自社が「多量排出事業者」に該当するかどうか、意識したことはあるでしょうか。一定量以上の産業廃棄物を排出する事業者には、処理計画の作成・提出という特別な義務が課されています。本記事ではその基準と概要を整理します。

根拠となるのは廃棄物処理法第12条第9項〜第11項(産業廃棄物)と、第12条の2第10項〜第12項(特別管理産業廃棄物)です。多量排出事業者は、「当該事業場に係る産業廃棄物の減量その他その処理に関する計画」を作成して都道府県知事に提出し、その実施状況を報告しなければならず、都道府県知事はこれらを公表するものとされています。

多量排出事業者に該当する基準

廃棄物処理法施行令では、前年度に産業廃棄物を1,000トン以上排出した事業場を設置している事業者、または前年度に特別管理産業廃棄物を50トン以上排出した事業場を設置している事業者を、「多量排出事業者」と位置づけています(廃棄物処理法施行令第6条の3、第6条の7)。この基準に該当する事業者は、都道府県知事等への処理計画の提出という追加の義務を負うことになります。基準は「事業場単位」で判定される点にも注意が必要で、同一法人であっても事業場ごとの排出量によって該当・非該当が分かれることがあります。

区分基準根拠
産業廃棄物の多量排出事業者前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上である事業場を設置している事業者施行令第6条の3
特別管理産業廃棄物の多量排出事業者前年度の特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上である事業場を設置している事業者施行令第6条の7

条文上の基準は委託量ではなく「発生量」とされている点に注意が必要です。

処理計画の作成・提出義務

多量排出事業者は、産業廃棄物の減量その他その処理に関する計画(産業廃棄物処理計画)を作成し、都道府県知事に提出しなければなりません。あわせて、前年度の処理計画の実施状況についても報告する必要があります。多量排出事業者による産業廃棄物の処理計画の作成等に関する指導についての通知では、この処理計画の作成・提出について、事業者への指導の考え方が示されています。

提出期限と様式

書類様式提出期限根拠
産業廃棄物処理計画書様式第2号の8当該年度の6月30日まで施行規則第8条の4の5
産業廃棄物処理計画実施状況報告書様式第2号の9翌年度の6月30日まで施行規則第8条の4の6
特別管理産業廃棄物処理計画書様式第2号の13当該年度の6月30日まで施行規則第8条の17の2
特別管理産業廃棄物処理計画実施状況報告書様式第2号の14翌年度の6月30日まで施行規則第8条の17の3

つまり、毎年6月30日には「今年度の計画書」と「前年度の実施状況報告書」の2つをセットで提出することになります。マニフェストの交付等状況報告書(毎年6月30日まで。施行規則第8条の27)とも締切が重なるため、社内のスケジュールに組み込んでおくと漏れを防げます。

計画書の記載事項

処理計画に記載すべき事項は、次のとおり定められています(施行規則第8条の4の5)。

  1. 氏名または名称、住所、法人の場合は代表者の氏名
  2. 計画期間
  3. 当該事業場において現に行っている事業に関する事項
  4. 産業廃棄物の処理に係る管理体制に関する事項
  5. 産業廃棄物の排出の抑制に関する事項
  6. 産業廃棄物の分別に関する事項
  7. 自ら行う産業廃棄物の再生利用に関する事項
  8. 自ら行う産業廃棄物の中間処理に関する事項
  9. 自ら行う産業廃棄物の埋立処分または海洋投入処分に関する事項
  10. 産業廃棄物の処理の委託に関する事項

特別管理産業廃棄物の処理計画も同様の項目で構成されますが、さらに「電子情報処理組織の使用に関する事項」(電子マニフェストの使用に関する事項)が加わります(施行規則第8条の17の2第11号)。

作成にあたっての参考資料

環境省は、平成29年の法改正(特別管理産業廃棄物の多量排出事業者への電子マニフェストの使用義務付け)を受けて、「多量排出事業者による産業廃棄物処理計画及び産業廃棄物処理計画実施状況報告策定マニュアル(第3版)」を取りまとめ、都道府県等に対して関係者への指導に活用するよう通知しています(「多量排出事業者による産業廃棄物の処理計画の作成等に関する指導について(通知)」(平成31年2月18日環循規発第1902181号))。この通知により、平成23年3月に作成された第2版のマニュアルに基づく旧通知は廃止されています(同)。計画書の具体的な書き方は、このマニュアルや提出先の都道府県が公表する記載例を参照するのが確実です。

提出しなかった場合

処理計画を提出しなかった場合や虚偽の記載をして提出した場合、また実施状況の報告をしなかった場合や虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料の対象となります(廃棄物処理法第33条第2号・第3号)。

処理計画・実施状況の公表

提出された処理計画やその実施状況は、都道府県知事によって公表されます(廃棄物処理法第12条第11項)。公表は、計画の提出または実施状況の報告を受けた後、速やかにインターネットを利用して行うものとされています(施行規則第8条の4の7)。

多量排出事業者としての取組状況が外部から見える形になるため、計画の内容や実績についても、社会的な説明責任を意識した対応が求められます。特に、排出量の増減や減量化の取組の有無は、地域住民や取引先から注目されやすい項目であるため、実態に即した計画作成と、着実な実施状況の報告が重要です。

電子マニフェスト義務化との関係

多量排出事業者の該当基準のうち、「特別管理産業廃棄物50トン以上」という基準は、電子マニフェストの使用義務の基準(前々年度に特別管理産業廃棄物を50トン以上排出。施行規則第8条の31の3)と共通しています。特別管理産業廃棄物を多く扱う事業場では、処理計画の提出義務と電子マニフェストの使用義務の両方に該当する可能性があるため、あわせて確認しておくとよいでしょう(電子マニフェストの詳細は別記事で解説します)。

国の通知では、両者の関係について次のように整理されています(「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の施行について(通知)」(平成30年3月30日環循適発第18033010号・環循規発第18033010号)第一5)。

  • 特別管理産業廃棄物の処理計画には、全ての特別管理産業廃棄物の排出量を記載する
  • 電子マニフェストの使用義務者になるかどうかは、前年度に処理計画に記載する特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量の合計を確認し、事業場ごとに判断する
  • 使用義務者となる場合は、処理計画に電子マニフェストの使用に関する事項を記載する
  • 前年度の発生量が50トン未満の場合等は、次年度について使用義務者とならない旨を記載する
  • あらかじめ紙マニフェストの例外(回線故障、対応業者の不存在等)に当たることが明らかな場合は、その旨と理由を記載する

時系列で整理すると、「前年度の発生量が50トン以上 → 今年度の処理計画を提出」「その処理計画に記載した発生量が50トン以上 → 翌年度(発生年度から見て前々年度基準)に電子マニフェストの使用義務」という流れになります。処理計画の作成は、翌年度の電子マニフェスト義務の有無を確認する機会にもなっています。

帳簿の備付けが必要になる場合もある

多量排出事業者の義務とは別に、事業場内に産業廃棄物処理施設(または産業廃棄物の焼却施設)を設置して自ら処理している事業者や、事業場の外で自ら処分・再生を行う事業者は、帳簿を備え、処分年月日、処分方法ごとの処分量、処分後の廃棄物の持出先ごとの持出量などを記載しなければなりません(廃棄物処理法第12条第13項、施行令第6条の4、施行規則第8条の5)。特別管理産業廃棄物を生ずる事業者は、運搬・処分の年月日や運搬先ごとの運搬量等を帳簿に記載する必要があります(廃棄物処理法第12条の2第14項、施行規則第8条の18)。処理計画・実施状況報告の数値を正確に作るためにも、日常の記録管理が基礎になります。

まとめ

産業廃棄物1,000トン以上、または特別管理産業廃棄物50トン以上を排出する事業者は、多量排出事業者として処理計画の作成・提出義務を負います。ポイントを整理すると次のとおりです。

  • 判定は前年度の「発生量」で、事業場ごとに行う
  • 毎年6月30日までに、今年度の計画書と前年度の実施状況報告書を提出する
  • 計画書には、管理体制、排出抑制、分別、自ら行う再生利用・中間処理・埋立、委託に関する事項を記載する(特管は電子マニフェストに関する事項も)
  • 提出された計画・報告はインターネットで公表される
  • 未提出・虚偽記載は20万円以下の過料

該当するかどうかは前年度の事業場ごとの排出実績で判断されるため、毎年度、各事業場の排出量を把握しておくことが第一歩です。


出典:

  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第12条、第12条の2、第33条)
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第6条の3、第6条の4、第6条の7)
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第8条の4の5〜第8条の5、第8条の17の2〜第8条の18、第8条の27、第8条の31の3)
  • 多量排出事業者による産業廃棄物の処理計画の作成等に関する指導について(通知)(平成31年2月18日環循規発第1902181号)
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の施行について(通知)(平成30年3月30日環循適発第18033010号・環循規発第18033010号)