産業廃棄物の処理を外部の業者に委託する場合、排出事業者は口頭やメールのやり取りだけで済ませることはできず、書面による委託契約を締結する必要があります。この委託契約書には、法令で定められた事項を漏れなく記載しなければなりません。
排出事業者が産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合は、政令で定める「委託基準」に従わなければならないとされており(廃棄物処理法第12条第6項)、その内容は施行令第6条の2に定められています。委託契約を「書面により行い」、所定の事項についての条項を含め、所定の書面を添付することは、この委託基準の中核です(施行令第6条の2第4号)。
委託基準の全体像(施行令第6条の2)
- 運搬は、他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者で、委託しようとする運搬がその事業の範囲に含まれるものに委託すること(第1号)
- 処分・再生は、他人の産業廃棄物の処分・再生を業として行うことができる者で、委託しようとする処分・再生がその事業の範囲に含まれるものに委託すること(第2号)
- 委託契約は書面で行い、所定の条項を含め、所定の書面を添付すること(第4号)
- 委託契約書と添付書面を、契約終了の日から5年間保存すること(第5号)
- 再委託の承諾をした場合は、承諾書面の写しを5年間保存すること(第6号、施行規則第8条の4の4)
委託先は、産業廃棄物収集運搬業者・処分業者のほか、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみを扱う者、再生利用指定を受けた者、各種認定を受けた者など、施行規則で定める者に限られます(廃棄物処理法第12条第5項、施行規則第8条の2の8、第8条の3)。
委託契約書に必要な記載事項
廃棄物処理法施行令・施行規則では、産業廃棄物の処理委託契約書に記載すべき事項として、次の内容を定めています。
施行令で定める事項(施行令第6条の2第4号イ〜ホ)
- 委託する産業廃棄物の種類および数量
- 運搬を委託するときは、運搬の最終目的地の所在地
- 処分・再生を委託するときは、その処分・再生の場所の所在地、処分・再生の方法、処分・再生に係る施設の処理能力
- 処分・再生を委託する産業廃棄物が輸入された廃棄物であるときは、その旨
- 中間処理を委託するときは、その産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法、最終処分に係る施設の処理能力
施行規則で定める事項(施行規則第8条の4の2)
- 委託契約の有効期間
- 委託者が受託者に支払う料金
- 受託者が許可業者である場合は、その事業の範囲
- 運搬の委託で、受託者が積替え・保管を行う場合は、その場所の所在地、保管できる産業廃棄物の種類、積替えのための保管上限
- 上記4の場合で、委託する産業廃棄物が安定型産業廃棄物であるときは、積替え・保管の場所で他の廃棄物と混合することの許否等に関する事項
- 委託者が有する、適正な処理のために必要な情報
- 性状および荷姿
- 通常の保管状況の下での腐敗、揮発等の性状の変化
- 他の廃棄物との混合等により生ずる支障
- 廃パソコン、廃エアコン、廃テレビ、廃電子レンジ、廃衣類乾燥機、廃冷蔵庫、廃洗濯機でJIS C 0950の含有マークが付されたものである場合は、その表示に関する事項
- 石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨
- PRTR法の第一種指定化学物質等取扱事業者で、委託する産業廃棄物に第一種指定化学物質が含まれ、または付着している場合は、その旨と物質の名称・量または割合
- その他取り扱う際に注意すべき事項
- 契約期間中に上記6の情報に変更があった場合の情報の伝達方法
- 受託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項
- 委託契約を解除した場合の、処理されない産業廃棄物の取扱いに関する事項
特に「中間処理を委託する場合の最終処分の場所・方法・処理能力」や、「契約解除時の未処理廃棄物の取扱い」は、ひな形に入っていない、あるいは空欄のままになっていることが多い項目です。中間処理業者からどこへ運ばれて最終処分されるのかまで契約書に記載することが求められている点は、排出事業者の処理責任が最終処分まで及ぶことを表しています。
添付すべき書面(施行規則第8条の4)
委託契約書には、受託者が他人の産業廃棄物の運搬・処分を業として行うことができる者であって、委託しようとする運搬・処分がその事業の範囲に含まれることを証する書面(許可証の写し、認定証の写し等)を添付する必要があります。
運搬と処分は、それぞれの許可業者と契約する
収集運搬業者と処分業者が異なる場合は、それぞれと個別に契約を締結する必要があり、いわゆる「二者契約」が原則とされています。委託基準上、運搬は運搬を業として行うことができる者に、処分は処分を業として行うことができる者に委託することとされており(施行令第6条の2第1号・第2号)、添付書面も運搬に係る委託契約書には収集運搬業の許可証の写し、処分に係る委託契約書には処分業の許可証の写しと区分されています(施行規則第8条の4)。運搬を担う事業者、処分を担う事業者それぞれの許可の内容(品目・処理方法)に対応した契約を結ぶ必要がある点に注意しましょう。
特別管理産業廃棄物の場合
特別管理産業廃棄物を委託する場合は、上記の委託基準に加えて、委託しようとする者に対し、あらかじめ、特別管理産業廃棄物の種類、数量、性状その他の事項を文書で通知しなければなりません(施行令第6条の6第1号)。
受託者の事業範囲との整合性の確認
委託契約書に記載する「受託者の事業の範囲」は、実際にその受託者が保有している許可の内容と一致している必要があります。受託者が許可を受けていない種類の廃棄物や処理方法を契約書に記載してしまうと、その部分については無許可事業者への委託とみなされるおそれがあります。契約締結時には、受託者の許可証の写しを確認し、委託しようとする廃棄物の種類・数量・処理方法が許可の範囲内に収まっているかを必ずチェックしましょう。受託者が事業範囲の変更許可を受けた場合には、契約内容も速やかに見直す必要があります。
許可証の「事業の範囲」の読み方
許可証の「事業の範囲」欄は、取り扱う廃棄物の種類が明確になるよう、例えば次のように記載されることになっています(「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号。以下「許可事務通知」)第1の11(1))。
- 汚泥(含水率85%以下のものに限り、判定基準に適合しないもの及び特別管理産業廃棄物であるものを除く。)
- 廃プラスチック類、紙くず及びゴムくず(これらのうち特別管理産業廃棄物であるものを除く。)
- 廃プラスチック類及び金属くず(廃プリント配線板を含む。)
- がれき類
また、石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合はその旨を明記することとされています(同)。例えば、石綿含有の廃材を委託するのに、受託者の許可が「石綿含有産業廃棄物を除く」となっていれば、事業の範囲外です。汚泥のように含水率や性状で限定がかかっている場合もあるため、品目名だけでなく括弧書きの限定まで確認することが大切です。
許可証には「許可の条件」欄もありますが、これは運搬経路や搬入時間帯の指定など生活環境の保全上必要な条件を記載する欄であり、事業の範囲を記載する欄ではありません(許可事務通知第1の6、第1の11(3))。
積替え保管を行う収集運搬業者の場合
受託者が積替え保管を行う場合は、契約書に積替え保管場所の所在地、保管できる廃棄物の種類、保管上限を記載する必要があります(施行規則第8条の4の2第4号)。委託する廃棄物がその積替え保管場所で扱える品目か、許可証で確認しておきましょう。
保存期間は5年間
締結した委託契約書は、契約の終了の日から5年間保存する義務があります(施行令第6条の2第5号、施行規則第8条の4の3)。添付した許可証の写し等の書面も同様に保存の対象です。マニフェストの保存期間と同じく5年間とされているため、あわせて管理しておくと実務上わかりやすいでしょう。契約書とマニフェストを廃棄物の種類・委託先ごとに紐づけてファイリングしておくと、行政の立入検査等の際にもスムーズに対応できます。
保存期間の起算点が「契約の終了の日」である点に注意が必要です。長期間自動更新している契約は、契約期間中はずっと保存し、終了後さらに5年間保存することになります。
なお、立入検査では帳簿書類その他の物件の検査が行われ得るとされており(廃棄物処理法第19条第1項、「行政処分の指針について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033028号。以下「行政処分指針」)第7の2(3))、委託契約書とマニフェストはその代表的な確認対象です。
再委託を承諾した場合の書面
受託者が再委託をする場合、受託者はあらかじめ排出事業者に再受託者の氏名・名称等を明らかにし、排出事業者の書面による承諾を受けなければなりません(施行令第6条の12第1号)。排出事業者は、承諾をした場合はその書面の写しを承諾した日から5年間保存する必要があります(施行令第6条の2第6号、施行規則第8条の4の4)。
委託契約書が不備な場合のリスク
必要事項の記載が漏れている委託契約書は、委託基準に適合しない委託となります。委託基準に違反して産業廃棄物の処理を委託した者は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科の対象です(廃棄物処理法第26条第1号)。法人の従業者が業務に関して違反した場合は、法人にも罰金刑が科されます(同法第32条第1項第2号)。さらに、許可業者以外の者に委託した場合は、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科というより重い罰則の対象になります(同法第12条第5項、第25条第1項第6号)。
委託基準に従わない委託を行った排出事業者は、措置命令の対象となる可能性もあります。行政処分指針は、不適正処理の実行者が所在不明になっている場合でも、委託基準違反等の違法性が認められる排出事業者に対しては積極的に措置命令を発出すべきとしています(行政処分指針第9の2(2)⑥)。
契約書のひな形を定期的に見直し、法令改正に対応した内容になっているかを確認することが望ましいです。特に、受託者の許可の有効期限が契約期間中に満了しないか、更新の見込みがあるかについても、契約締結時に確認しておくと安心です。
契約書だけでは足りない「処理状況の確認」
委託契約書を整えても、それで排出事業者の責任が終わるわけではありません。排出事業者は、委託した産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、発生から最終処分が終了するまでの一連の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるよう努めなければなりません(廃棄物処理法第12条第7項)。
行政処分指針は、委託基準やマニフェストの義務に違反していなくても、地域の一般的な処理料金の半値程度以下で委託している場合や、複数業者からの見積もり取得、最終処分場の残余容量の把握、中間処理業者と最終処分業者の委託契約書の確認、処理施設の現況確認などを合理的な理由なく行っていない場合には、排出事業者が措置命令(廃棄物処理法第19条の6)の対象となり得るとしています(行政処分指針第10の2(3))。委託契約書に記載した「料金」や「最終処分の場所」は、この観点からも重要な記載事項です。
まとめ
委託契約書は、産業廃棄物の適正処理を担保するための重要な書面です。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 委託契約は書面で行い、施行令・施行規則で定める全ての事項を記載する
- 中間処理を委託する場合は、最終処分の場所・方法・処理能力まで記載する
- 許可証の写し等を添付し、許可の「事業の範囲」の括弧書きまで確認する
- 運搬と処分は、それぞれの許可業者と契約する(二者契約)
- 契約書と添付書面は契約終了の日から5年間、再委託の承諾書面の写しも5年間保存する
- 委託基準違反は3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金、無許可業者への委託はさらに重い
必要事項の記載漏れがないか、受託者の許可範囲と契約内容が一致しているか、契約書の保存期間(5年)が守られているかを、日頃からチェックする体制を整えておきましょう。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第12条、第19条、第19条の6、第25条、第26条、第32条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第6条の2、第6条の6、第6条の12)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第8条の2の8、第8条の3、第8条の4〜第8条の4の4)
- 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
- 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)
