「永住許可を取得すれば、もう入管の手続を気にしなくていい」と思われがちですが、実は永住者にも守るべき義務があり、これを怠ると在留資格が取り消される可能性があります。近年の入管法改正では、悪質なケースに対する取消事由がより明確に整理されました。
本記事では、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」の内容をもとに、永住許可が取り消される具体的な理由について解説します。
永住者にも課される入管法上の義務
永住者は、在留期間の更新といった在留審査の手続を受ける必要がなくなりますが、それは「入管法上の義務が一切なくなる」という意味ではありません。出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」によると、永住者であっても、在留カードの有効期間の更新申請や住居地届出などの義務を遵守しなければならないとされています。
従来から、新しい住居地の届出をしなかった場合や虚偽の住居地を届け出た場合、不正の手段等により永住許可を受けた場合には、永住者の在留資格が取り消されることがあるとされてきました。また、永住者であっても、1年を超える実刑に処せられた場合や薬物事犯により有罪判決を受けた場合などは、退去強制の対象となることもあります。
「この法律に規定する義務を遵守せず」とはどのような場合か
改正後の入管法では、「この法律に規定する義務を遵守せず」という取消事由が新たに規定されました。これは、永住者が遵守すべき義務のうち、退去強制事由には該当しないものの、義務の履行が罰則によって担保されているものについて、正当な理由なく履行しないことを指します。
ここで重要なのは、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」が、この制度はあくまで永住許可後に要件を満たさなくなった一部の悪質な者を対象とするものであり、大多数の永住者を対象とするものではないと明言している点です。例えば、うっかり在留カードを携帯し忘れた場合や、在留カードの有効期間の更新申請を失念してしまった場合について、それだけで在留資格が取り消されることは想定されていません。
「故意に公租公課の支払をしないこと」とは
今回の改正で特に注目されているのが、「故意に公租公課の支払をしないこと」という取消事由です。「公租公課」とは、税金だけでなく、社会保険料などの公的負担金全般を指します。
出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」によれば、「故意に」支払わないというのは、支払義務があることを認識していながら、あえて支払をしないことをいいます。具体的には、支払うべき公租公課があることを知っており、かつ支払能力があるにもかかわらず支払をしない場合が想定されています。
一方で、病気や失業など、本人に帰責性があるとは認めがたい事情でやむを得ず支払ができない場合については、在留資格を取り消すことは想定されていません。取消事由に形式的に該当する場合であっても、実際に取消しなどを行うかどうかは、不払いに至った経緯や督促などへの対応状況といった個別具体的な事情を踏まえて判断されます。
事後的に不払い状況が解消された場合はどうなるか
差押処分などによって事後的に公租公課の不払い状況が解消された場合、それだけで「故意に支払をしないこと」に当たらなくなるわけではありません。永住許可制度の適正化は、在留状況が良好とは評価できない永住者について適切な在留管理を行うことを目的としているため、滞納処分による差押えなどで徴収目的が達成されたとしても、必ずしも取消しなどの対象から外れるわけではないとされています。
ただし、実際に取消しなどを行うかどうかを判断する際には、未納額や未納期間、関係機関の措置への対応状況とあわせて、事後的に不払い状況が解消されたかどうかも考慮されるとされています。
刑罰法令違反による取消事由
もう一つの新たな取消事由として、一定の重大な刑罰法令違反があります。具体的には、刑法上の窃盗、詐欺、恐喝、殺人などの罪や、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の危険運転致死傷などが対象とされており、いずれも故意犯に限られています。
なお、永住者であっても、罪名等にかかわらず1年を超える実刑に処せられた場合には、退去強制事由に該当して退去強制されることがある点にも注意が必要です。
まとめ
永住許可制度の適正化により、住居地届出義務や公租公課の支払義務、一定の重大な刑罰法令違反といった取消事由が整理されました。ただし、これらはあくまで悪質なケースを対象としたものであり、うっかりミスや、病気・失業などやむを得ない事情による不払いまで一律に取消しの対象とするものではないことが、出入国在留管理庁のQ&Aで明確にされています。
もっとも、公租公課の支払状況などが問題となった場合には、個別の事情を丁寧に説明できるよう備えておくことが大切です。ご自身の状況について不安がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。