産業廃棄物の収集運搬業をこれから始めようとお考えの事業者様から、「そもそも何を満たせば許可が取れるのか」というご相談をよくいただきます。産業廃棄物収集運搬業の許可は、事業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事(政令市の区域内で事業を行う場合は政令市長)の許可制となっており、誰でも自由に始められる事業ではありません。

審査では、大きく分けて「①事業の用に供する施設が基準に適合しているか」「②申請者に事業を的確かつ継続して行うだけの能力(知識・技能、経理的基礎)があるか」「③申請者が欠格要件に該当しないか」という3つの観点からチェックが行われます(廃棄物処理法第14条第5項)。本記事では、このうち①施設面と②能力面の基本的な考え方を整理します(③欠格要件については別記事で詳しく解説しています)。

どこの許可が必要か(「積卸し」の区域)

収集運搬業の許可は、業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可ですが、運搬のみを業として行う場合は「産業廃棄物の積卸しを行う区域」に限るとされています(廃棄物処理法第14条第1項)。つまり、廃棄物を積み込む場所(排出現場)と降ろす場所(処分場等)のある都道府県ごとに許可が必要で、単に通過するだけの都道府県の許可は不要です。

また、政令市との関係について、愛知県では「積替え保管なしの収集運搬業は愛知県の許可があれば政令市の許可は不要」「積替え保管施設が県内の政令市にある場合は、その政令市の許可が必要」という整理が示されています(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q22)。

許可が不要とされる主なケース

次のような場合は、収集運搬業の許可は不要とされています。

  • 排出事業者が自らその産業廃棄物を運搬する場合(廃棄物処理法第14条第1項ただし書)
  • 専ら再生利用の目的となる産業廃棄物(古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維)のみを扱う場合(同項ただし書、「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号。以下「許可事務通知」)第1の15(1))
  • 新しい製品を販売する際に、商慣習として同種の使用済み製品を無償で引き取る「下取り」(許可事務通知第1の15(2))
  • 再生利用されることが確実であると都道府県知事が認めた産業廃棄物のみを扱う者として、知事の指定を受けた者(いわゆる再生利用指定。廃棄物処理法施行規則第9条第2号)

なお、廃棄物再生事業者の登録(廃棄物処理法第20条の2)を受けていても、産業廃棄物の処理を業として行う場合には処理業の許可が必要とされている点には注意が必要です(許可事務通知第1の15(3))。

許可は「要件を満たせば必ず出る」性質のもの

収集運搬業の許可は、申請者が基準に適合する施設・能力を有し、欠格要件に該当しない場合には、必ず許可しなければならないものと解されており、都道府県知事に許可するかどうかの裁量はないとされています(許可事務通知第1の2)。裏を返せば、審査は「要件を満たしているか」を書類と実地で一つずつ確認する作業であり、要件の理解がそのまま許可取得の近道になります。

施設に関する基準

産業廃棄物収集運搬業の許可を受けるには、その事業の用に供する施設(運搬車両、運搬容器、積替え・保管の場所を含みます)が、廃棄物処理法施行規則第10条第1号に定める基準に適合している必要があります。条文上の基準は次の2つです。

  • 産業廃棄物が飛散し、及び流出し、並びに悪臭が漏れるおそれのない運搬車、運搬船、運搬容器その他の運搬施設を有すること(施行規則第10条第1号イ)
  • 積替施設を有する場合には、産業廃棄物が飛散し、流出し、及び地下に浸透し、並びに悪臭が発散しないように必要な措置を講じた施設であること(同号ロ)

さらに、実務上の審査基準(愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」(令和6年1月31日改正)2(1))では、次のような点も確認されます。

  • 事業の用に供する施設(積替え・保管の場所を含む)について、継続的に使用する権原を有していること
  • 家畜の死体の収集・運搬を業として行う場合は、腐敗の進行を防止する保冷車その他の運搬施設を有していること
  • 積替え・保管施設を有する場合は、産業廃棄物が飛散・流出・地下浸透せず、悪臭も発散しないよう必要な措置が講じられていること

取り扱う廃棄物の種類(汚泥、廃油、廃酸・廃アルカリなど)によっては、密閉できる専用容器やタンクなど、より具体的な設備が必要になるケースもあるため、事前にどのような品目を運ぶ予定かを整理しておくことが重要です。

施設は「実地」で確認される

国の通知では、申請に係る施設について、取り扱う産業廃棄物の性状に応じた適正な処理ができる構造か、維持管理が適正に行えるものかなどを「必ず実地に確認すること」、また申請者が施設を継続的に使用する権限を有していることを確認することとされています(許可事務通知第1の3(1)(2))。申請書には、施設の構造を明らかにする平面図・立面図・断面図・構造図・設計計算書や付近の見取図、所有権または使用権原を証する書類を添付します(施行規則第9条の2第2項第2号・第3号)。

車両で確認される主なポイント(愛知県の運用例)

運搬車両について、愛知県では次のような運用が示されています(愛知県「手続きQ&A」Q24)。自治体ごとに運用が異なる部分もあるため、申請先への確認が前提ですが、見落としやすい論点として参考になります。

  • 原則として乗用車は収集運搬車として使用できない
  • 営業用の緑ナンバー車両を借りる場合は、賃貸借契約書上で「貨物自動車運送事業者から貨物自動車運送事業者への貸借であること」「運転手付きではなく車両だけの貸借であること」の2点が明らかでなければ使用できない(運転手付きの貸借は名義貸しの禁止に当たるため)
  • 駐車場がNOx・PM法の対策地域内にある場合、同地域で使用できない車両は使用できない
  • 車両が自己所有かどうかは車検証の「使用者」欄で判断する(法人の場合、使用者が会社名なら自己所有車、代表取締役等の個人名なら借用車扱い)
  • レンタカーは1年以上の契約期間がある場合に使用できる
  • 土砂等運搬禁止車両では、がれき類・鉱さいは運搬できない
  • 申請時の車両写真は、正面と真横から1枚ずつ、全体が写るように撮影する

許可取得後に守るべき運搬のルール

許可を取った後は、産業廃棄物処理基準に従って収集運搬を行う義務があります(廃棄物処理法第14条第12項)。車両に関係する主なルールは次のとおりです。

  • 車体の両側面に「産業廃棄物の収集又は運搬の用に供する運搬車である旨」「氏名又は名称」「許可番号(下6けた)」を鮮明に表示すること。文字の大きさは、運搬車である旨が日本産業規格Z8305の140ポイント以上、それ以外が90ポイント以上(廃棄物処理法施行令第6条第1項第1号イ、施行規則第7条の2の2第1項第3号・第3項)
  • 運搬車に、許可証の写しと産業廃棄物管理票(マニフェスト)を備え付けておくこと(施行規則第7条の2の2第4項により準用する第7条の2第3項第3号)。電子マニフェストの場合は、許可証の写しのほか所定の書面等を備え付けます(同項第4号・第5号)
  • 積替えのための保管をする場合、保管量は原則として「その保管場所における1日当たりの平均的な搬出量×7」を超えてはならないこと(施行令第6条第1項第1号ホ)

なお、愛知県では車体表示の具体例として、両側面に「産業廃棄物収集運搬業(一文字縦横5cm以上)」「会社名または氏名(一文字3cm以上)」「許可番号の下6桁(一文字3cm以上)」を表示するよう案内しています(愛知県「手続きQ&A」Q24-2)。

申請者の能力に関する基準

施設面の基準に加えて、申請者自身が、産業廃棄物の収集または運搬を的確に行うに足りる知識及び技能を有すること(施行規則第10条第2号イ)、また的確かつ継続して行うに足りる経理的基礎を有すること(同号ロ)も許可の要件です。

知識・技能=講習会修了証

実務上は、(公財)日本産業廃棄物処理振興センターが実施する「産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物の収集及び運搬に関する講習」の修了証の取得が、知識・技能を有することの確認方法として審査基準上に位置づけられています(愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」2(2)ア)。新規許可申請の場合は原則として新規許可講習、更新許可申請・変更許可申請の場合は新規許可講習または更新許可講習が対象です。

講習を受けるべき対象者は、審査基準上、次のとおりです。

  • 申請者が法人の場合:代表者、その業務を行う役員(監査役を除く)、または施行令第6条の10に規定する使用人(業を行おうとする区域における収集運搬業に係る契約を締結する権限を有する場合に限る)
  • 申請者が個人の場合:本人、または施行令第6条の10に規定する使用人(同上)

愛知県では、監査役のほか相談役・顧問・執行役員等も「業務を行う役員」には該当しないとしており、これら以外の者の修了証は申請に必要な講習会修了者として認めないとしています(愛知県「手続きQ&A」Q13-1)。「施行令第6条の10に規定する使用人」とは、本店・支店の代表者や、契約締結権限を有する者を置く事務所・事業場の代表者を指し、契約締結権限があっても事業所の代表者でなければ該当しません(施行令第4条の7、同Q15)。

講習修了証には有効期間があり、次のように整理されています(愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」2(2)イ)。

申請の種類有効な講習有効期間
新規許可申請新規許可講習申請日から起算して5年前の日までの間に修了したもの
新規許可申請(例外)更新許可講習既に特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を持っている場合、他の行政庁で既に収集運搬業の許可を持っている場合、または許可を持つ個人事業者が法人化する場合で同一の者が受講した場合に限り、申請日から5年前までに修了したもの
更新許可申請新規許可講習・更新許可講習許可の有効期限の翌日から起算して5年前の日(当日を含む)から有効期限の日までに修了したもの。ただし直前の更新申請で修了したものを除く
変更許可申請新規許可講習・更新許可講習直前の許可申請で修了したもの、または直前の許可申請後に修了したもの

更新のたびに新たに講習を受け直す必要がある点は、特に見落とされやすいポイントです。愛知県では、講習を受けたばかりで更新申請時に修了証が手元にない場合、有効期限までに修了する講習の受講票と、修了できない場合に不許可処分を受けても不服を申し立てない旨の誓約書を提出すれば申請でき、修了証の原本確認後に許可証が交付される運用となっています(愛知県「手続きQ&A」Q13-4)。講習会の修了証は、申請時にコピーを提出し、原本と照合されます(同Q11)。

経理的基礎

経理的基礎については、申請書に「事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法を記載した書類」と、法人の場合は直前3年の各事業年度における貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表、法人税の納付すべき額及び納付済額を証する書類を添付し、その内容が審査されます(施行規則第9条の2第2項第5号・第6号)。個人の場合は、資産に関する調書と直前3年の所得税の納付すべき額及び納付済額を証する書類です(同項第7号)。

愛知県の審査基準では、営業実績3年以上の法人について、まず次のいずれかに該当することが求められます(愛知県「産業廃棄物収集運搬業(積替保管を除く。)の経理的基礎に関する審査基準」(令和3年9月6日改正)第1の1)。

  • 直前3年の各事業年度における「経常利益金額等」の平均額が0以上
  • 直前事業年度における経常利益金額等が0以上
  • 直前事業年度において債務超過でない

ここでいう「経常利益金額等」は、損益計算書上の経常利益金額に減価償却費の額を加えた額です。上記のいずれかに該当しても、例えば「3年平均と直前期の経常利益金額等がともにマイナスで、自己資本比率が0以上10%未満」の場合などは、中小企業診断士または公認会計士が今後5年間の収支計画に基づいて作成した経営診断書を添付し、5年以内に健全な経営の軌道に乗ることを証明する必要があります(同第1の2)。営業実績3年未満の法人・個人は、一律に経営診断書の添付が必要です(同第3)。

積替え保管を含む場合は、別の審査基準(「産業廃棄物収集運搬業(積替保管を含む。)の経理的基礎に関する審査基準」)が適用され、例えば「直前事業年度において債務超過である」だけで経営診断書が必要になるなど、積替保管を除く場合よりも要件が厳しく設定されています(同第1の2(1))。

国の通知では、自己資本比率が10%を超えていない場合でも、少なくとも債務超過でなく、持続的な経営または経営改善の見込みがあれば容認される余地があるとしています(許可事務通知第1の4(6)④)。その一方で、次の点も確認するよう求めています。

  • 廃棄物処理業以外の事業と兼業している場合は、できる限り廃棄物処理部門の経理区分を明確にすること(同(5))
  • 法定耐用年数に見合った減価償却が行われているか、役員報酬が著しく少なく計上されていないか(同(6)①)
  • 各種税金・社会保険料・労働保険料等の義務的支払いが履行されていない場合は経理的基礎に疑義があるものとして慎重に判断すること(同(6)⑦)

建設業と兼業する場合は、このあたりの説明を事前に準備しておくと審査がスムーズです。

「直前3期」の数え方などの実務上の注意(愛知県の運用例)

愛知県の手続きQ&A(Q14)では、決算書類について次の考え方が示されています。

  • 法人は決算日から2か月以内に確定申告が必要なため、直近の決算日から2か月以上経っていれば、直近の決算日までの1年間が「直前期」となる。2か月以内で確定申告が済んでいなければ、1期前が直前期となる
  • 事業年度が1年に満たない場合は、6か月以上であれば1期とみなす
  • 個人は1月〜12月の1年間が1期で、直近で確定申告が終わっている期が直前期となる
  • 設立から3年未満で決算書類が3期分揃わない場合は、その旨を記載した理由書と経営診断書を添付する
  • 個別注記表は、会社計算規則上、会計監査人非設置の非公開会社(多くの中小企業)であれば「重要な会計方針に係る事項に関する注記」と「株主資本等変動計算書に関する注記」の記載が必要

まとめ

産業廃棄物収集運搬業の許可は、「施設基準」「申請者の能力基準(知識・技能+経理的基礎)」「欠格要件に該当しないこと」の3つをすべて満たして初めて取得できるものです。特に次の点は、申請前の段階で押さえておきたいポイントです。

  • 許可は積込み・積降ろしを行う都道府県ごとに必要で、通過するだけの都道府県は不要
  • 車両は「使用権原」「車両の種類」「緑ナンバー・レンタカーの契約内容」まで確認される
  • 講習の受講者は代表者・業務を行う役員・政令使用人に限られ、更新のたびに受講が必要
  • 経理的基礎は「経常利益+減価償却費」の状況、債務超過の有無、自己資本比率で判断され、積替保管の有無で基準が異なる

取り扱う廃棄物の種類によって必要な運搬設備が変わり、講習会の受講にも一定の準備期間がかかります。事業計画の段階から、余裕をもって準備を進めることをおすすめします。


出典:

  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第14条、第20条の2)
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第4条の7、第6条、第6条の10)
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第7条の2、第7条の2の2、第9条、第9条の2、第10条)
  • 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
  • 愛知県「産業廃棄物収集運搬業の審査基準」(令和6年1月31日改正)
  • 愛知県「産業廃棄物収集運搬業(積替保管を除く。)の経理的基礎に関する審査基準」「同(積替保管を含む。)」(令和3年9月6日改正)
  • 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」