「委託先の処分業者から『処理が困難になりました』という書面が届いた。どうすればいい?」
「うちの処分施設が故障して、受け入れた廃棄物の処理が止まってしまった。お客様に何か知らせる義務はある?」
産業廃棄物の処理は、排出事業者・収集運搬業者・処分業者がつながって成り立っています。そのどこかで処理が止まったとき、関係者に確実に情報を届けるために設けられているのが「処理困難通知」の制度です。
この記事では、処理困難通知が必要になる事由、通知の方法と期限、そして通知を受け取った排出事業者がとるべき対応を、法令と国の通知に沿って解説します。
第1章|処理困難通知とは
制度の概要
産業廃棄物収集運搬業者・処分業者は、現に委託を受けている産業廃棄物の収集・運搬・処分を適正に行うことが困難となり、または困難となるおそれがある事由として環境省令で定める事由が生じたときは、遅滞なく、その旨を委託者に書面で通知しなければなりません(廃棄物処理法第14条第13項)。通知をしたときは、その写しを保存する義務もあります(同条第14項)。
特別管理産業廃棄物の収集運搬業者・処分業者にも同様の義務があります(同法第14条の4第13項・第14項)。
なぜこの制度があるのか
処分業者の施設が止まっていても、それを知らない排出事業者は廃棄物を出し続け、処分業者の敷地には処理されない廃棄物が溜まっていきます。こうした事態が不法投棄や不適正保管の原因になってきたことから、処理業者の側から排出事業者に「処理できない状況になった」ことを速やかに知らせ、排出事業者が委託を止めたり、別の委託先を探したりできるようにするための仕組みです。
第2章|通知が必要になる8つの事由
通知が必要な事由は、施行規則で次のように限定列挙されています(廃棄物処理法施行規則第10条の6の2)。
| No. | 事由 |
|---|---|
| 1 | 処理施設で破損その他の事故が発生して施設を使用できず、保管量が処分等のための保管上限に達したこと |
| 2 | 産業廃棄物処理施設を廃止または休止したことにより、現に委託を受けている処分ができなくなったこと |
| 3 | 最終処分場の埋立処分が終了したことにより、現に委託を受けている埋立処分ができなくなったこと |
| 4 | 欠格要件(一部)に該当するに至ったこと |
| 5 | 役員等の欠格要件に関する一定の届出の対象者に該当するに至ったこと |
| 6 | 事業停止命令を受けたこと |
| 7 | 産業廃棄物処理施設の設置許可の取消しを受けたこと |
| 8 | 処理施設について改善命令・使用停止命令・措置命令等を受けて施設を使用できず、保管量が保管上限に達したこと |
特別管理産業廃棄物についても、ほぼ同じ事由が定められています(施行規則第10条の18の2)。
注目したいのは、施設の故障(1)や行政の命令(8)の場合は「保管上限に達したこと」が要件になっている点です。処分業者が保管できる量には上限があり、原則として処理施設の1日当たりの処理能力の14日分までとされています(廃棄物処理法施行令第6条第1項第2号ロ(3))。故障で処理が止まっても、この上限に達するまでは通知義務は生じませんが、上限を超えて受け入れれば保管基準違反になります。
廃業・許可取消しの場合も通知が必要
上記とは別の条文で、事業の全部または一部を廃止した場合や、許可を取り消された場合で、委託を受けた廃棄物の処理を終えていないときも、委託者への書面通知が義務付けられています(廃棄物処理法第14条の2第4項、第14条の3の2第3項)。国の行政処分の指針では、これらもあわせて「いわゆる処理困難通知」と呼んでいます(「行政処分の指針について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033028号。以下「指針」)第11の3(2))。廃業時の手続は「産廃業を廃業・休業するときの手続き」で詳しく解説しています。
第3章|通知の方法・期限・保存(処理業者側の義務)
10日以内に書面で
処理困難通知は、事由が生じた日から10日以内に、次の事項を記載した書面を送付して行わなければなりません(施行規則第10条の6の3)。
- 収集運搬業者または処分業者の氏名または名称、住所、法人の場合は代表者の氏名
- 事由が生じた年月日及び事由の内容
通知先は「当該委託をした者」、つまり処理を委託してきた排出事業者等です。現に委託を受けている全ての委託者に漏れなく送付する必要があります。
写しを5年間保存
通知をした処理業者は、通知の写しを通知の日から5年間保存しなければなりません(廃棄物処理法第14条第14項、施行規則第10条の6の4)。
通知しなかった場合の罰則
通知をしなかった場合や虚偽の通知をした場合は、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、通知の写しを保存しなかった場合も同様の罰則の対象です(廃棄物処理法第29条第4号・第5号)。法人にも罰金刑が科されます(同法第32条第1項第2号)。
行政書士の実務ポイント
通知の期限は「事由が生じた日から10日以内」です。施設の故障が長引きそうなときは、保管量が上限に近づいた段階で委託者の一覧と送付文面を準備しておくと、期限内に確実に通知できます。委託者の一覧は、帳簿やマニフェストの交付者欄から作成できるよう日頃から整理しておくことが大切です。
第4章|通知を受け取った排出事業者がすべきこと
法律上の義務:状況の把握と適切な措置
マニフェストを交付した排出事業者は、処理困難通知を受けたときは、速やかにその委託に係る産業廃棄物の運搬・処分の状況を把握するとともに、環境省令で定めるところにより、適切な措置を講じなければなりません(廃棄物処理法第12条の3第8項)。電子マニフェストを使用している場合も同様です(同法第12条の5第11項)。
具体的には、次の対応が求められます(施行規則第8条の29、第8条の38)。
- 生活環境の保全上の支障の除去または発生の防止のために必要な措置を講ずる
- 通知を受けた廃棄物について、運搬終了・処分終了の報告(マニフェストの写しの送付、電子マニフェストの終了報告)をまだ受けていない場合は、通知を受けた日から30日以内に、所定の様式(紙マニフェストは様式第4号、電子マニフェストは様式第5号)の報告書を都道府県知事に提出する
実務上の対応の流れ
通知を受けたら、次の順序で対応を検討するとスムーズです。
- 委託中の廃棄物の洗い出し:マニフェストの控えや電子マニフェストで、通知元の業者に引き渡したが処理終了の報告を受けていない廃棄物を特定する
- 新規の引渡しの停止:処理ができない状況の業者に、新たに廃棄物を引き渡さない
- 未処理分の扱いの確認:委託契約書に定めた「委託契約を解除した場合の処理されない産業廃棄物の取扱い」(施行規則第8条の4の2第9号)を確認し、通知元の業者と協議する
- 代替の委託先の確保:許可の内容を確認したうえで、新たな委託先と委託契約を結ぶ
- 知事への報告:処理終了の報告を受けていない分について、30日以内に報告書を提出する
国の指針も、事業を廃止した旧許可業者等への保管等に係る命令の内容として、中間処理前であれば排出事業者に働きかけて速やかに新たな処理業者と契約することを促すことなどを挙げています。そして、処理困難通知を受けた排出事業者は生活環境保全上の支障の除去等の措置を講ずるなどの対応をすることとなるとしています(指針第11の2(2)、第11の3(2))。
通知を放置するとどうなるか
国の指針では、処理業者が改善命令等の行政処分を受けていたり、行政の立入検査を受けていたりするなど、不適正処理が行われる可能性が客観的に認められる状況があったにもかかわらず、排出事業者が問い合わせや現場確認などの調査を何ら行わずに委託を続け、結果として生活環境の保全上の支障が生じた場合は、排出事業者が措置命令の対象となり得るとしています(指針第10の2(3)②)。
処理困難通知は、まさに「不適正処理のおそれを知ることができた」状況を排出事業者に知らせるものです。通知を受け取ったのに委託を続けたり、未処理分を放置したりすれば、排出事業者としての責任を問われるリスクが高まります(詳しくは「処理費が安すぎる委託は危険?排出事業者が措置命令を受けるケース」をご覧ください)。
第5章|収集運搬業者が知っておきたいこと
処理困難通知の義務は、処分業者だけでなく収集運搬業者にもかかります。収集運搬業者に関係する事由としては、欠格要件への該当(事由4・5)や事業停止命令(事由6)などがあります。
また、収集運搬業者は、運搬先の処分業者から処理困難の情報を得る立場にもなります。排出事業者と処分業者の間に立つ収集運搬業者として、運搬先が受入停止になっていないか、運搬先を変更する必要がないかを確認し、運搬先を変更する場合には委託契約とマニフェストの内容を整える必要があります。他の業者に運搬を回す場合は、再委託の基準(排出事業者の書面承諾など)に従わなければなりません(「産廃の再委託は禁止?」参照)。
第6章|処理困難通知への対応でお困りなら行政書士へ
処理困難通知は、処理の流れが止まったときの「非常ベル」の役割を果たす制度です。ポイントをまとめます。
- 施設の事故で保管上限に達した、施設を廃止・休止した、事業停止命令を受けたなど、8つの事由が生じたら、処理業者は委託者に通知しなければならない
- 通知は事由発生から10日以内に書面で行い、写しを5年間保存する。怠れば罰則
- 受け取った排出事業者は、状況を把握して必要な措置を講じ、処理終了の報告を受けていない分は30日以内に知事へ報告する
- 通知を放置して委託を続けると、排出事業者自身が措置命令の対象になり得る
三澤行政書士事務所では、処理困難通知を受けた後の委託先の切り替えや委託契約の見直し、許可業者側の通知文書の作成などをサポートしています。東海エリアの事業者様は、お早めにご相談ください。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第12条の3第8項、第12条の5第11項、第14条第13項・第14項、第14条の2第4項、第14条の3の2第3項、第14条の4第13項・第14項、第29条、第32条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第6条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第8条の4の2、第8条の29、第8条の38、第10条の6の2〜第10条の6の4、第10条の18の2)
- 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)