「グループ会社を合併することになった。産廃の許可はどうなる?」
「事業譲渡で収集運搬部門を別会社に移したい」
「個人事業で産廃の許可を取ってきたが、法人成りすることにした」
事業承継やM&A、法人成りは、会社にとって大きな節目です。ところが、建設業許可や他の許認可と同じ感覚で「会社が引き継ぐのだから許可も引き継がれるだろう」と考えていると、産廃の許可では思わぬ空白期間が生じてしまうことがあります。
この記事では、合併・会社分割・事業譲渡・法人成りのそれぞれの場面で、産廃処理業の許可がどう扱われるのか、国の通知と愛知県の運用例をもとに解説します。
第1章|原則:産廃処理業の許可は「承継」できない
国の通知の考え方
国の通知は、次のように明記しています(「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号。以下「許可事務通知」)第1の10(4)④)。
事業譲渡又は法人の合併若しくは分割に伴い、産業廃棄物収集運搬業、産業廃棄物処分業、特別管理産業廃棄物収集運搬業及び特別管理産業廃棄物処理業の許可を受けている者に代わり、当該許可の範囲と同様の業を別の者が承継することとなる場合には、当該承継する者において新規の許可の取得を要することとなる。
つまり、合併・分割・事業譲渡のいずれでも、許可を持っていない会社(存続会社、新設会社、承継会社、譲受会社)が事業を引き継ぐ場合は、その会社が新たに許可を取らなければなりません。許可なく事業を続ければ無許可営業となり、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科、法人には3億円以下の罰金の対象です(廃棄物処理法第25条第1項第1号、第32条第1項第1号)。
「承継」にならないケース:株式譲渡・役員交代
一方、許可を持つ会社そのもの(法人格)が変わらない場合は、新規許可は必要ありません。例えば、株式譲渡で株主が変わる、役員が交代するといった場合です。このときは、変更届出の手続が必要になります。役員、発行済株式総数の5%以上の株式を有する株主、政令で定める使用人の変更は変更届出の対象で、変更の日から10日以内(登記事項証明書の添付が必要な場合は30日以内)に届け出ます(廃棄物処理法施行規則第10条の10第1項第2号・第2項)。
ただし、新たに就任した役員や大株主が欠格要件に該当すれば、会社の許可が取り消されることになります(廃棄物処理法第14条の3の2第1項)。M&Aで経営陣が入れ替わる場合は、新役員の欠格要件のチェックが欠かせません(「産業廃棄物処理業の欠格要件とは?」参照)。
第2章|合併・会社分割・事業譲渡の実務
申請書類の一部は流用できる
新規許可が必要とはいえ、国の通知は申請者の負担を軽減する運用も示しています。承継する会社の許可申請書類のうち、事業計画の概要や施設の構造図などの書類(施行規則第9条の2第2項第1号・第2号、第10条の4第2項第1号・第2号・第4号・第5号)については、既に許可を受けている者が許可申請時に提出していた書類が提出されており、その内容に変更がないことを確認できる場合には、その書類をもって新規許可に係る申請書類の提出があったものとして差し支えないとされています(許可事務通知第1の10(4)④)。
効力発生日前から審査を始められる
通知は、審査事務についても合理的な対応を行うべきとし、次のように整理しています(同)。
| 承継の方法 | 審査のタイミング |
|---|---|
| 吸収合併・吸収分割 | 契約で定める効力発生日の前でも、存続会社・承継会社からの許可申請について審査を行って差し支えない。許可は効力発生日以降 |
| 事業譲渡 | 吸収合併・吸収分割と同様 |
| 新設合併・新設分割 | 新設される法人は設立登記の前に許可申請できないが、登記前でも事前協議等として事実上の審査を始めて差し支えない |
効力発生日の前から申請・審査を進めておけば、許可の空白期間を短くできます。組織再編のスケジュールを組む段階で、産廃許可の申請時期も一緒に計画することが重要です。
行政書士の実務ポイント
標準処理期間は自治体によって異なり、愛知県では収集運搬業39日、処分業52日(土日祝日を除く執務日で数え、補正期間は含まない)とされています(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q6)。複数の都道府県で許可を持っている場合は、全ての自治体で新規許可が必要になるため、自治体ごとの事前相談と申請時期の調整が必要です。
経理的基礎の審査に注意
新設会社は決算の実績がないため、経理的基礎の審査で不利になりがちです。愛知県の審査基準では、営業実績が3年未満の法人は、中小企業診断士または公認会計士が作成した今後5年間の収支計画に基づく経営診断書を添付し、5年以内に健全な経営の軌道に乗ることを証明する必要があるとされています(愛知県「産業廃棄物収集運搬業(積替保管を除く。)の経理的基礎に関する審査基準」(令和3年9月6日改正)第3)。愛知県の手続きQ&Aでも、法人設立から3年未満で決算書類が3期分揃わない場合は、理由書と経営診断書の添付が必要とされています(同Q14-2)。
講習会修了証
新規許可の申請には、原則として新規許可講習の修了証が必要ですが、他の行政庁で既に同種の許可を取得している場合などは、更新許可講習の修了証でも足りるとされています(愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」(令和6年1月31日改正)2(2)イ(ア)b)。承継する会社の役員が講習を受けているかどうか、修了証の有効期間(申請日から5年前までに修了したもの)を事前に確認しましょう。
第3章|個人事業の「法人成り」
法人成りも新規許可が必要
個人で取得した許可の業を廃止して、新しく設立した法人で業を行いたい場合について、愛知県は次のように案内しています(愛知県「手続きQ&A」Q17)。
- 新しく設立した法人で、新規許可申請が必要
- 申請の際、法人許可後に個人の収集運搬業を廃業する旨の誓約書(個人の署名、または個人名と法人名の連名)を添付する
- 法人の許可を取得した後、個人の収集運搬業の廃止届を提出する
個人の許可を先に廃止してしまうと、法人の許可が出るまでの間、事業ができなくなります。法人の許可取得後に個人の廃止届を出す、という順序がポイントです。
講習会修了証の特例
法人成りの場合、講習会修了証についても特例があります。新規許可申請でも、既に許可を取得している個人事業者が法人化する場合であって同一の者が講習を受講した場合は、更新許可講習の修了証で足りるとされています(愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」2(2)イ(ア)b、愛知県「手続きQ&A」Q13-2)。
第4章|産業廃棄物処理施設がある場合
処分業者などで産業廃棄物処理施設(設置許可が必要な施設)を持っている場合は、処理業の許可とは別に、施設についての手続も必要です。
| 場面 | 必要な手続 | 根拠 |
|---|---|---|
| 施設を譲り受ける・借り受ける | 譲受け等の許可 | 廃棄物処理法第15条の4で準用する第9条の5 |
| 合併・分割で施設を承継する | 合併・分割の認可 | 同法第15条の4で準用する第9条の6 |
| 相続で施設を承継する | 相続の届出 | 同法第15条の4で準用する第9条の7 |
国の通知では、譲受け等の許可や合併・分割の認可も、要件を満たせば必ず許可・認可しなければならないものとされる一方、設置許可を受けていても施設の建設(基礎部分のみの工事を除く)に着手していない段階では、対象施設が存在しないため許可・認可をしてはならないとされています(許可事務通知第4の1、第5の1)。合併等の認可の審査事務についても、処理業の許可と同様に効力発生日前からの審査着手が認められています(同第5の1)。
また、施設を借りた者が返還し、当初の貸主が再び稼働させる場合にも、あらかじめ譲受け等の許可が必要とされています(同第4の4)。施設の貸借を伴うグループ内再編では見落としやすい点です。
譲受け等の許可を受けずに施設を譲り受け、または借り受けた場合は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科の対象です(廃棄物処理法第26条第3号)。
第5章|旧会社側で必要な手続
事業を手放す側の会社(消滅会社・譲渡会社)も、事業を廃止する以上、廃止の手続が必要になります。
- 事業の全部または一部を廃止した日から10日以内の廃止届(施行規則第10条の10第2項)
- 処理が終わっていない廃棄物がある場合は、委託者への書面通知(廃止日から10日以内、写しを5年保存)(廃棄物処理法第14条の2第4項、施行規則第10条の10の4・第10条の10の5)
- 許可証の返納(許可事務通知第1の13(2))
承継する会社の許可が効力発生日以降に出るまでの間、どちらの会社が処理を行うのか、受託中の廃棄物をどう引き継ぐのかを、排出事業者との委託契約・マニフェストの切替えも含めて事前に整理しておく必要があります(廃業時の手続は「産廃業を廃業・休業するときの手続き」参照)。
第6章|組織再編・法人成りの産廃許可は行政書士へ
ポイントをまとめます。
- 合併・分割・事業譲渡・法人成りで事業を引き継ぐ会社は、産廃処理業の新規許可が必要
- 株式譲渡や役員交代など、法人格が変わらない場合は変更届出で足りる(新役員等の欠格要件に注意)
- 旧会社の申請書類を流用でき、吸収型の再編や事業譲渡では効力発生日前から審査を始められる
- 法人成りは「法人の許可取得 → 個人の廃止届」の順序で、廃業誓約書を添付する
- 処理施設がある場合は、譲受け等の許可、合併・分割の認可、相続の届出も確認する
三澤行政書士事務所では、組織再編のスケジュールに合わせた産廃許可の申請計画づくりや、複数自治体での同時申請をサポートしています。東海エリアの事業者様は、計画の早い段階でご相談ください。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第9条の5〜第9条の7、第14条の2、第14条の3の2、第15条の4、第25条、第26条、第32条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第9条の2、第10条の4、第10条の10、第10条の10の4、第10条の10の5)
- 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
- 愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」(令和6年1月31日改正)
- 愛知県「産業廃棄物収集運搬業(積替保管を除く。)の経理的基礎に関する審査基準」(令和3年9月6日改正)
- 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」