「工場に破砕機を入れて自社で処理を始めたら、『処理責任者』を置く必要があると言われた」
「特管の管理責任者とは別のもの?」
「技術管理者とはどう違うの?」
産業廃棄物を自社で処理するために処理施設を設置している事業者には、「産業廃棄物処理責任者」を置く義務があります。似た名前の「特別管理産業廃棄物管理責任者」や「技術管理者」と混同されやすく、選任漏れのまま運用されているケースも見受けられます。
この記事では、産業廃棄物処理責任者の設置が必要な事業場、ほかの責任者との違い、置かなかった場合の罰則を、条文に沿って解説します。
第1章|産業廃棄物処理責任者とは
条文上の設置義務
廃棄物処理法は、次のように定めています(廃棄物処理法第12条第8項)。
その事業活動に伴つて生ずる産業廃棄物を処理するために第十五条第一項に規定する産業廃棄物処理施設が設置されている事業場を設置している事業者は、当該事業場ごとに、当該事業場に係る産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせるため、産業廃棄物処理責任者を置かなければならない。ただし、自ら産業廃棄物処理責任者となる事業場については、この限りでない。
ポイントは次の3つです。
- 対象は、自社の事業活動で生ずる産業廃棄物を処理するために「産業廃棄物処理施設」(設置許可が必要な施設)を設置している事業場を持つ事業者
- 事業場ごとに置く
- 事業者自身が処理責任者となる事業場は、別に置く必要はない
「産業廃棄物処理施設」とは
ここでいう産業廃棄物処理施設は、廃棄物処理法第15条第1項の設置許可が必要な施設で、施行令で定められています(廃棄物処理法施行令第7条)。例えば次のようなものです。
- 汚泥の脱水施設(処理能力10m³/日超)
- 廃油の油水分離施設(10m³/日超)
- 廃酸・廃アルカリの中和施設(50m³/日超)
- 廃プラスチック類の破砕施設(5t/日超)
- 木くず(建設業等から生じたもの)・がれき類の破砕施設(5t/日超)
- 産業廃棄物の焼却施設(200kg/時以上または火格子面積2m²以上)など
製造業の工場で汚泥の脱水施設を設けている場合や、建設会社が自社の資材置場でがれき類の破砕施設を稼働させている場合などが典型例です(設置許可の手続は「産業廃棄物処理施設設置許可の手続き」参照)。
資格要件は定められていない
特別管理産業廃棄物管理責任者には資格要件が定められていますが(廃棄物処理法第12条の2第9項、施行規則第8条の17)、産業廃棄物処理責任者については、廃棄物処理法上、資格要件の規定は設けられていません。条文上求められているのは、「当該事業場に係る産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせるため」に置くことです。実際に処理施設の運転・管理や委託・マニフェストの実務を把握できる人を選任するのが望ましいでしょう。
第2章|似た名前の責任者との違い
3つの責任者の比較
| 項目 | 産業廃棄物処理責任者 | 特別管理産業廃棄物管理責任者 | 技術管理者 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 法第12条第8項 | 法第12条の2第8項・第9項 | 法第21条 |
| 置く者 | 産業廃棄物処理施設が設置されている事業場を設置している事業者 | 特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者 | 産業廃棄物処理施設の設置者(一部の最終処分場を除く) |
| 単位 | 事業場ごと | 事業場ごと | 施設ごと |
| 役割 | 事業場の産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせる | 事業場の特別管理産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせる | 施設の維持管理に関する技術上の業務を担当し、技術上の基準違反が行われないよう職員を監督する |
| 資格 | 規定なし | 施行規則第8条の17で規定 | 施行規則第17条で規定 |
| 置かなかった場合 | 30万円以下の罰金(法第30条第5号) | 30万円以下の罰金(法第30条第5号) | 30万円以下の罰金(法第30条第9号) |
技術管理者との関係
産業廃棄物処理施設の設置者は、処理責任者とは別に、施設の維持管理に関する技術上の業務を担当させるため、技術管理者を置かなければなりません(廃棄物処理法第21条第1項)。技術管理者は、施設に関して技術上の基準に係る違反が行われないよう、施設を維持管理する事務に従事する他の職員を監督します(同条第2項)。
技術管理者には資格要件があり、次のいずれかに該当する者とされています(同条第3項、施行規則第17条)。
- 技術士(化学部門、上下水道部門または衛生工学部門の第二次試験合格者)
- 上記以外の技術士で、1年以上廃棄物の処理に関する技術上の実務経験を有する者
- 特別管理産業廃棄物管理責任者の資格要件(施行規則第8条の17第2号イ〜チ)に該当する者(学歴と実務経験年数の組み合わせなど)
- これらと同等以上の知識及び技能を有すると認められる者
自社処理のために処理施設を設けている事業場では、「事業場の処理業務全体を見る処理責任者」と「施設の技術的な維持管理を担う技術管理者」の両方が必要になる、と整理するとわかりやすいでしょう。条文上、両者を同じ人が兼ねることを禁止する規定はありませんが、技術管理者には資格要件がある点に注意が必要です。
特別管理産業廃棄物管理責任者との関係
特別管理産業廃棄物を生ずる事業場には、資格要件を満たす特別管理産業廃棄物管理責任者を置く必要があります(廃棄物処理法第12条の2第8項・第9項)。こちらは処理施設の有無にかかわらず、特別管理産業廃棄物を排出していれば必要です(詳しくは「特別管理産業廃棄物管理責任者の資格要件」参照)。
第3章|処理責任者を置く事業場で求められる主な業務
処理責任者に何をさせるかは法令で細かく定められていませんが、処理施設を設置している事業場には、次のような法令上の義務があります。処理責任者は、これらが適切に行われるよう事業場の業務を管理する立場になります。
帳簿の備付け
事業場内に産業廃棄物処理施設(または産業廃棄物の焼却施設)を設置して自社の産業廃棄物を処理している事業者は、帳簿を備え、施設で処分する産業廃棄物の種類ごとに、処分年月日、処分方法ごとの処分量、処分後の廃棄物の持出先ごとの持出量を記載しなければなりません(廃棄物処理法第12条第13項、施行令第6条の4第1号、施行規則第8条の5第1項第1号)。帳簿を備えない、記載しない、保存しない場合は30万円以下の罰金の対象です(同法第30条第1号)。
処理施設の維持管理
処理施設の設置者は、技術上の基準と、設置許可の申請書に記載した維持管理計画に従って施設を維持管理しなければなりません(廃棄物処理法第15条の2の3第1項)。処理能力の変更や設備の変更を行う場合は、変更許可または軽微変更の届出が必要です(同法第15条の2の6。「産業廃棄物処理施設の許可を要しない軽微な変更とは?」参照)。
保管・委託・マニフェスト
処理施設で処理しきれない廃棄物や、処理後の残さを外部に委託する場合は、保管基準の遵守、委託基準に従った委託契約、マニフェストの交付・管理が必要です(廃棄物処理法第12条第2項・第6項、第12条の3)。
多量排出事業者に該当する場合
前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上の事業場を設置している事業者は、処理計画の作成・提出と実施状況の報告も必要です(廃棄物処理法第12条第9項・第10項、施行令第6条の3)。処理計画の記載事項には「産業廃棄物の処理に係る管理体制に関する事項」が含まれています(施行規則第8条の4の5第4号)。処理責任者の選任状況は、この管理体制の記載とも関わります(「多量排出事業者の産業廃棄物処理計画とは?」参照)。
第4章|置かなかった場合の罰則
産業廃棄物処理責任者を置かなかった者は、30万円以下の罰金の対象です(廃棄物処理法第30条第5号)。従業員が業務に関して違反した場合は、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科されます(同法第32条第1項第2号)。
罰則自体は廃棄物処理法の中では比較的軽いものですが、処理責任者を置いていないことは、事業場として廃棄物処理の管理体制が整っていないことを示すものでもあります。行政の立入検査では、帳簿書類や施設の維持管理状況が確認されますので(廃棄物処理法第19条第1項、「産廃の立入検査・報告徴収とは?」参照)、処理施設を設置している事業場では、選任を社内文書で明確にしておきましょう。
行政書士の実務ポイント
処理責任者は事業者が社内で選任するものなので、「選任したつもり」「前任者が退職したまま」という状態になりがちです。辞令や社内規程で処理責任者を明確にし、異動・退職時には後任を必ず指名する運用にしておくと安心です。
第5章|処理施設を持つ事業場の体制づくりは行政書士へ
ポイントをまとめます。
- 自社の産業廃棄物を処理するために産業廃棄物処理施設を設置している事業場には、事業場ごとに産業廃棄物処理責任者を置く(事業者自身がなる場合を除く)
- 処理責任者には法令上の資格要件はないが、処理施設の技術管理者には資格要件がある
- 特別管理産業廃棄物を排出する事業場には、別途、資格を持つ特別管理産業廃棄物管理責任者が必要
- 帳簿の備付け、施設の維持管理、委託・マニフェストなど、事業場の義務が適切に行われるよう管理する
- 置かなかった場合は30万円以下の罰金(両罰規定あり)
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第12条、第12条の2、第12条の3、第15条、第15条の2の3、第15条の2の6、第19条、第21条、第30条、第32条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第6条の3、第6条の4、第7条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第8条の4の5、第8条の5、第8条の17、第17条)