建物の解体工事などで発生する石綿(アスベスト)を含む産業廃棄物は、飛散すると健康被害につながるおそれがあることから、通常の産業廃棄物とは異なる特別な取り扱いが求められます。本記事では、石綿含有産業廃棄物を保管・処理する際の基本的な考え方を紹介します。

「石綿含有産業廃棄物」と「廃石綿等」の違い

石綿を含む産業廃棄物は、法令上、次の2つに区分されています。

区分定義位置づけ
石綿含有産業廃棄物工作物の新築、改築または除去に伴って生じた産業廃棄物で、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの(廃石綿等を除く)通常の産業廃棄物(特別な処理基準あり)
廃石綿等廃石綿、及び石綿が含まれ、または付着している産業廃棄物のうち、石綿建材除去事業に係るもの等で、飛散するおそれのあるものとして環境省令で定めるもの特別管理産業廃棄物

(廃棄物処理法施行令第6条第1項第1号ロ、第2条の4第5号ト、廃棄物処理法施行規則第7条の2の3)

石綿を吹き付けた材料の除去など、飛散するおそれのあるものは「廃石綿等」として特別管理産業廃棄物になり、その収集運搬・処分には特別管理産業廃棄物処理業の許可が必要です。一方、廃石綿等に当たらない、工事に伴って生じた石綿を0.1%超含有する廃棄物は「石綿含有産業廃棄物」として、産業廃棄物処理業の許可(石綿含有産業廃棄物を「含む」区分)の範囲で扱われます。本記事では主に後者の石綿含有産業廃棄物について解説し、必要に応じて廃石綿等との違いにも触れます。

保管時の飛散防止措置

廃棄物処理法施行規則では、石綿含有産業廃棄物を保管する場合、次の措置を講じることが求められています(施行規則第8条第4号)。

  • 保管の場所には、石綿含有産業廃棄物がその他の物と混合するおそれのないように、仕切りを設ける等必要な措置を講ずること
  • 覆いを設けること、梱包すること等、石綿含有産業廃棄物の飛散の防止のために必要な措置を講ずること

屋外で保管する場合には、雨水等によって粉じんが飛散しないよう、より慎重な取り扱いが必要になります。

このほか、通常の産業廃棄物と同じく、周囲の囲い、掲示板の設置などの保管基準も守る必要があります。掲示板の「保管する産業廃棄物の種類」の欄には、石綿含有産業廃棄物が含まれる場合はその旨を表示しなければなりません(施行規則第8条第1号ロ(2)(ロ))。

建設工事で下請負人が現場で保管する場合は、下請負人もこの保管基準に従う義務があります(廃棄物処理法第21条の3第2項)。

運搬・処分における留意点

石綿含有産業廃棄物の収集運搬・処分にあたっても、飛散防止の観点から、通常の産業廃棄物とは異なる基準が定められています。

収集運搬の基準

石綿含有産業廃棄物の収集・運搬は、次のように行う必要があります(施行令第6条第1項第1号ロ・ニ・ヘ、第3条第1号ホ・ト)。

  • 破砕することのないような方法で収集・運搬すること
  • その他の物と混合するおそれのないように、他の物と区分して収集・運搬すること
  • 積替えや保管を行う場合は、積替えの場所・保管の場所に仕切りを設ける等、他の物と混合しないための措置を講ずること

「運搬しやすいように現場で細かく砕く」ことは、原則として基準違反になります。

処分の基準

石綿含有産業廃棄物の処分・再生は、石綿含有産業廃棄物による人の健康または生活環境に係る被害が生ずるおそれをなくする方法として環境大臣が定める方法により行うこととされています。ただし、収集・運搬のために必要な破砕・切断であって、環境大臣が定める方法により行うものは除かれます(施行令第6条第1項第2号ニ(2))。

石綿含有産業廃棄物の溶融施設は、規模にかかわらず産業廃棄物処理施設として設置許可の対象であり、告示・縦覧等の手続も必要とされています(施行令第7条第11号の2、第7条の2)。

埋立処分の基準

石綿含有産業廃棄物を埋め立てる場合は、次の方法によらなければなりません(施行令第6条第1項第3号ヨ)。

  • 最終処分場のうちの一定の場所において、かつ、石綿含有産業廃棄物が分散しないように行う
  • 埋め立てる石綿含有産業廃棄物が埋立地の外に飛散・流出しないよう、その表面を土砂で覆う等必要な措置を講ずる

なお、特別管理産業廃棄物である廃石綿等の埋立処分は、さらに厳格で、大気中に飛散しないようあらかじめ固型化、薬剤による安定化その他これらに準ずる措置を講じた後、耐水性の材料で二重にこん包してから行うこととされています(施行令第6条の5第1項第3号ワ)。

保管量の特例は石綿含有産業廃棄物には適用されない

建設工事から生じた分別されたコンクリートの破片等を再生する処理施設では、保管上限を処理能力の28日分とする特例がありますが、この特例の対象から石綿含有産業廃棄物は除かれています(施行規則第7条の8第1項第4号)。

許可の事業範囲における取り扱い

産業廃棄物処理業の許可申請・変更許可申請の実務では、石綿含有産業廃棄物を取り扱うかどうかについて、「除く」か「含む」かを明確に区分して許可を取得する運用が一般的です。国の通知でも、収集運搬業の事業の範囲は、積替えの有無と「取り扱う産業廃棄物の種類(石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれるか否かを含む。)」により示されるとされ、許可証の「事業の範囲」の欄にも、石綿含有産業廃棄物が含まれる場合はその旨を明記することとされています(「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号。以下「許可事務通知」)第1の1、第1の11(1))。

既に石綿含有産業廃棄物を「除く」内容で許可を受けている事業者が、新たにこれを取り扱おうとする場合には、事業範囲の変更許可の手続きが必要になります(自動車等破砕物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等についても同様の考え方が採られています)(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q20)。取り扱う予定がある場合は、許可申請の段階から明確にしておくことが重要です。

積替え保管を行う収集運搬業者の場合は、許可申請書の積替え・保管の場所に関する事項として、積替え・保管を行う産業廃棄物の種類に石綿含有産業廃棄物が含まれる場合はその旨を記載する必要があります(施行規則第9条の2第1項第5号ハ)。

石綿を扱う場合の書類上の記載

石綿含有産業廃棄物を委託する場合は、各種書類でその旨を明らかにする必要があります。

  • 委託契約書:委託する産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物が含まれる場合は、その旨を記載する(施行規則第8条の4の2第6号ホ)
  • マニフェスト:産業廃棄物の種類として石綿含有産業廃棄物が含まれる旨を確認して交付し、その数量を記載する(施行規則第8条の20第3号、第8条の21第1項第11号)
  • 電子マニフェスト:同様に、石綿含有産業廃棄物が含まれる旨と数量を登録する(施行規則第8条の31の5第3号、第8条の32第11号)

解体・建設関連事業者が押さえるべきポイント

解体工事等で石綿含有産業廃棄物が発生することが見込まれる場合、工事の計画段階から、保管場所の確保や梱包方法、委託先の処理業者が石綿含有産業廃棄物の処理に対応した許可(前述の「含む」区分の許可)を有しているかを確認しておくことが重要です。対応していない処理業者に誤って委託してしまうと、委託しようとする処分がその事業の範囲に含まれない者への委託として委託基準違反となり(施行令第6条の2第1号・第2号)、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科の対象となり得ます(廃棄物処理法第26条第1号)。

建設工事に伴う産業廃棄物は原則として元請業者が処理責任を負うため(廃棄物処理法第21条の3第1項。詳細は別記事で解説)、元請業者としては委託先の許可内容の確認まで含めて管理する必要があります。なお、解体工事は、下請負人が自ら運搬できる特例(請負代金500万円以下の工事等)の対象から除外されています(施行規則第18条の2第1項第1号イ)。

まとめ

石綿含有産業廃棄物は、飛散による健康被害を防ぐため、保管・運搬・処分のあらゆる段階で慎重な取り扱いが求められます。ポイントを整理すると次のとおりです。

  • 石綿を0.1%超含む建設系の廃棄物は「石綿含有産業廃棄物」、飛散性のものは特別管理産業廃棄物の「廃石綿等」
  • 保管は仕切り+覆い・梱包、運搬は破砕禁止+区分
  • 処分は環境大臣が定める方法、埋立は一定の場所で分散させず土砂で覆う
  • 処理業者の許可が石綿含有産業廃棄物を「含む」区分になっているかが重要な確認ポイント
  • 委託契約書・マニフェストにも石綿含有産業廃棄物である旨を明記する

解体・建設に携わる事業者は、工事計画の段階から適切な処理体制を整えておきましょう。


出典:

  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第21条の3、第26条)
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第2条の4、第3条、第6条、第6条の2、第6条の5、第7条、第7条の2)
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第7条の2の3、第7条の8、第8条、第8条の4の2、第8条の20、第8条の21、第8条の31の5、第8条の32、第9条の2、第18条の2)
  • 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
  • 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」