「工事は終わったのに、元請から『発注者から入金されたら払う』と言われて、いつまでも支払われない」「保留金として一部を翌年まで持ち越された」——下請代金の支払をめぐるトラブルは後を絶ちません。
下請代金の支払期日については、特定建設業者に課される「50日ルール」がよく知られています。ただ実は、一般建設業の元請にも支払期限のルールがあります。この記事では、元請全般に適用されるルールを中心に、支払期日の考え方を整理します。
※特定建設業者の義務の全体像(施工体制台帳・下請指導など)は、特定建設業許可を取得するには?の記事で解説しています。
1. 支払期日に関する3つのルール
| ルール | 対象 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| ① 1か月ルール | すべての元請負人 | 注文者から出来高払・完成払を受けた日から1か月以内 | 建設業法第24条の3第1項 |
| ② 検査・引渡し | すべての元請負人 | 完成通知から20日以内に検査、完成確認後の申出で直ちに引渡し | 同法第24条の4 |
| ③ 50日ルール | 特定建設業者 | 引渡しの申出の日から50日以内に支払期日を定める | 同法第24条の6 |
2. ルール①:元請全般に適用される「1か月ルール」
建設業法第24条の3第1項では、元請負人は、注文者から出来高払や完成払を受けたときは、その支払の対象となった工事を施工した下請負人に対し、支払を受けた金額の出来形に対する割合と、下請が施工した出来形部分に相応する下請代金を、支払を受けた日から1か月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならないと定めています。
このルールは、元請が特定建設業者か一般建設業者かを問いません。
2-1. 違反のおそれがある事例
建設業法令遵守ガイドライン(第12版)10-1章では、次のような事例を挙げています。
- 工事が完成し、検査・引渡しも終わっているのに、下請から請求がないことを理由に法定期限を超えて支払わない
- 基礎工事や土工事など前工程の工事が完成・引渡し済みなのに、工事全体が終わるまで長期間、保留金として一部を支払わない
- 工事全体が終わったのに、保留金を他の現場まで持ち越す
- 注文者から出来高払を受けたのに、1か月以内に相応の下請代金を支払わない
完成・引渡し後に、正当な理由なく長期間にわたって保留金として下請代金の一部を支払わないことは、建設業法第24条の3または第24条の6に違反するとされています(同10-1章(1))。
3. ルール②:検査は20日以内、引渡しは直ちに
建設業法第24条の4では、次のように定められています。
- 元請負人は、下請負人から工事完成の通知を受けたときは、通知を受けた日から20日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、完成を確認するための検査を完了しなければならない(第1項)
- 検査で完成を確認した後、下請負人が申し出たときは、直ちに目的物の引渡しを受けなければならない(第2項)
ただし、下請契約で「工事完成の時期から20日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける」旨の特約がある場合は、この限りではありません。
4. ルール③:特定建設業者の「50日ルール」
元請が特定建設業者の場合、下請負人が特定建設業者または資本金4,000万円以上の法人である場合を除き(建設業法施行令第7条の2)、発注者から支払があったかどうかにかかわらず、下請が引渡しの申出をした日から起算して50日以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払期日を定めなければなりません(建設業法第24条の6第1項)。
支払期日を定めなかった場合は引渡し申出の日が、50日を超える日を定めた場合は申出の日から50日を経過する日が、支払期日とみなされます(同条第2項)。
期日までに支払わなかった場合は、50日を経過した日から支払日までの日数に応じて、年14.6%の遅延利息を支払わなければなりません(同条第4項、建設業法施行規則第14条)。
4-1. 2つの期限の「早い方」
ガイドラインでは、特定建設業者の支払期限は、「注文者から出来高払・完成払を受けた日から1か月を経過する日」と「引渡し申出の日から50日以内で定めた支払期日」のいずれか早い期日になると説明しています(同10-1章)。
5. 支払手段にも配慮が必要
5-1. 労務費相当分は現金で
元請負人は、下請代金のうち労務費に相当する部分は現金で支払うよう適切な配慮をしなければなりません(建設業法第24条の3第2項)。ガイドラインでは、全額手形払いや、労務費相当分に満たない額しか現金で払わないことを「望ましくない行為」としています(同10-2章)。
5-2. 前払金を受けたら下請にも
元請負人は、前払金を受けたときは、下請負人に対し、資材の購入や労働者の募集など工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければなりません(建設業法第24条の3第3項)。
手形払いのルール(60日)については、「建設業の手形サイト60日ルール」の記事で詳しく解説しています。
6. 違反した場合の扱い
第24条の3第1項、第24条の4、第24条の6第3項・第4項は、許可行政庁の指示処分の根拠となる規定(建設業法第28条第1項)からは除かれており、独占禁止法との関係で扱われます。建設業者がこれらに違反し、その事実が独占禁止法第19条にも違反すると認められるときは、許可行政庁は公正取引委員会に措置請求ができます(建設業法第42条)。
「建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問」No.36では、特定建設業者である元請が引渡し後50日以内に支払を完了していない場合は第24条の6違反のおそれがあるとして、許可行政庁への相談や「駆け込みホットライン」での情報提供を案内しています。ただし、債権債務の認識に食い違いがあるなどの民事上のトラブルについては、法テラスや弁護士、建設業取引適正化センターへの相談が案内されています。
7. 帳簿への記載も忘れずに
建設業者は、下請工事の目的物の引渡しを受けた年月日などを帳簿に記載して保存しなければなりません。特定建設業者が資本金4,000万円未満の法人または個人である一般建設業者と下請契約を結んだ場合は、支払った下請代金の額、支払年月日、支払手段なども記載する必要があります(建設業法施行規則第26条第1項第4号)。
8. まとめ
- 元請はすべて、注文者から支払を受けた日から1か月以内に下請代金を支払う
- 完成通知から20日以内に検査し、申出があれば直ちに引渡しを受ける
- 特定建設業者は、引渡し申出から50日以内に支払期日を定め、遅れれば年14.6%の遅延利息
- 完成・引渡し後の長期間の保留金は違反となる
「下請への支払サイクルが法令に合っているか確認したい」「代金の支払が遅れていて困っている」という方は、お気軽に当事務所へご相談ください。