「支払明細を見たら、振込手数料や協力会費が差し引かれていた」「処分費の名目で、よく分からない金額が引かれている」——下請業者の方から、こうした相談を受けることがあります。

下請代金の支払時に、諸費用を差し引く(相殺する)ことを「赤伝処理(あかでんしょり)」といいます。赤伝処理そのものがすぐに違法となるわけではありませんが、ルールを守らないと建設業法違反のおそれがあります。

この記事では、赤伝処理の正しいやり方を、建設業法令遵守ガイドライン(第12版)9章に沿って解説します。


1. 赤伝処理とは

ガイドラインでは、赤伝処理を、元請負人が次のような費用を下請代金の支払時に差し引く(相殺する)行為だとしています(建設業法令遵守ガイドライン第12版 9章)。

  1. 一方的に提供・貸与した安全衛生保護具などの費用
  2. 下請代金の支払に関して発生する諸費用(振込手数料など)
  3. 下請工事の施工に伴い副次的に発生する建設副産物の運搬処理費用
  4. その他の諸費用(駐車場代、弁当ごみなどのごみ処理費用、安全協力会費、建設キャリアアップシステム(CCUS)のカードリーダー設置費用や現場利用料など)

2. 違反のおそれがある6つの事例

ガイドラインが挙げる事例は次のとおりです(同9章)。

  1. 合意なく、一方的に提供・貸与した安全衛生保護具の費用、建設副産物の運搬処理費、振込手数料などを下請に負担させ、下請代金から差し引いた
  2. 建設副産物が発生しない工事なのに、処理費用の名目で一定額を差し引いた
  3. 元請の販売促進名目の協力費など、根拠があいまいな費用を差し引いた
  4. 元請が確保した駐車場や宿舎の使用料として、実費より過大な金額を差し引いた
  5. 責任や費用負担を明確にしないまま別業者にやり直し工事をさせ、その費用を一方的に下請代金から減額した
  6. 工事完了後に下請が免税事業者だと分かったため、請求書の金額から消費税相当額を一方的に支払わなかった

①〜⑥はいずれも、建設業法第19条の3第1項(不当に低い請負代金の禁止)違反のおそれがあり、同法第28条第1項第2号(不誠実な行為)に該当するおそれもあります。さらに①は、契約書に書かなければ同法第19条違反、見積条件として示さなければ同法第20条第3項違反となります。


3. 赤伝処理をするための条件

条件① 元請・下請双方の協議と合意

ガイドラインは、「赤伝処理を行うこと自体が直ちに建設業法上の問題となることはない」としたうえで、差し引く内容や根拠について、元請・下請双方の協議と合意が必要だとしています(同9章(1))。

条件② 見積条件と契約書面への明示

次の費用を赤伝処理する場合は、内容や差引額の算定根拠などを見積条件と契約書面に明示する必要があります(同9章(2))。

  • 下請代金の支払に関して発生する諸費用
  • 一方的に提供・貸与した安全衛生保護具など労働災害防止対策の費用
  • 建設副産物の処理費用

見積条件に示さなければ建設業法第20条第3項違反、契約書面に書かなければ同法第19条違反です。また、建設リサイクル法第13条でも、対象工事では再資源化等に要する費用を契約書面に記載することが求められています。

条件③ 根拠の明確化と実費ベース

合意があっても、根拠があいまいな費用や、実費より過大な費用を差し引く行為は、建設業法第18条の「対等な立場での合意」の原則をなくすものとされています(同9章(3))。

条件④ 透明性の確保

ガイドラインでは、差引額の算出根拠や使途を明らかにして十分に協議すること、たとえば安全協力費は工事完成後に収支を下請に開示するなど、透明性の確保に努めることを求めています(同9章(4))。

駐車場代など、建設業法第19条の書面化義務の対象とならない費用についても、後日の紛争を防ぐため、合意事項を書面にして取り交わしておくことが望ましいとされています。


4. 振込手数料は「合意があっても」差し引けない方向に

特に注意したいのが振込手数料です。

ガイドラインでは、受託中小企業振興法に基づく「振興基準」において、合意の有無にかかわらず、銀行口座への振込手数料を中小受託事業者に負担させ、代金から差し引いてはならないとされていることに、元請は留意しなければならないとしています(同9章(1))。

国土交通省の通知「下請契約及び下請代金支払の適正化並びに施工管理の徹底等について」(令和7年12月16日)でも、振興基準の改正により、令和8年1月1日からこの取扱いになることが周知されています。

また、「建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問」No.40では、振込手数料を協議・合意のないまま一方的に下請代金から差し引く行為は建設業法違反のおそれがあるとしています。


5. 下請業者としての対応

  • 見積条件・契約書に、差し引かれる費用の項目と算定根拠が書かれているか確認する
  • 合意していない費用が差し引かれていたら、根拠の説明を求める
  • 安全協力費などは、収支の開示を求める
  • 一方的な差引きが続く場合は、「駆け込みホットライン」の情報収集フォームで情報提供できる(よくあるご質問 No.40)

6. まとめ

  • 赤伝処理は、合意と見積条件・契約書面への明示があれば、それ自体は直ちに違法ではない
  • 根拠のない費用や実費を超える金額の差引きは違反のおそれがある
  • 振込手数料は、振興基準により合意の有無にかかわらず差し引いてはならないとされている
  • 安全協力費などは収支を開示し、透明性を確保する

「自社の赤伝処理の運用が問題ないか確認したい」「契約書の差引条項を見直したい」という元請企業様、「差し引かれている費用に納得がいかない」という下請業者様、どちらのご相談もお受けしています。お気軽に当事務所へお問い合わせください。

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