産業廃棄物処理業者が法令違反を行った場合、都道府県知事等は、事業停止命令や許可の取消しといった行政処分を行うことができます。環境省が示す「行政処分の指針について」の通知(平成30年3月30日環循規発第18033028号。以下「指針」)では、どのような場合にどの程度の処分が想定されるかという考え方が整理されています。排出事業者にとっても、委託先を選ぶ際にこの考え方を知っておくことは有益です。
指針の基本姿勢:「指導の繰り返し」ではなく「迅速な処分」
指針は冒頭で、一部の自治体で悪質な業者への行政指導をいたずらに繰り返すにとどまったり、原状回復措置を講じたことを理由に営業継続を許容したりする運用が見受けられ、それが大規模不法投棄事案の発生や国民の不信を招いたと指摘しています。そのうえで、都道府県等に対し「積極的かつ厳正に行政処分を実施されたい」と求めています(指針 前文)。
具体的には、次のような考え方が示されています(指針第1の1〜3、第2の2(1)①)。
- 違反行為を把握した場合は、生活環境の保全上の支障の発生・拡大を防止するため速やかに行政処分を行う
- 行政指導は相手方の任意の協力が前提であり、従わない場合にさらに指導を続けて処分を行わないことは回避しなければならない
- 公訴が提起されていることを理由に行政処分を留保することは不適当。刑事処分を待たずに速やかに処分する
- 「違反行為」は、刑事処分や行政処分を受けている必要はなく、起訴猶予による不起訴処分であっても厳正な行政処分を行うべき。公訴時効も考慮する必要はない
「刑事事件にならなかったから大丈夫」「行政指導で済むだろう」という期待は通用しないと考えておくべきです。
行政処分の種類
産業廃棄物処理業に対する行政上の対応としては、大きく分けて、改善を求める「改善命令」、生活環境の保全上の支障の除去等を求める「措置命令」、一定期間事業の停止を命じる「事業停止命令」、そして許可そのものを失わせる「許可の取消し」があります。違反の内容や悪質性、繰り返しの有無などによって、どの処分が選択されるかが変わってきます。
| 処分 | 主な要件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 事業停止命令 | 違反行為をしたとき、他人に違反行為を要求・依頼・唆し・助けたとき、施設・能力が基準に適合しなくなったとき、許可条件に違反したとき | 法14条の3 |
| 許可の取消し(義務) | 欠格要件に該当するに至ったとき、違反行為で情状が特に重いとき、事業停止命令に違反したとき、不正の手段で許可を受けたとき | 法14条の3の2第1項 |
| 許可の取消し(裁量) | 施設・能力が基準に適合しなくなったとき、許可条件に違反したとき | 法14条の3の2第2項 |
| 改善命令 | 処理基準・保管基準に適合しない処理・保管が行われたとき | 法19条の3 |
| 措置命令 | 処理基準等に適合しない処理により、生活環境の保全上の支障が生じ、またはそのおそれがあるとき | 法19条の5 |
改善命令と措置命令の違い
指針は両者の違いを次のように説明しています(指針第9の2(4))。
- 改善命令:処理基準等に適合しない処理が行われた場合に、具体的な状況によって発生しかねない「抽象的な危険」を避けるため、処理方法の変更その他の措置を命ずるもの
- 措置命令:現に発生した支障の除去や、支障を生ずるおそれという「具体的な危険」を避けるため、支障の除去・発生防止の措置を命ずるもの
改善命令は聴聞・弁明の機会の付与の手続を要せず、履行期限は具体的に日をもって指定され、改善命令違反に対しては直ちに告発を行う等厳正に対処すべきとされています(指針第8の3(3)、第8の4(1))。改善命令違反は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科、措置命令違反は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科の対象です(廃棄物処理法第26条第2号、第25条第1項第5号)。
措置命令の対象は広い
措置命令の対象となる「処分者等」には、実際に不適正処理を行った従業者だけでなく、次のような者も含まれるとされています(指針第9の2(2))。
- 不適正処理を指示した役員、知りながら阻止しなかった役員、取締役会で賛成または異議をとどめなかった取締役
- 特定の役員に業務を任せきりにして不適正処理を見過ごした代表取締役など、悪意または重過失のある役員(処分時に辞任していても対象になり得る)
- 下請負人が不適正処理をした場合で、委託基準に基づく委託をしていなかった元請業者
- 不法投棄を斡旋・仲介したブローカー、知りながら土地を提供した土地所有者、無許可業者の事業場まで運搬した者、無許可業者に資金提供していた者
また、措置命令を発する順位に定めはなく、不適正処理の実行者が所在不明でも、委託基準違反等の違法性が認められる排出事業者・処理業者等に対して積極的に措置命令を発出すべきとされています(指針第9の2(2)⑥)。
許可の取消しにつながりやすい違反
無許可での事業実施、欠格要件への該当、不正の手段による許可取得、名義貸し、重大な生活環境保全上の支障を生じさせた場合などは、許可の取消しという重い処分につながりやすいとされています。
「情状が特に重いとき」とは
違反行為について「情状が特に重いとき」は、許可を取り消さなければなりません(廃棄物処理法第14条の3の2第1項第5号)。指針は、これを不法投棄など重大な法違反を行った場合や、違反行為を繰り返し行い是正が期待できない場合など、業務停止命令等を経ずに直ちに許可を取り消すことが相当である場合としています。そして、廃棄物処理法第25条から第27条までに掲げる違反行為(無許可営業、名義貸し、無許可業者への委託、不法投棄、不法焼却、再委託基準違反、改善命令違反など)を行った場合は、重大な法違反としてこれに該当すると解して差し支えないとしています(指針第2の2(5))。
さらに指針は、不法投棄等の重大かつ明白な違反を行った業者について、原状回復責任を全うさせることを理由に事業停止処分にとどめる運用は、違反行為を事実上追認するもので著しく適正を欠くとし、「躊躇することなく取消処分を行った上で、原状回復については措置命令により対応すること」と明記しています(指針第2の1)。
報告徴収・立入検査の拒否は初回でも事業停止
指針は、許可を受けた処理業者による報告拒否または虚偽報告について、「たとえ初めての違反であっても、その悪質性は高く、直ちに事業停止処分を課すのが相当」であり、度重なる場合は「情状が特に重いとき」として許可を取り消すのが相当としています(指針第6の2(4))。立入検査の拒否・妨害・忌避についても同様に厳格な行政処分をもって対処するとされています(指針第7の2(5))。明示的な拒否だけでなく、著しい報告漏れなど意図的かつ実質的な報告拒否と判断される場合や、実質的に立入検査ができない状態を積極的に生じさせる場合も、拒否・忌避として扱われ得ます(指針第6の2(3)、第7の2(4))。
報告拒否・虚偽報告、立入検査の拒否・妨害・忌避は、それ自体が30万円以下の罰金の対象です(廃棄物処理法第30条第7号・第8号)。
「違反を働きかける」「違反を助ける」行為も処分対象
事業停止の要件には、他人に違反行為をすることを「要求し、依頼し、若しくは唆し、若しくは他人が違反行為をすることを助けたとき」も含まれます(廃棄物処理法第14条の3第1号)。指針は、次のような行為がこれに該当するとし、厳格な行政処分を求めています(指針第2の2(1)②③)。
- 収集運搬業者が排出事業者に、委託基準違反に当たる行為やマニフェストの不交付・不記載を働きかけること
- 処分業者に架空のマニフェストを作成するよう働きかけること
- 収集運搬業者が無許可業者の事業場まで運搬すること、無許可業者への仲介・斡旋を行うこと
- 処分業者が、委託基準違反や再委託禁止違反であることを知りながら処分を受託すること
「お客様に頼まれたから」「相手がやっていることだから」という事情は、許可業者の免責理由になりません。
経理的基礎の喪失も処分の対象
施設や能力が基準に適合しなくなった場合も事業停止・取消しの対象となります(廃棄物処理法第14条の3第2号、第14条の3の2第2項)。指針は、金銭債務の支払不能に陥った者、銀行取引停止処分がなされた者、利益が計上できておらず自己資本比率が10%未満で経営改善の見込みがない者などは、経理的基礎を有しないものと判断して差し支えないとしています(指針第2の2(2)②)。
欠格要件・おそれ条項との関係
また、いわゆる「おそれ条項」の判断要素として示されている、繰り返しの許可取消し処分歴、生活環境保全法令違反の累積、暴力団員との関係などは、新規・更新の許可申請時の審査だけでなく、既存の許可事業者に対する行政処分の判断においても重視される傾向があります。指針は、おそれ条項について「積極的にその該当性を判断して悪質な許可業者の排除に努められたい」としています(指針第2の2(4)③)。
取消処分を受けた場合、一定期間は新たに産業廃棄物処理業の許可を受けることができなくなる点も見逃せません。許可を取り消された者は取消しの日から5年間欠格要件に該当し、法人の場合は聴聞通知前60日以内の役員も同様です(廃棄物処理法第7条第5項第4号ホ)。取消しを避けるために聴聞通知後に廃業届を出しても、5年間の欠格要件から逃れることはできません(同号ヘ・ト、指針第2の6)。
車両・施設に関する違反も処分対象になり得る
行政処分は、マニフェストの未交付や不適正処理といった典型的な違反だけでなく、許可を受けた事業の範囲を超えた運搬・処分(無許可の品目を扱う、無許可で積替え保管を行う等)や、車両の名義貸しに該当するような不適切な貸借契約に基づく運搬など、許可事業の実施体制そのものに関わる違反も対象となり得ます。
事業の範囲を変更するには変更許可が必要で(廃棄物処理法第14条の2第1項)、これに違反して事業を行った場合は、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科の対象です(同法第25条第1項第3号)。これは上記の「情状が特に重いとき」の目安とされる第25条の違反に当たります。
このほか、指針や法令上、次のような点も処分に関わり得ます。
- 許可条件違反:許可には運搬経路や搬入時間帯の指定などの条件が付されることがあり(許可事務通知第1の6)、その違反は事業停止・取消しの対象(廃棄物処理法第14条の3第3号、第14条の3の2第2項、指針第2の2(3))
- 過積載:収集運搬業者が道路交通法に違反して過積載を行い、繰り返し罰金以下の刑に処せられた場合は、おそれ条項に該当する例とされている(指針第2の2(4)③ホ)
- 施設の不適合:処理施設が技術上の基準に適合しなくなった場合も、施設の基準不適合として処分の対象(指針第2の2(2)①)
※許可事務通知:「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
日常の業務フローの中に、意図せず法令違反につながる運用がないか、定期的に見直すことが重要です。
処分の手続
許可の取消しには聴聞、事業停止には弁明の機会の付与が行われるのが原則です。ただし、判決書や刑罰等調書などの客観的な資料で欠格要件への該当を証明できる場合は、聴聞の手続を執る必要はないとされています(指針第2の3(2))。
他の都道府県からも許可を受けている業者については、関係都道府県と処分の内容・時期を調整することとされ、ある都道府県で行政処分を受けたことを把握した他の都道府県も、必要に応じて事実認定を行い、直ちに適切な行政処分を実施するよう求められています(指針第2の3(5))。1つの自治体での処分が、他の自治体の許可にも波及し得るということです。
委託先選定における確認の重要性
排出事業者が委託先を選ぶ際には、過去に行政処分を受けていないか、許可の有効期限が切れていないかなどを確認することが望ましいとされています。行政処分を行った都道府県は、他の都道府県と環境省へ連絡し、環境省はその情報を産業廃棄物行政情報システムに集積しています。このシステムの情報の一部は環境省ウェブサイトで公開されているとされています(指針第2の3(6))。新規の委託先と契約する前に確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
委託基準に違反した委託を行った場合、排出事業者自身が措置命令の対象となる可能性もあるため、処理業者の選定は慎重に行う必要があります。さらに、委託基準やマニフェストの義務に違反していなくても、次のような場合には排出事業者が措置命令(廃棄物処理法第19条の6)の対象となり得ます(指針第10の2(3))。
- 地域の一般的な処理料金の半値程度またはそれを下回る料金で委託し、その合理性を示せない場合(「適正な対価を負担していないとき」)
- 処理業者が改善命令等の行政処分や立入検査を受けているなど、不適正処理の可能性が客観的に認められる状況なのに、問い合わせや現場確認などの調査をせずに委託・委託継続した場合(「知ることができたとき」)
- 合理的な理由なく、複数業者からの見積もり取得、最終処分場の残余容量の把握、中間処理業者と最終処分業者の委託契約書の確認、処理施設の現況確認、改善命令等の履行状況の確認といった措置を講じていない場合
指針は、産業廃棄物処理業の許可は「実際に許可を受けた者が適正に処理を行うことまで保証するものではなく、許可業者に対する処理委託が排出事業者の責任を免ずるものではない」としています(指針第10の1)。一方で、優良認定業者が公表している情報を十分に比較・吟味して委託先を選定している場合は、排出事業者の注意義務の履行に関する一つの要素として考慮できるとされています(指針第10の2(3)③)。
まとめ
行政処分の指針は、処理業者にとっては法令遵守の重要性を再確認する材料となり、排出事業者にとっては委託先選定時のリスク判断の参考になります。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 行政は「指導の繰り返し」ではなく、刑事処分を待たずに速やかに処分する方針
- 無許可営業・名義貸し・不法投棄・事業範囲外の処理など法第25条〜第27条の違反は、直ちに許可取消しとなり得る
- 報告徴収・立入検査の拒否は、初回でも事業停止が相当とされる
- 違反を働きかけたり、無許可業者の業務を助けたりする行為も処分対象
- 排出事業者は、安すぎる処理料金や委託先の処分歴を放置すると、措置命令の対象になり得る
無許可の範囲での事業実施や車両の不適切な貸借など、見落とされがちな違反類型についても意識しながら、双方の立場からこの指針の考え方を理解しておくことをおすすめします。
出典:
- 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第7条第5項、第14条の2、第14条の3、第14条の3の2、第19条の3、第19条の5、第19条の6、第25条、第26条、第30条)
- 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
