マニフェスト制度には、従来の紙の伝票による方式のほか、情報処理センターを介してオンラインでやり取りする「電子マニフェスト」の仕組みがあります。一定の要件に該当する排出事業者には、この電子マニフェストの使用が義務付けられています(廃棄物処理法第12条の5第1項)。
この使用義務は、平成29年の廃棄物処理法改正により設けられ、2020年(令和2年)4月1日から施行されています(「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の施行について(通知)」(平成30年3月30日環循適発第18033010号・環循規発第18033010号。以下「施行通知」)第八2)。
電子マニフェストの仕組み
電子マニフェストは、排出事業者・収集運搬業者・処分業者が、それぞれ情報処理センターを通じて、廃棄物の引渡し・運搬終了・処分終了といった情報をオンラインで登録・共有する仕組みです。紙のマニフェストのように現物を回付する必要がなく、返送確認の手間も軽減されるほか、情報処理センターに記録が残るため、排出事業者による状況把握がしやすくなるというメリットがあります。紙マニフェストで必須となるA〜E票の管理や、5年間の書面保存に伴う保管スペースの問題からも解放される点は、事務負担の軽減という観点で大きな利点です。登録・報告の情報は、情報処理センターが5年間保存します(廃棄物処理法第12条の5第8項、施行規則第8条の35)。
登録・報告の期限
電子マニフェストでは、紙マニフェストよりも短い期限が定められています。
| 誰が | 何をするか | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 排出事業者 | 種類・数量・受託者・運搬先・最終処分場所等を情報処理センターに登録 | 引渡し後3日以内(土日祝日、1月2日・3日、12月29日〜31日を除く) | 法12条の5第1項、規則8条の31の6・8条の32 |
| 収集運搬業者 | 運搬担当者・運搬終了年月日等を報告 | 運搬終了日から3日以内(同上) | 法12条の5第3項、規則8条の33・8条の34 |
| 処分業者 | 処分担当者・処分終了年月日(最終処分の場合はその場所)等を報告 | 処分終了日から3日以内(同上) | 同上 |
| 処分業者(中間処理) | 中間処理後の廃棄物の最終処分終了を確認後、最終処分場所・終了年月日を報告 | 3日以内(同上) | 法12条の5第4項、規則8条の34の2・8条の34の3 |
国の通知では、この「3日以内」は期限であって、適正処理の確保の観点から、原則としては即時に登録・報告することが望ましいとされています(施行通知第一4)。
登録にあたっては、種類ごと・運搬先ごとに登録し、種類・数量・受託者等を運搬受託者・処分受託者に通知したうえで、相違がないことを確認して登録することとされています(施行規則第8条の31の5)。
報告がない場合は情報処理センターから通知が来る
紙マニフェストでは排出事業者自身が返送の有無をチェックしますが、電子マニフェストでは、登録から一定期間内に運搬・処分終了の報告がない場合、情報処理センターから排出事業者に通知されます(廃棄物処理法第12条の5第10項)。その期間は次のとおりです(施行規則第8条の37)。
- 運搬・処分終了の報告:登録の日から90日(特別管理産業廃棄物は60日)
- 最終処分終了の報告:登録の日から180日
通知を受けた排出事業者は、速やかに運搬・処分の状況を把握し、生活環境の保全上の支障の除去等の措置を講じるとともに、その期間が経過した日から30日以内に報告書(様式第5号)を都道府県知事に提出する必要があります(同法第12条の5第11項、施行規則第8条の38)。
年次報告は情報処理センターが行う
紙マニフェストの交付者は毎年6月30日までに交付等状況報告書を提出する必要がありますが(施行規則第8条の27)、電子マニフェストの登録・報告の内容については、情報処理センターが事業場ごとに毎年6月30日までに都道府県知事へ報告する仕組みになっています(廃棄物処理法第12条の5第9項、施行規則第8条の36)。
収集運搬車に備え付ける書面
電子マニフェストで運搬を受託した収集運搬業者は、紙マニフェストの代わりに、許可証の写し、電子マニフェストの使用を証する書面の写し、運搬する産業廃棄物の種類・数量、委託者の氏名・名称、積載日・積載事業場、運搬先等を記載した書面(または電磁的記録)を運搬車に備え付けます。随時連絡できる設備等でこれらの事項を確認できる場合は、許可証の写しと使用を証する書面の写しで足ります(施行規則第7条の2の2第4項で準用する第7条の2第3項第4号・第5号)。
使用が義務付けられる事業者
廃棄物処理法施行規則では、前々年度に特別管理産業廃棄物を一定量(年間50トン)以上発生させる事業場を設置している事業者について、電子マニフェストの使用が義務付けられています(施行規則第8条の31の3)。該当する事業者は、紙のマニフェストを使用することが原則として認められず、情報処理センターを利用した電子的な方法での管理が必要です。
対象となる廃棄物の範囲
義務の対象となるのは、特別管理産業廃棄物のうち、PCB廃棄物(廃ポリ塩化ビフェニル等、ポリ塩化ビフェニル汚染物、ポリ塩化ビフェニル処理物)を除いたものです(施行規則第8条の31の2)。発生量50トンの判定にあたってもPCB廃棄物は除いて計算します(施行規則第8条の31の3、施行通知第一2(1))。ただし、PCBを含む汚泥、廃酸・廃アルカリ等(施行令第2条の4第5号ル(8))は対象に含まれるとされています(施行通知第一1)。
また、使用義務者であっても、義務の対象は「特別管理産業廃棄物」の委託に限られます。同じ事業者が特別管理産業廃棄物以外の通常の産業廃棄物を委託する場合、その産業廃棄物は電子マニフェストの使用義務の対象になりません(施行通知第一2(2))。
例外的に紙マニフェストが認められる場合
使用義務者であっても、次の場合は電子マニフェストによらず紙マニフェストを交付できます(施行規則第8条の31の4)。
- 電気通信回線の故障、天災その他やむを得ない事由により、登録・報告・通知が困難な場合
- 電子マニフェストに対応している収集運搬業者・処分業者に委託することが困難な場合
- 常勤の役員・職員が平成31年3月31日時点でいずれも65歳以上であり、情報処理センターに接続していない場合
国の通知は、1の例として、排出事業者・受託者・情報処理センターのインターネット回線の故障、電力会社による長期間の停電、暴風・豪雨・豪雪・洪水・地震・津波・噴火等の異常な自然現象でインターネット回線が使えない場合を挙げています。2の例としては、離島内等で他に電子マニフェストを使用できる処理業者が存在しない場合や、通常排出しない特別管理産業廃棄物が排出され、それを処理できる電子マニフェスト対応の処理業者が存在しない場合を挙げています(施行通知第一3)。
やむを得ず紙マニフェストを交付した場合は、その管理票の備考・通信欄に理由を記載する必要があります(施行規則第8条の21第1項第12号、施行通知第一6)。
対象かどうかの確認が重要
自社が電子マニフェストの使用義務の対象に該当するかどうかは、前々年度の特別管理産業廃棄物の排出量によって判断されます。排出量が年度によって変動する事業者は、毎年度、対象になっていないかを確認しておくことが望ましいでしょう。義務化の対象であるにもかかわらず紙のマニフェストのみで運用している場合、法令違反となるおそれがあります。
具体的には、使用義務者が上記の例外に当たらないのに紙マニフェストを交付した場合は、都道府県知事による勧告・公表・命令の対象となり得ます(廃棄物処理法第12条の6、施行通知第一7(1))。また、電子マニフェストで虚偽の登録をした場合は罰則(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)の適用があります(廃棄物処理法第27条の2第9号、施行通知第一7(2))。
なお、電子マニフェストの使用義務の判定基準は「特別管理産業廃棄物」の排出量であり、通常の産業廃棄物のみを排出している事業者は、この義務化の直接の対象にはなりません(ただし、義務化の対象でなくても、任意で電子マニフェストを導入することは可能です(廃棄物処理法第12条の5第2項))。多量排出事業者の該当基準(産業廃棄物1,000トン以上、特別管理産業廃棄物50トン以上)と、電子マニフェストの使用義務の基準(特別管理産業廃棄物50トン以上)は、特別管理産業廃棄物の基準値が共通している点も押さえておくとよいでしょう。
多量排出事業者の処理計画との関係
特別管理産業廃棄物の多量排出事業者が作成する処理計画には、「電子情報処理組織の使用に関する事項」を記載することとされています(施行規則第8条の17の2第11号)。国の通知では、次のように整理されています(施行通知第一5)。
- 処理計画には、全ての特別管理産業廃棄物の排出量を記載する
- 電子マニフェストの使用義務者になるかどうかは、前年度に処理計画に記載する特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量の合計を確認し、事業場ごとに判断する
- 使用義務者となる場合は、処理計画に電子マニフェストの使用に関する事項を記載する。発生量が50トン未満の場合等は、次年度は使用義務者とならない旨を記載する
- あらかじめ紙マニフェストの例外に当たることが明らかな場合は、その旨と理由を処理計画に記載する
電子化に伴う社内体制の見直し
電子マニフェストを導入する場合、情報処理センターへの加入手続きに加え、委託先の収集運搬業者・処分業者も電子マニフェストに対応している必要があります(廃棄物処理法第12条の5第1項括弧書き)。委託先が紙マニフェストのみの運用である場合は、電子化への対応を依頼するか、対応可能な処理業者への切り替えを検討する必要が生じることもあります。また、社内の廃棄物管理担当者が電子マニフェストシステムの操作に習熟しておく必要があるため、義務化の対象に該当することが判明した段階で、早めに準備を進めることが望ましいでしょう。
処理業者の側から見ると、電子マニフェストへの対応は取引先の確保に直結するだけでなく、優良産廃処理業者認定の基準の一つにもなっています(情報処理センターと電気通信回線で接続されていること。廃棄物処理法施行規則第9条の3第4号)。
まとめ
電子マニフェストは、特別管理産業廃棄物を多く排出する事業者にとって使用が義務付けられた仕組みです。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量が50トン以上の事業場が対象で、判断は事業場ごと
- 義務の対象は特別管理産業廃棄物の委託に限られ、通常の産業廃棄物は対象外
- 登録・報告の期限は3日以内(休日等を除く)で、原則は即時登録が望ましい
- 回線故障・天災、対応業者の不存在、高齢者のみの事業者など、限定的な例外のみ紙マニフェストが認められ、その場合は理由の記載が必要
- 報告がない場合は情報処理センターから通知が来るため、受け取ったら30日以内に知事へ報告
対象に該当する場合は、情報処理センターへの加入や、委託先の対応状況の確認、社内の運用フロー整備を早めに進めておきましょう。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第12条の5、第12条の6、第27条の2)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第7条の2、第7条の2の2、第8条の17の2、第8条の21、第8条の27、第8条の31の2〜第8条の38、第9条の3)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の施行について(通知)(平成30年3月30日環循適発第18033010号・環循規発第18033010号)
