鉄筋工事や型枠工事の専門工事業者の方から、「下請の現場ごとに主任技術者を置くのが負担」という声を聞きます。
建設業法には、一定の条件を満たせば、下請が主任技術者を置かなくてよい「特定専門工事」の制度があります。制度の概要は「配置技術者とは?」でも触れました。この記事では、制度を実際に使うときの手続きと注意点を、建設業法第26条の3と監理技術者制度運用マニュアルに沿って詳しく解説します。
1. 制度の概要
建設業者は、工事を施工するときは主任技術者を置かなければなりません(建設業法第26条第1項)。これは下請も同じです。
ただし、特定専門工事では、元請負人(または上位の下請)と下請負人の合意により、元請等が置く主任技術者が、自らの職務とあわせて下請の主任技術者の職務も行うことにできます。この場合、下請は主任技術者を置かなくてよいことになります(建設業法第26条の3第1項)。
ここでいう下請負人は、建設業者である下請負人に限られます。
2. 対象となる「特定専門工事」
特定専門工事は、土木一式工事・建築一式工事以外の工事のうち、施工技術が画一的で、施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとして政令で定める工事です(建設業法第26条の3第2項)。
2-1. 対象工事
建設業法施行令第31条第1項で、次の2つが定められています。
- 大工工事またはとび・土工・コンクリート工事のうち、コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事
- 鉄筋工事
2-2. 金額の要件
元請等がその工事を施工するために結んだ下請契約の請負代金の額(2以上あるときは合計額)が、4,500万円未満であることが必要です(建設業法施行令第31条第2項)。
2-3. 対象外となる場合
ただし、元請負人が発注者から直接請け負った工事で、その元請負人が結んだ下請契約の請負代金の額が、監理技術者の設置が必要になる金額(5,000万円、建築一式工事は8,000万円。建設業法第26条第2項、施行令第2条)以上となるものは除かれます(建設業法第26条の3第2項ただし書)。
3. 手続き
3-1. 書面による合意
元請等と下請の合意は、書面で、次のような事項を明らかにして行います(建設業法第26条の3第3項)。
- 特定専門工事の内容
- 元請等が置く主任技術者の氏名
- その他国土交通省令で定める事項
書面に代えて、電子的な方法で合意することもできます(同条第4項)。
3-2. 注文者の書面承諾(事前)
元請等は、この合意をしようとするときは、あらかじめ注文者の書面による承諾を得なければなりません(建設業法第26条の3第5項)。注文者は、元請等の承諾を得て、書面の代わりに電子的な方法で承諾を通知することもできます(同条第6項)。
4. 元請等が置く主任技術者の要件
下請の主任技術者の職務まで担う元請等の主任技術者は、次の2つの要件を満たさなければなりません(建設業法第26条の3第7項)。
- その特定専門工事と同じ種類の建設工事について、1年以上の指導監督的な実務経験があること
- その特定専門工事の工事現場に専任で置かれること
マニュアルでは、「指導監督的な実務の経験」とは、工事現場主任者、工事現場監督者、職長などの立場で、部下や下請業者などに対して工事の技術面を総合的に指導・監督した経験をいう、としています(監理技術者制度運用マニュアル 二-二(1)②)。
なお、この主任技術者には、建設業法第26条第3項(重要な工事での専任とその特例)の規定は適用されません(同法第26条の3第8項)。工事の金額にかかわらず、上記②のとおり専任で置く必要があります。
5. 下請は「再下請」ができない
主任技術者を置かないこととした下請負人は、その工事を他人に請け負わせてはなりません(建設業法第26条の3第9項)。
この規定に違反した建設業者は、監督処分(指示・営業停止など)の対象となります(建設業法第28条第1項第4号)。
6. 偽装請負にならないための注意点
マニュアルでは、次の点に注意するよう求めています(二-二(1)②)。
- 元請等と下請の契約は請負契約であり、下請に主任技術者を置かない場合でも、元請等の主任技術者から下請への指示は、下請の事業主や現場代理人など、現場の責任者に対して行わなければならない
- 元請等の主任技術者が下請の作業員に直接作業を指示することは、労働者派遣(いわゆる偽装請負)とみなされる場合がある
また、特定専門工事の元請等の主任技術者は、下請の主任技術者としての職務も担っているため、短期間現場を離れる場合などの体制確保については、元請等の立場だけでなく、下請の技術者としての役割にも支障が生じないよう注意が必要とされています(マニュアル 三(1)⑤)。
7. まとめ
- 型枠工事と鉄筋工事で、下請代金の合計が4,500万円未満なら特定専門工事の対象になり得る
- 元請が監理技術者を置くべき規模の工事は対象外
- 元請等と下請の書面合意+注文者の事前の書面承諾が必要
- 元請等の主任技術者は1年以上の指導監督的実務経験があり、現場に専任
- 下請は再下請できず、作業員への直接指示は偽装請負のおそれ
「この現場で特定専門工事の制度が使えるか確認したい」「合意書や承諾書の書式を作りたい」という鉄筋・型枠の専門工事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。
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