「許可を持っている業者に、契約書もマニフェストもきちんと出して委託している。うちに責任が及ぶことはないよね?」
建設業者や製造業者など、産業廃棄物を排出する事業者様から、このようなご質問をいただくことがあります。確かに、無許可業者への委託やマニフェストの不交付は明確な違反です。しかし廃棄物処理法には、委託基準やマニフェストの義務に何ら違反していなくても、一定の場合には排出事業者に不法投棄現場の原状回復などを命じることができる「排出事業者等に対する措置命令」(廃棄物処理法第19条の6)という制度があります。
その判断要素として国が示しているのが「処理料金が安すぎないか」「委託先の異変に気付けたのではないか」という視点です。この記事では、国の行政処分の指針に沿って、排出事業者が措置命令を受けるケースと、日頃からできる委託先の確認方法を解説します。
第1章|「許可業者に委託した」だけでは責任は終わらない
排出事業者の処理責任
排出事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければなりません(廃棄物処理法第3条第1項、第11条第1項)。処理を委託する場合は、委託基準に従うとともに、処理の状況に関する確認を行い、発生から最終処分が終了するまでの一連の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされています(同法第12条第7項)。
許可は「適正処理の保証」ではない
国の「行政処分の指針について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033028号。以下「指針」)は、この点について非常に明確に述べています(指針第10の1)。
産業廃棄物処理業の許可制度は、実際に許可を受けた者が適正に処理を行うことまで保証するものではなく、許可業者に対する処理委託が排出事業者の責任を免ずるものではないことに十分に留意されたいこと。
さらに指針は、信頼に値する処理業者であるか否かについては「最終的には排出事業者自身の責任において見極める必要がある」ことを周知徹底するよう、都道府県に求めています(同)。
第2章|排出事業者等に対する措置命令とは
制度の趣旨
指針によれば、この措置命令は、排出事業者が、産業廃棄物の発生から最終処分に至るまでの処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるという注意義務に違反した場合に、委託基準やマニフェストの義務に何ら違反しない場合であっても、一定の要件のもとに排出事業者を措置命令の対象とするものです(指針第10の1)。
背景として指針は、不法投棄などの不適正処理が多発する中、処分者等の資力が不十分なことなどにより、支障の除去が最終的に都道府県の負担や廃棄物関係団体の自主的な協力で行われている事態があり、これを放置することは排出事業者責任の形骸化につながるとして、この命令を「積極的に活用すべき」としています(同)。
措置命令の対象となる「排出事業者等」
対象となるのは、不適正処理された産業廃棄物を排出した排出事業者と、中間処理後の廃棄物が不適正処理された場合はその中間処理を行った中間処理業者です(指針第10の2(1))。
2つの要件
排出事業者等に措置命令が出されるのは、次の2つの要件をいずれも満たす場合です(廃棄物処理法第19条の6第1項、指針第10の2(2)(3))。
- 処分者等の資力その他の事情からみて、処分者等のみでは支障の除去等が困難または不十分であること:処分者等に資力がない、処分者等を確知できないなどの事情で、支障の除去が客観的に期待できない場合
- 排出事業者等に責任を問うことが適当であること:次章で解説する「適正な対価を負担していない」「知り、または知ることができた」などの場合
1の要件について、指針は、多数の排出事業者が関わる不法投棄現場で廃棄物が混在していても、その排出事業者が排出した廃棄物ごとに「処分者等」を確定すれば足り、現場の他の処分者等の存否を問題にする余地はないとしています(指針第10の2(2))。
第3章|措置命令につながる3つのケース
ケース1:処理料金が安すぎる(適正な対価を負担していない)
指針は、「適正な対価を負担していないとき」とは、不適正処理された産業廃棄物を一般的に行われている方法で処理するために必要とされる処理料金からみて、著しく低廉な料金で委託すること(実質的に著しく低廉な処理費用を負担している場合を含む)をいうとしています(指針第10の2(3)①)。
そして、判断の目安として次のように示しています(同)。
- 都道府県は、その地域における産業廃棄物の一般的な処理料金の範囲を客観的に把握する
- その処理料金の半値程度、またはそれを下回るような料金で委託している排出事業者は、その料金に合理性があることを排出事業者が示すことができない限り、「適正な対価を負担していないとき」に該当すると解して差し支えない
- 半値程度より高額の料金であっても、これに該当する場合がある
「他社より安いから」という理由だけで委託先を選ぶことは、それ自体がリスクになり得るということです。相場より大幅に安い見積もりが出てきた場合は、なぜその価格で適正処理ができるのか、説明を求めておくことが重要です。
ケース2:不適正処理を知り、または知ることができた
「知ることができたとき」とは、一般通常人の注意を払っていれば不適正処理が行われることを知り得たと認められる場合をいいます(指針第10の2(3)②)。指針は、その例として次のような場合を挙げています(同)。
- 処理業者が、過剰保管等を理由として改善命令等の行政処分を受けていた
- 不適正処理を行ったとして、行政の廃棄物部局による立入検査等を受けていた
- 周辺住民から訴訟を提起されていた
こうした「不適正処理の可能性が客観的に認められる状況」があったにもかかわらず、排出事業者が問い合わせや現場確認などの調査を何ら行わずに委託し、または継続中の委託契約の解約等をしなかった結果、支障が生じた場合がこれに当たるとされています。さらに、何らかの調査をしたうえで委託した場合でも、不適正処理が行われないと判断したことに正当な理由を示せない場合は、これに該当すると解して差し支えないとされています(同)。
委託先から処理困難通知を受け取ったのに委託を続けるといった対応も、このケースにつながり得ます(「処理困難通知とは?」参照)。
ケース3:委託先選定で講ずべき措置を講じていない
指針は、法第12条第7項等の趣旨に照らして排出事業者に措置を採らせることが適当である場合の例として、合理的な理由なく、次のような措置を講じていない場合を挙げています(指針第10の2(3)③)。
- 適正な処理料金かどうかを把握するための措置(例:複数の処理業者から見積もりをとる)
- 不適正処理を行うおそれのある業者でないかを把握するための措置
- 最終処分場の残余容量の把握
- 中間処理業者と最終処分業者の委託契約書の確認
- 処理実績や処理施設の現況の確認
- 改善命令等を受けている場合は、その履行状況の確認
指針は、これらの措置は必ずしも全てを講じることが求められるものではないとしつつ、相当の長期間にわたって定期的に委託している者や、多量の廃棄物を委託している者は、合理的な理由がない限り、何らかの形で講じていることが期待されるとしています(同)。また、法第12条第7項の処理状況の確認を行っていない排出事業者は、措置命令の要件に該当する可能性があるとしています(同)。
第4章|措置命令の内容と範囲
排出事業者等に対する措置命令は、「相当な範囲内」で支障の除去等の措置を命ずるものです。「相当な範囲」とは、不適正処理された廃棄物の性状、数量、処分の方法などからみて、通常予想される生活環境保全上の支障の除去に限定する趣旨であり、複合汚染や二次汚染など通常予想し得ない支障は含まれないとされています(指針第10の3)。
とはいえ、不法投棄現場の撤去・原状回復には多額の費用がかかることが通常です。措置命令に違反した場合は、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科の対象となり(廃棄物処理法第25条第1項第5号)、法人にも罰金刑が科されます(同法第32条第1項第2号)。
なお、委託基準に違反した委託をしていた排出事業者は、この第19条の6とは別に、通常の措置命令(同法第19条の5)の対象にもなり得ます。指針は、不適正処理を実行した者が所在不明でも、委託基準違反等の違法性が認められる排出事業者に対しては積極的に措置命令を発出すべきとしています(指針第9の2(2)⑥)。
第5章|排出事業者ができる「身を守る」委託先の確認方法
優良認定業者の公表情報を活用する
指針は、優良産廃処理業者は処理状況や施設の維持管理の状況などの情報を公表することとされており、排出事業者がこれらの情報を十分に比較・吟味したうえで委託先を選定している場合は、注意義務の履行に関する一つの要素として考慮できるとしています。逆に、これらの措置を行わずに委託先を選定する場合には、他の手段で注意義務を果たすことが求められるとしています(指針第10の2(3)③)。
優良認定業者は、処分業者であれば受入量・処分量・処分後の持出先ごとの持出量、処理施設の維持管理の状況、料金を提示する方法などをインターネットで公表しています(廃棄物処理法施行規則第10条の4の2第2号)。こうした公表情報は、委託先選定の比較材料として有効です(「優良産廃処理業者認定制度とは?」参照)。
日常的な確認のチェックリスト
- 複数の業者から見積もりをとり、相場とかけ離れた料金でないか確認している
- 委託先の許可証で、事業の範囲・有効期限を確認している(「産廃許可証の見方」参照)
- 委託契約書に最終処分の場所・方法・処理能力を記載し、実態と合っているか確認している
- 中間処理業者と最終処分業者の委託契約の内容を確認している
- 処理施設を見学するなど、処理の現況を確認している
- 委託先が行政処分や立入検査を受けたという情報を把握したら、問い合わせ・現場確認を行い、記録を残している
- マニフェストの返送状況を管理し、期限内に戻らないものは知事に報告している
「確認した記録」を残す
指針は、何らかの調査をしたうえで委託した場合でも、不適正処理が行われないと判断した「正当な理由」を示せなければ責任を問われ得るとしています(指針第10の2(3)②)。見積書、現地確認の報告書、問い合わせ記録など、「どう確認し、なぜ適正と判断したか」を残しておくことが、いざというときの説明材料になります。
第6章|委託先の選定・見直しは行政書士へ
ポイントをまとめます。
- 許可業者に委託しても、排出事業者の責任は免れない。許可は適正処理の保証ではない
- 委託基準やマニフェストの違反がなくても、処分者等に資力がないなどの場合、排出事業者が措置命令を受けることがある
- 一般的な処理料金の半値程度以下での委託は、合理性を示せなければ「適正な対価を負担していない」とされ得る
- 委託先の行政処分・立入検査・訴訟などの情報を把握しながら調査をしないと、「知ることができた」とされ得る
- 相見積もり、最終処分場の残余容量や委託契約の確認、施設の現況確認などを行い、記録を残す
三澤行政書士事務所では、排出事業者様の委託契約書・マニフェスト運用の点検や、委託先の許可内容の確認をサポートしています。東海エリアの事業者様は、お気軽にご相談ください(行政処分全般については「産業廃棄物処理業の行政処分(取消し・停止)の指針とは」もあわせてご覧ください)。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第3条、第11条、第12条第7項、第19条の5、第19条の6、第25条、第32条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第10条の4の2)
- 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)