「社長が忙しくて講習会に行けない。支店長に受講してもらってもいいの?」
「営業部長は契約の決裁権を持っているけど、政令使用人になる?」
「申請書の『政令第6条の10に規定する使用人』欄、うちは空欄でいいの?」
産廃の許可申請書を見ていると出てくる「政令で定める使用人(政令使用人)」。役員ではない従業員の話なので見落とされがちですが、講習会の受講者になれるかどうか、欠格要件の審査対象になるかどうか、変更届が必要かどうかに関わる重要な概念です。
この記事では、政令使用人の定義から、講習受講者にする場合の条件、申請・変更届の実務までを、法令と愛知県の運用例をもとに解説します。
第1章|政令使用人とは誰のことか
条文上の定義
廃棄物処理法は、法人の役員や「政令で定める使用人」が欠格要件に該当する場合は許可をしてはならないと定めています(廃棄物処理法第14条第5項第2号ニ・ホ)。この「政令で定める使用人」について、施行令は次のように定めています(廃棄物処理法施行令第6条の10、第4条の7)。
申請者の使用人で、次に掲げるものの代表者であるもの
一 本店又は支店(商人以外の者にあつては、主たる事務所又は従たる事務所)
二 前号に掲げるもののほか、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、廃棄物の収集若しくは運搬又は処分若しくは再生の業に係る契約を締結する権限を有する者を置くもの
整理すると、政令使用人に当たるのは次のどちらかです。
- 本店・支店の代表者(支店長など)
- 本店・支店以外の場所で、継続的に業務を行うことができる施設を持ち、廃棄物の収集運搬・処分等の契約を締結する権限を持つ者を置いている事務所・事業場の代表者(営業所長など)
「契約権限がある」だけでは該当しない
ここで誤解が多いのが、「契約の決裁権を持っている人は政令使用人」という理解です。愛知県は、廃棄物処理業に係る契約を締結する権限を有していても、本店・支店・事務所・事業場の代表者でない場合は、政令使用人とはならないと明記しています(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q15)。
つまり、ポイントは「その拠点の代表者であること」です。本社の営業部長のように、拠点の代表者ではない人は、契約権限があっても政令使用人には当たりません。
第2章|政令使用人が講習会の受講者になれる条件
審査基準上の位置づけ
許可申請に必要な講習会修了証は、誰が受講したものでもよいわけではありません。愛知県の審査基準では、講習を修了すべき者を次のように定めています(愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」(令和6年1月31日改正)2(2)ア)。
- 法人の場合:代表者、その業務を行う役員(監査役を除く)、または施行令第6条の10に規定する使用人(業を行おうとする区域における収集運搬業に係る契約を締結する権限を有する場合に限る)
- 個人の場合:本人、または施行令第6条の10に規定する使用人(同上)
処分業の審査基準も、「処分業に係る契約を締結する権限を有する場合に限る」として同じ構成になっています(愛知県「産業廃棄物処分業の審査基準」2(2)ア)。
「業を行おうとする区域」の契約権限がポイント
政令使用人が講習受講者として認められるのは、「業を行おうとする区域における」契約締結権限を持つ場合に限られます。愛知県の手続きQ&Aでも、講習修了者として認められるのは、①法人の代表者(個人の場合は申請者)または業務を行う役員、②政令使用人のうち愛知県における収集運搬業(処分業の場合は処分業)に係る契約を締結する権限を有する者、とされています(愛知県「手続きQ&A」Q13-1)。そのうえで、これら以外の者は申請に必要な講習会修了者として認められないとしています(同)。
例えば、大阪支店長が講習を修了していても、その支店長が愛知県での収集運搬の契約権限を持っていなければ、愛知県の申請の受講者としては使えない、ということになります。
行政書士の実務ポイント
愛知県では、相談役・顧問・執行役員等も「業務を行う役員」には該当しないとしています(愛知県「手続きQ&A」Q13-1)。役員が受講できない場合に政令使用人を受講者とする方法は有効ですが、その人が拠点の代表者であり、かつ申請する区域の契約権限を持っていることを、組織図や社内規程で説明できるようにしておく必要があります。
第3章|申請書への記載と添付書類
申請書への記載
申請者に政令使用人がいる場合は、許可申請書にその者の氏名及び住所を記載します(廃棄物処理法施行規則第9条の2第1項第10号)。愛知県では、許可申請書の第3面の該当欄に記載するとされています(愛知県「手続きQ&A」Q15)。
添付書類
政令使用人については、住民票の写しと、欠格要件に該当しないかどうかを審査するために必要と認められる書類を添付します(施行規則第9条の2第2項第14号)。さらに愛知県では、使用人を置く場合で、その人が履歴事項全部証明書に登記されている支店等の代表者でないときは、使用人であることの証明書を添付する必要があるとしています(愛知県「手続きQ&A」Q15)。
欠格要件の審査対象になる
政令使用人は、欠格要件の審査対象です。政令使用人の中に欠格要件に該当する者がいる場合は、法人・個人とも許可を受けることができません(廃棄物処理法第14条第5項第2号ニ・ホ)。許可取得後に政令使用人が欠格要件に該当するに至った場合は、許可取消しの対象にもなります(同法第14条の3の2第1項)。
また、許可取消処分に係る聴聞の通知後に事業の全部廃止の届出をした法人・個人の場合、聴聞通知の日前60日以内に政令使用人であった者も、届出の日から5年間欠格要件に該当するとされています(同法第7条第5項第4号ト)。政令使用人は「単なる従業員」ではなく、役員に準ずる立場として扱われると考えておきましょう(欠格要件の詳細は「産業廃棄物処理業の欠格要件とは?」参照)。
第4章|就任・退任・交代時の変更届
変更届の対象
政令使用人の変更(新任・廃止・交代)は、役員等の変更に該当し、変更届の対象となります(愛知県「手続きQ&A」Q15、廃棄物処理法施行規則第10条の10第1項第2号ニ)。支店長の人事異動があれば、それだけで届出が必要になる、ということです。
期限と添付書類
変更届は、変更の日から10日以内に提出します(施行規則第10条の10第2項)。変更後の政令使用人については、住民票の写しと欠格要件の審査に必要な書類を添付します(同条第3項第2号)。愛知県では、役員変更の届出と同様に、新旧対照表を別紙として添付するよう求めています(愛知県「手続きQ&A」Q23-2)。
届出をしなかった場合は、30万円以下の罰金の対象です(廃棄物処理法第30条第2号)。
複数の許可を持っている場合の注意点
愛知県の手続きQ&Aには、実務上とても重要な記載があります(愛知県「手続きQ&A」Q15)。
複数の処理業(産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物の別、収集運搬業及び処分業の別)の許可、複数の都道府県等の許可を持つ場合、いずれかに政令第6条の10に規定する使用人を置くときは、全ての許可に関する申請書等に当該使用人を記載する必要があります。
変更届も同様で、「他の都道府県に記載があって愛知県にはない」「処分業に記載があって収集運搬業に記載がない」ということはあり得ないとされています(同)。支店長の交代があった場合は、保有している全ての許可について変更届が必要になるため、許可ごとの届出漏れに注意が必要です。
講習受講者だった政令使用人が異動・退職した場合
受講者として申請した政令使用人が異動・退職した場合、講習修了者の要件をどのように満たすかは、更新・変更申請の際に問題になります。講習修了証の有効期間は、更新許可申請では「許可の有効期限の翌日から起算して5年前の日から有効期限の日までの間」に修了したものとされているため(愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」2(2)イ(イ))、次の更新までに受講者となる人を確保しておく必要があります。人事異動の計画と講習会の受講計画はセットで考えましょう(講習会については「産業廃棄物収集運搬業|講習会の受講手順と注意点」参照)。
第5章|優良認定を目指す場合
優良産廃処理業者の認定基準では、法人の場合、代表者・役員・政令使用人(代表者等)の氏名及び就任年月日をインターネットで公表し、1年に1回以上更新することが求められます(施行規則第9条の3第2号の表イ(5))。政令使用人を置いている場合は、公表情報にも反映させる必要があります(「優良産廃処理業者になるための基準」参照)。
第6章|政令使用人の扱いに迷ったら行政書士へ
ポイントをまとめます。
- 政令使用人は「本店・支店の代表者」または「契約締結権限者を置く事務所・事業場の代表者」。契約権限があっても拠点の代表者でなければ該当しない
- 講習受講者になれるのは、申請する区域の契約締結権限を持つ政令使用人に限られる
- 申請書に記載し、住民票等を添付する。登記上の支店代表者でない場合は使用人であることの証明書も必要(愛知県)
- 欠格要件の審査対象であり、就任・退任・交代は10日以内の変更届が必要
- 複数の許可を持つ場合は、全ての許可に同じ政令使用人を記載する
三澤行政書士事務所では、政令使用人を受講者とする申請や、支店長交代に伴う複数自治体への変更届をまとめてお手伝いしています。東海エリアの事業者様は、お気軽にご相談ください。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第7条第5項、第14条第5項、第14条の3の2、第30条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第4条の7、第6条の10)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第9条の2、第9条の3、第10条の10)
- 愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」「産業廃棄物処分業の審査基準」(令和6年1月31日改正)
- 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」