「許可は取れたけれど、帳簿って何をどこまで書けばいいの?」
「マニフェストを保管していれば、帳簿は要らないのでは?」
産業廃棄物収集運搬業の許可を取得した事業者様から、このようなご質問をよくいただきます。許可申請の段階では講習会や必要書類に意識が向きがちですが、許可を取った後に毎日・毎月の実務として続いていくのが「帳簿」の作成・保存です。
帳簿は、行政の立入検査で真っ先に確認される書類の一つであり、備えていない・書いていない・保存していないといった違反には罰則もあります。この記事では、廃棄物処理法と施行規則の条文に沿って、収集運搬業者(あわせて処分業者)の帳簿について、記載事項・記載期限・保存方法を整理します。
第1章|帳簿の作成は許可業者の法律上の義務
根拠となる条文
産業廃棄物収集運搬業者・処分業者の帳簿義務は、一般廃棄物処理業者の規定(廃棄物処理法第7条第15項・第16項)を準用する形で定められています(同法第14条第17項)。内容は次の2つです。
- 帳簿を備え、産業廃棄物の処理について環境省令で定める事項を記載しなければならない
- その帳簿を、環境省令で定めるところにより保存しなければならない
特別管理産業廃棄物の収集運搬業者・処分業者にも同様の義務があります(同法第14条の4第18項)。
マニフェストとは別に必要
マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、排出事業者が委託した廃棄物が適正に処理されたかを「1件ごと」に確認するための伝票です。これに対して帳簿は、許可業者が自らの事業全体として「いつ、誰から、どれだけ受け入れ、どこへ運んだか」を記録するものです。帳簿の記載事項にはマニフェストの交付番号なども含まれており、両者は連動していますが、マニフェストを保管しているだけでは帳簿義務を果たしたことにはなりません(マニフェスト制度の基本は「産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度の基本」で解説しています)。
第2章|帳簿に記載しなければならない事項
記載事項は、産業廃棄物の種類ごとに、業務の区分に応じて定められています(廃棄物処理法施行規則第10条の8第1項)。収集運搬業者に関係するのは主に「収集又は運搬」と「運搬の委託」の区分です。
収集又は運搬(自社で運ぶ場合)
- 収集または運搬年月日
- 交付されたマニフェストごとの、マニフェスト交付者の氏名または名称、交付年月日、交付番号
- 受入先ごとの受入量
- 運搬方法及び運搬先ごとの運搬量
- 積替えまたは保管を行う場合は、積替えまたは保管の場所ごとの搬出量
運搬の委託(他社に運搬を委託する場合)
受託した運搬を正規の手続(再委託基準)に従って他の業者に委託した場合などは、次の事項を記載します。
- 委託年月日
- 受託者の氏名または名称、住所、許可番号
- 交付したマニフェストごとの交付年月日と交付番号
- 運搬先ごとの委託量
処分業者の場合
処分業者は「処分」「処分の委託」の区分で、受入れ・処分年月日、マニフェスト交付者と交付番号、受入先ごとの受入量、処分方法ごとの処分量、処分後の産業廃棄物の持出先ごとの持出量などを記載します。処分を委託する場合は、受け入れた廃棄物のマニフェスト(または電子マニフェストの登録番号)と、自社が交付した二次マニフェストとの対応関係も記載事項になっています(同表「処分の委託」の項)。
石綿・水銀を含む場合
取り扱う産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、上記の各事項について、それらに係るものを明らかにして記載する必要があります(同条第1項の表の備考)。「含む」区分の許可を持つ事業者は、帳簿の様式段階で区分できるようにしておくと安心です。
特別管理産業廃棄物の場合
特別管理産業廃棄物の収集運搬業者も、ほぼ同じ項目(収集運搬年月日、マニフェスト交付者と交付番号、受入先ごとの受入量、運搬方法及び運搬先ごとの運搬量、積替え・保管の場所ごとの搬出量など)を記載します(施行規則第10条の21)。
第3章|いつまでに書く?記載期限は3種類
帳簿は「年度末にまとめて作ればよい」ものではありません。施行規則は、帳簿を事業場ごとに備えたうえで、事項ごとに記載期限を定めています(施行規則第10条の8第2項)。
| 記載事項 | 記載期限 |
|---|---|
| 受け取ったマニフェストの交付者・交付年月日・交付番号(収集運搬・処分) | マニフェストを交付または回付された日から10日以内 |
| 委託時に自社が交付したマニフェストの交付年月日・交付番号など(運搬の委託・処分の委託) | その廃棄物の引渡しまで |
| 上記以外の事項(運搬年月日、受入量、運搬量など) | 前月分を毎月末まで |
行政書士の実務ポイント
「毎月末までに前月分」という期限は、裏を返せば、月をまたいで2か月以上記載が溜まっている状態は違反になり得るということです。運転手の日報や計量伝票を月1回集計して帳簿に転記する、といった社内ルールを決めておくと、期限を守りやすくなります。
第4章|保存方法は「1年ごとに閉鎖・5年間保存」
帳簿の保存方法は、一般廃棄物処理業者の規定が準用され、次のとおりとされています(施行規則第10条の8第3項で準用する第2条の5第3項)。
- 帳簿は、1年ごとに閉鎖すること
- 閉鎖後5年間、事業場ごとに保存すること
「事業場ごと」とされている点がポイントです。複数の営業所や積替え保管施設がある場合は、それぞれの事業場で帳簿を備え、保存する必要があります(同条第2項)。
また、事業を廃止した場合でも、保存期間の定めがなくなるわけではありません。廃業を予定している場合は、帳簿の保管場所と保管責任者を決めておきましょう(廃業時の手続きは「産廃業を廃業・休業するときの手続き」で解説しています)。
第5章|帳簿の不備は罰則・行政処分の対象に
罰則
帳簿を備えない、記載しない、虚偽の記載をする、保存しないといった違反は、30万円以下の罰金の対象です(廃棄物処理法第30条第1号)。従業員が業務に関して違反した場合は、行為者に加えて法人にも罰金刑が科されます(同法第32条第1項第2号)。
罰金刑そのものは他の違反に比べて軽く見えるかもしれませんが、許可業者にとっては次の点に注意が必要です。
立入検査で最初に見られる
国の「行政処分の指針について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033028号)では、立入検査で検査できる「帳簿書類」には、経理的基礎を判断するための財務書類や、有価取引の真偽を判断するための預金通帳・入出金伝票その他会計書類も含まれるとされています(同指針第7の2(3))。廃棄物処理法上の帳簿は、その中でも基本となる書類です。記載漏れが多いと、不適正処理を疑われるきっかけにもなりかねません(立入検査の詳細は「産廃の立入検査・報告徴収とは?」をご覧ください)。
優良認定を目指すなら帳簿が基礎資料に
優良産廃処理業者の認定基準では、直前3年間の各月の、産業廃棄物の種類ごとの受入量や、種類ごと・運搬方法ごとの運搬量などをインターネットで公表することが求められます(施行規則第9条の3第2号の表ヘ)。これらの数値の基礎になるのが日々の帳簿です。将来の優良認定を見据えるなら、最初から集計しやすい形で帳簿を作っておくことをおすすめします(「優良産廃処理業者になるための基準」参照)。
第6章|排出事業者にも帳簿義務がある場合
帳簿義務は許可業者だけのものではありません。排出事業者でも、次のような事業者には帳簿の備付けが求められています(廃棄物処理法第12条第13項、施行令第6条の4)。
- 事業場内に産業廃棄物処理施設(または産業廃棄物の焼却施設)を設置している事業者
- 事業場の外で自ら産業廃棄物の処分・再生を行う事業者
- 二以上の事業者による処理の特例の認定を受けた事業者
この場合の記載事項は、処分年月日、処分方法ごとの処分量、処分後の廃棄物の持出先ごとの持出量などです(施行規則第8条の5)。特別管理産業廃棄物を生ずる事業者も、運搬・処分の年月日や運搬先ごとの運搬量等を記載する帳簿が必要です(同法第12条の2第14項、施行規則第8条の18)。
建設業と兼業で収集運搬業の許可を取った場合、「排出事業者としての帳簿」と「許可業者としての帳簿」が混在しやすくなります。兼業の注意点は「建設業者が産廃収集運搬業を兼業するリスクと正しい手順」もあわせてご覧ください。
第7章|帳簿の整備でお困りなら行政書士へ
帳簿は、許可を維持していくうえで毎日・毎月の実務に直結する義務です。まとめると次のとおりです。
- 収集運搬業者・処分業者には、帳簿の備付け・記載・保存が法律で義務付けられている
- 記載事項は「収集又は運搬」「運搬の委託」などの区分ごとに定められ、マニフェストの交付番号も記載する
- 記載期限は「マニフェスト受領から10日以内」「引渡しまで」「前月分を毎月末まで」の3種類
- 1年ごとに閉鎖し、閉鎖後5年間、事業場ごとに保存する
- 違反は30万円以下の罰金(両罰規定あり)
三澤行政書士事務所では、許可取得後の帳簿様式の整備や、立入検査に備えた書類の点検もご相談いただけます。東海エリア(愛知・岐阜・三重・静岡)の事業者様は、お気軽にお問い合わせください。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第7条第15項・第16項、第12条第13項、第12条の2第14項、第14条第17項、第14条の4第18項、第30条、第32条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第6条の4)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第2条の5、第8条の5、第8条の18、第9条の3、第10条の8、第10条の21)
- 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)