蛍光灯や水銀体温計、水銀血圧計など、水銀を使用した製品が産業廃棄物となったものは、「水銀使用製品産業廃棄物」として区分され、通常の産業廃棄物とは異なる取り扱いが求められます。また、ばいじんや汚泥の中にも、一定濃度以上の水銀を含むものは「水銀含有ばいじん等」として別途規制の対象となります。
いずれも、廃棄物処理法施行令第6条(産業廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)の中で定義され、保管・運搬・処分の各段階で特別なルールが設けられています。なお、廃水銀や廃水銀化合物そのもの(廃水銀等)は、特別管理産業廃棄物として別の区分になります(廃棄物処理法施行令第2条の4第5号ニ)。
水銀使用製品産業廃棄物の該当品目
廃棄物処理法施行令・施行規則の別表では、水銀が使用された製品のうち産業廃棄物として排出される可能性のあるものが、水銀使用製品産業廃棄物として具体的に列挙されています。こうした製品は、破損すると水銀が漏出するおそれがあるため、破損しないよう分別して保管・運搬することが求められます。
定義(施行規則第7条の2の4)
水銀使用製品産業廃棄物とは、次のものが産業廃棄物となったものです。
- 施行規則別表第四に掲げる水銀使用製品
- 1の製品を材料または部品として用いて製造される水銀使用製品(別表第四で×印が付されているものに係るものを除く)
- 1・2のほか、水銀またはその化合物の使用に関する表示がされている水銀使用製品
別表第四に掲げられている主な製品
別表第四には43品目が列挙されています。主なものは次のとおりです(施行規則別表第四)。
- 照明:蛍光ランプ(冷陰極蛍光ランプ・外部電極蛍光ランプを含む)、HIDランプ(高輝度放電ランプ)、その他の放電ランプ
- 電池・電気部品:水銀電池、スイッチ及びリレー(水銀が目視で確認できるもの)
- 計測器:気圧計、湿度計、液柱形圧力計、弾性圧力計(ダイアフラム式)、圧力伝送器(ダイアフラム式)、真空計、ガラス製温度計、水銀充満圧力式温度計、差圧式流量計、傾斜計、握力計
- 医療関係:水銀体温計、水銀式血圧計、医薬品
- その他:農薬、顔料、真空ポンプ(水銀が目視で確認できるもの)、灯台の回転装置、各種水銀の製剤 など
オフィスや工場の照明器具の更新、研究施設・医療機関の計測器の廃棄などで、日常的に発生し得る品目が多く含まれています。
水銀含有ばいじん等の含有基準
焼却施設等から生じるばいじんや燃え殻、汚泥などのうち、水銀またはその化合物を一定濃度以上含むものは、「水銀含有ばいじん等」として、通常の産業廃棄物とは異なる処理基準が適用されます。該当するかどうかは、廃棄物処理法施行規則に定める含有基準(水銀濃度)により判断されます。
| 区分 | 水銀含有ばいじん等に当たる基準 | 水銀の回収が義務付けられる基準 |
|---|---|---|
| ばいじん、燃え殻、汚泥、鉱さい | 1kgにつき15mgを超えて含有 | 1kgにつき1,000mg以上含有 |
| 廃酸、廃アルカリ | 1Lにつき15mgを超えて含有 | 1Lにつき1,000mg以上含有 |
(施行規則第7条の8の2、第7条の8の3第2号)
※廃水銀等や、特別管理産業廃棄物に当たるものは除かれます。
保管・運搬・処分の基準
保管
水銀使用製品産業廃棄物を保管する場合は、保管の場所に、他の物と混合するおそれのないように仕切りを設ける等必要な措置を講じなければなりません(施行規則第8条第5号)。掲示板の「保管する産業廃棄物の種類」の欄には、水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等が含まれる場合はその旨を表示する必要があります(施行規則第8条第1号ロ(2)(ロ))。
収集運搬
水銀使用製品産業廃棄物の収集・運搬は、破砕することのないような方法で、かつ、その他の物と混合するおそれのないように他の物と区分して行う必要があります。積替え・保管の場所にも仕切りを設ける等の措置が必要です(施行令第6条第1項第1号ロ・ニ・ヘ、第3条第1号ホ・ト)。蛍光ランプを割れたまま他の廃棄物と一緒に積み込むような運搬は、この基準に反することになります。
処分
水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等の処分・再生を行う場合は、次の基準に従う必要があります(施行令第6条第1項第2号ホ)。
- 水銀またはその化合物が大気中に飛散しないように必要な措置を講ずる
- 水銀等の割合が相当の割合以上であるものの処分・再生を行う場合は、あらかじめ、環境大臣が定める方法により水銀を回収する
「水銀を回収しなければならないもの」は、水銀含有ばいじん等のうち上表の1,000mg基準以上のものに加え、水銀使用製品産業廃棄物のうち施行規則別表第五に掲げる製品です(施行規則第7条の8の3)。別表第五には、スイッチ及びリレー、気圧計、湿度計、液柱形圧力計、弾性圧力計、圧力伝送器、真空計、ガラス製温度計、水銀充満圧力式温度計、水銀体温計、水銀式血圧計、ひずみゲージ式センサ、真空ポンプ、差圧式流量計、握力計など27品目が掲げられています(施行規則別表第五)。なお、蛍光ランプ・HIDランプ等の放電ランプは、別表第五の対象ではありません(別表第五第18号の「放電管」は放電ランプを除くとされています)。
許可の事業範囲における取り扱い
産業廃棄物処理業の許可実務では、石綿含有産業廃棄物、自動車等破砕物と並んで、水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等についても、これらを「除く」か「含む」かを区分して許可を取得する運用が一般的です。国の通知でも、事業の範囲は「取り扱う産業廃棄物の種類(石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれるか否かを含む。)」により示され、許可証の「事業の範囲」欄にもその旨を明記することとされています(「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号。以下「許可事務通知」)第1の1、第1の11(1))。
既に「除く」内容で許可を受けている事業者が、新たに水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等を取り扱おうとする場合には、事業範囲の変更許可の手続きが必要になります(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q20)。委託先の処理業者を選定する際には、この区分について許可証を確認することが重要です。
特別管理産業廃棄物の「水銀を含むばいじん」との区別
特別管理産業廃棄物の許可証では、水銀を含むばいじんについて「ばいじん(水銀又はその化合物を含むことのみにより有害なものであって、水銀回収義務がないものに限る。)」のように記載する例が示されています(許可事務通知第1の11(2)⑦)。水銀を含む廃棄物は、通常の産業廃棄物の「水銀含有ばいじん等」、特別管理産業廃棄物の「廃水銀等」「水銀を含むばいじん等」など、性状によって区分が分かれるため、許可証の記載を括弧書きまで確認することが大切です。
排出事業者が注意すべきポイント
水銀使用製品産業廃棄物や水銀含有ばいじん等に該当する廃棄物を排出する事業者は、他の産業廃棄物と混合しないよう分別保管を行うとともに、これらの処理に対応した許可(「含む」区分の許可)を持つ処理業者に委託する必要があります。対応していない処理業者に委託すると、委託しようとする処理がその事業の範囲に含まれない者への委託として委託基準違反となります(施行令第6条の2第1号・第2号)。特に、廃蛍光灯を大量に排出する事業場(オフィスビルの改修工事、店舗の照明設備更新等)では、水銀使用製品産業廃棄物としての分別保管・委託が必要になることを見落としがちなので注意が必要です。
書類への記載
- 委託契約書:委託する産業廃棄物に水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨を記載する(施行規則第8条の4の2第6号ホ)
- マニフェスト:種類に水銀使用製品産業廃棄物等が含まれる旨を確認して交付し、その数量を記載する(施行規則第8条の20第3号、第8条の21第1項第11号)
- 帳簿:処理施設を設置して自ら処分する事業者等が帳簿を付ける場合も、水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等に係る事項を明らかにする(施行規則第8条の5第1項)
「水銀使用の表示」がある製品にも注意
別表第四に掲げられていない製品でも、水銀またはその化合物の使用に関する表示がされている水銀使用製品は、水銀使用製品産業廃棄物に該当します(施行規則第7条の2の4第3号)。廃棄する製品に水銀使用の表示がないか、廃棄前に確認する習慣をつけておくと安心です。
まとめ
水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等は、水銀による環境汚染を防ぐため、分別保管と適切な処理業者への委託が重要です。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 水銀使用製品産業廃棄物は、蛍光ランプ・水銀体温計・血圧計など施行規則別表第四の43品目と、それを部品とする製品、水銀使用の表示がある製品
- 水銀含有ばいじん等は、ばいじん・汚泥等で水銀15mg/kg超(廃酸・廃アルカリは15mg/L超)のもの
- 保管は仕切り、運搬は破砕禁止+区分、処分は大気中への飛散防止
- 計測器類(別表第五の27品目)や水銀1,000mg/kg以上のものは、処分前に水銀の回収が義務
- 委託先の許可が「含む」区分か、委託契約書・マニフェストにその旨を記載しているかを確認する
該当する廃棄物を排出している場合は、委託先が対応可能かどうかを事前に確認しておきましょう。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第2条の4、第3条、第6条、第6条の2)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第7条の2の4、第7条の8の2、第7条の8の3、第8条、第8条の4の2、第8条の5、第8条の20、第8条の21、別表第四、別表第五)
- 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
- 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」
