「病院やクリニックから出る感染性廃棄物の運搬を請け負いたい」
「PCBを含む古い電気機器の運搬の相談を受けた。通常の特管許可で運べるの?」
特別管理産業廃棄物(特管物)を運ぶには、通常の産業廃棄物収集運搬業とは別に、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です(廃棄物処理法第14条の4第1項)。そのうえで、PCB廃棄物と感染性産業廃棄物については、特管の中でもさらに追加の要件が定められています。
この記事では、特管収運の許可のうち、PCB廃棄物と感染性産業廃棄物に特有の要件を、許可申請・施設・人員・運搬中のルールに分けて解説します。特管収運・処分業の許可要件の全体像は「特別管理産業廃棄物収集運搬業・処分業許可の要件とは」をご覧ください。
第1章|対象となる廃棄物
PCB廃棄物
特別管理産業廃棄物のうち「特定有害産業廃棄物」として、次の3つがPCB廃棄物に当たります(廃棄物処理法施行令第2条の4第5号イ〜ハ)。
- 廃ポリ塩化ビフェニル等:廃PCB及びPCBを含む廃油
- ポリ塩化ビフェニル汚染物:PCBが染み込んだ汚泥(基準に適合しないもの)、PCBが塗布され・染み込んだ紙くず、PCBが染み込んだ木くず・繊維くず、PCBが付着し・封入された廃プラスチック類・金属くず、PCBが付着した陶磁器くず・コンクリートの破片等
- ポリ塩化ビフェニル処理物:廃PCB等やPCB汚染物を処分するために処理したもの(基準に適合しないもの)
許可証の事業の範囲では、例えば「廃PCB等」のように記載されます(「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号。以下「許可事務通知」)第1の11(2)⑤)。
感染性産業廃棄物
感染性産業廃棄物は、施行令の別表に掲げる廃棄物で、国内で生じたものについては施行令別表第2の上欄に掲げる施設で生じたものとされています(施行令第2条の4第4号)。対象となる施設の範囲は、同別表で確認しておきましょう。許可証の事業の範囲には「感染性産業廃棄物」と記載されます(許可事務通知第1の11(2)④)。
第2章|運搬施設(車両・容器)の追加要件
特管収運の施設基準のうち、PCB廃棄物と感染性産業廃棄物には、次のような追加要件があります(廃棄物処理法施行規則第10条の13第1号)。
| 品目 | 追加される施設の要件 |
|---|---|
| 感染性産業廃棄物 | 感染性廃棄物の運搬に適する保冷車その他の運搬施設を有すること(ハ) |
| PCB廃棄物 | 応急措置設備等及び連絡設備等が備え付けられた運搬施設を有すること(ニ) |
「応急措置設備等」とは、事故時に廃PCB等・PCB汚染物・PCB処理物の飛散、流出または地下への浸透により生活環境の保全上の支障が生じないよう応急の措置を講ずるための設備・器具を、「連絡設備等」とは、随時必要な連絡を行うことができる設備・器具をいいます(施行規則第10条の12第3項第3号、第7条の2第3項第5号)。
感染性廃棄物の容器表示
愛知県の審査基準では、感染性産業廃棄物の収集または運搬を業として行う場合には、運搬容器に感染性の廃棄物である旨の事項が表示されていることが求められています(愛知県「特別管理産業廃棄物収集運搬業の審査基準」(令和6年1月31日改正)2(1)イ)。
運搬容器の構造
特管収運の処理基準により、感染性産業廃棄物・PCB廃棄物は、必ず運搬容器に収納して収集・運搬しなければならず、その運搬容器は密閉できることその他の環境省令で定める構造を有するものでなければなりません(廃棄物処理法施行令第6条の5第1項第1号イで例によるとされる第4条の2第1号ホ・ヘ)。施行規則では、特別管理一般廃棄物について、次のような容器の構造が定められています。
- PCBの漏洩を防止するために必要な措置が講じられていること(密閉できることなど)、収納しやすいこと、損傷しにくいこと(施行規則第1条の11)
- 感染性廃棄物等を収納する容器は、収納しやすく、損傷しにくく、密閉できること(施行規則第1条の11の2)
第3章|人員の追加要件:PCB従事者の講習
業務に直接従事する者の知識・技能
PCB廃棄物の収集または運搬を業として行う場合には、その業務に直接従事する者が、次の事項について十分な知識及び技能を有することが求められます(施行規則第10条の13第2号ロ)。
- PCB廃棄物の性状に関し特に注意すべき事項
- 性状に応じた取扱い
- 事故時における生活環境の保全上の支障を防止するために講ずる応急の措置
- 緊急時における連絡の方法
愛知県の審査基準では、その業務に直接従事する者が、(公財)日本産業廃棄物処理振興センターが実施する「PCB廃棄物の収集運搬業作業従事者講習」を修了した者であることとされています(愛知県「特別管理産業廃棄物収集運搬業の審査基準」2(2)ウ)。
通常の許可申請の講習会(特別管理産業廃棄物の収集・運搬課程)は、代表者・役員・政令使用人が受講するものですが、PCB従事者講習は「業務に直接従事する者」、つまり実際に運搬作業に当たる運転手・作業員が対象です。人数分の受講が必要になり得る点に注意しましょう。
PCB従事者講習の対象者
同センターは、この講習の対象を「PCB廃棄物処理事業に係るPCB廃棄物の収集運搬に直接従事する方」とし、PCB入り廃感圧複写紙等を選別し容器に収納・運搬する作業等に従事する方、分析機関の方、無害化処理等の業務に従事する方にも受講を推奨しています。また、一部の自治体や銀行等では、PCB入り感圧紙の分析・仕分け作業等の入札で、この講習の修了を求めている例があるとしています(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター「各講習会の概要と受講料」)。
感染性廃棄物に関わる講習
感染性廃棄物については、同センターが「医療関係機関等を対象にした特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会」を実施しています。これは排出する側(医療関係機関等)の管理責任者向けのもので、学歴・実務経験等の受講資格要件は特になく、講習会修了者の取扱いは都道府県・政令市によって異なる場合があるとされています(同)。収集運搬業者が医療機関と取引する際は、排出側の管理体制の仕組みとして知っておくと役立ちます(「特別管理産業廃棄物管理責任者の資格要件」参照)。
第4章|許可申請時の追加書類(PCB廃棄物)
PCB廃棄物の収集または運搬を業として行う場合には、通常の特管収運の申請書類に加えて、次の書類を添付しなければなりません(施行規則第10条の12第3項)。
- 運搬容器の構造図
- 連絡設備等の概要を記載した書類
- 応急措置設備等の概要を記載した書類
- 業務に直接従事する者が、上記4項目について十分な知識及び技能を有することを示す書類
講習修了証は、従事者の知識・技能を示す書類として準備することになります。車両や容器だけでなく、従事者の講習修了まで含めたスケジュールで申請準備を進めましょう。
第5章|運搬中のルール(処理基準)
許可を取った後の運搬では、特別管理産業廃棄物処理基準に従う必要があります(廃棄物処理法第14条の4第12項)。PCB廃棄物・感染性産業廃棄物に関係する主なルールは次のとおりです。
他の物と区分して運ぶ
特別管理産業廃棄物は、他の物と混合するおそれのないように、区分して収集・運搬しなければなりません(施行令第6条の5第1項第1号で例によるとされる第4条の2第1号イ(2))。ただし、感染性産業廃棄物と感染性一般廃棄物とが混合している場合で、感染性廃棄物以外の物が混入するおそれのない場合などは、区分しなくてよいとされています(施行規則第8条の6第1号)。
文書の携帯
特別管理産業廃棄物の収集・運搬を行う者は、運搬する特別管理産業廃棄物の種類と、取り扱う際に注意すべき事項を文書に記載し、携帯しなければなりません。ただし、運搬容器にこれらの事項が表示されている場合は不要です(施行令第6条の5第1項第1号で例によるとされる第4条の2第1号ニ、施行規則第1条の10)。
積替え・保管
特別管理産業廃棄物の保管は、積替え(基準に適合するもの)を行う場合を除き行ってはならないとされていますが、PCB廃棄物についてはこの限りではないとされています(施行令第6条の5第1項第1号ハ)。積替え・保管の場所では、品目に応じて次の措置が必要です(施行規則第8条の10)。
- PCB汚染物・PCB処理物、特別管理産業廃棄物である廃油:容器に入れ密封するなどPCBの揮発を防止する措置、高温にさらされないための措置
- PCB汚染物・PCB処理物:腐食の防止のための措置。環境大臣が定めるPCB汚染物は形状を変更しない
- 腐敗するおそれのある特別管理産業廃棄物(感染性廃棄物など):容器に入れ密封する等の腐敗防止の措置
委託元からの文書通知
排出事業者は、特別管理産業廃棄物の運搬を委託しようとする者に対し、あらかじめ、種類・数量・性状その他の事項を文書で通知しなければなりません(施行令第6条の6第1号)。受託する側としても、この通知を受けて性状や注意事項を把握してから運搬に当たることが重要です。
マニフェスト・電子マニフェスト
特別管理産業廃棄物のマニフェストは、写しが返送されるべき期間が60日と、通常の産業廃棄物(90日)より短く設定されています(施行規則第8条の28第1号)。また、前々年度の発生量が50トン以上の事業場からの特別管理産業廃棄物の委託には電子マニフェストの使用が義務付けられていますが、PCB廃棄物は義務の対象から除かれています(施行規則第8条の31の2・第8条の31の3)。感染性産業廃棄物は義務の対象になり得るため、大規模な医療機関などと取引する場合は、電子マニフェストへの対応が必要です(「電子マニフェストの使用義務とは?」参照)。
第6章|感染性一般廃棄物も運べる
医療機関から出る感染性廃棄物には、産業廃棄物に当たるものと一般廃棄物に当たるものが混在することがあります。特別管理産業廃棄物収集運搬業者のうち感染性産業廃棄物の収集・運搬を行う者は、感染性一般廃棄物の収集・運搬を行うことができるとされています(廃棄物処理法第14条の4第17項、施行規則第10条の20第2項)。この場合、特別管理一般廃棄物処理基準に従って収集・運搬しなければなりません(同法第14条の4第17項)。
第7章|申請手数料(愛知県の例)
愛知県の特別管理産業廃棄物収集運搬業の申請手数料は、新規許可81,000円、更新許可74,000円、変更許可72,000円です(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q9)。既に特管収運の許可を持ち、新たにPCB廃棄物や感染性産業廃棄物を追加する場合は、事業範囲の変更許可の対象になります(「産業廃棄物処理業の事業範囲変更許可の手続き」参照)。
第8章|特管収運の許可取得は行政書士へ
ポイントをまとめます。
- PCB廃棄物・感染性産業廃棄物の運搬には、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可が必要
- 感染性産業廃棄物は保冷車等の運搬施設と容器への感染性表示、PCB廃棄物は応急措置設備・連絡設備を備えた運搬施設が必要
- PCB廃棄物は、業務に直接従事する者全員の知識・技能(従事者講習の修了)が求められ、申請時に容器構造図・設備概要・従事者の書類を添付する
- 運搬中は、容器への収納・密閉、他の物との区分、文書の携帯(または容器への表示)などの処理基準を守る
- 感染性産業廃棄物を扱う許可業者は、感染性一般廃棄物も運搬できる
三澤行政書士事務所では、特管収運の新規許可や品目追加の変更許可、従事者講習を含めた申請スケジュールづくりをサポートしています。東海エリアの事業者様は、お気軽にご相談ください。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第14条の4)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第2条の4、第4条の2、第6条の5、第6条の6)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第1条の10、第1条の11、第1条の11の2、第7条の2、第8条の6、第8条の10、第8条の28、第8条の31の2、第8条の31の3、第10条の12、第10条の13、第10条の20)
- 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
- 愛知県「特別管理産業廃棄物収集運搬業の審査基準」(令和6年1月31日改正)
- 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」
- 公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター「各講習会の概要と受講料」