第7条の2)
- 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
- 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」
