「養液栽培のハウスを建てたい。作業性のために床をコンクリートにしたいが、そうすると農地転用になるの?」
「植物工場を農地に建てる計画がある。農地のまま建てられる方法はない?」

施設園芸に取り組む農業法人や、植物工場を計画する企業の方から、こうしたご相談をいただきます。

従来、農地の底面をコンクリートで覆ってしまうと、その土地は「耕作の目的に供される土地」とは言いにくく、農地転用の許可が必要とされてきました。

そこで平成30年の法改正で設けられたのが、農作物栽培高度化施設の制度です(農地法第43条・第44条)。一定の基準を満たす施設について農業委員会に届け出れば、底面をコンクリート等で覆っても、その施設での栽培を「耕作」とみなし、農地のまま扱うことができます。

この記事では、農地法第43条、農地法施行規則第88条の2・第88条の3、国の通知「農地法第43条及び第44条の運用について」(平成30年11月20日 30経営第1796号、以下「43条運用通知」)に沿って、次の点を解説します。

  • 制度の仕組みとメリット
  • 施設の基準(高さ・日影など)
  • 届出の手続きと添付書類
  • 設置後に気をつけること(栽培をやめると違反転用に)

農作物栽培高度化施設とは?

条文の確認

農林水産省令で定めるところにより農業委員会に届け出て農作物栽培高度化施設の底面とするために農地をコンクリートその他これに類するもので覆う場合における農作物栽培高度化施設の用に供される当該農地については、当該農作物栽培高度化施設において行われる農作物の栽培を耕作に該当するものとみなして、この法律の規定を適用する。(農地法第43条第1項)

「農作物栽培高度化施設」とは、農作物の栽培の用に供する施設であって、栽培の効率化・高度化を図るためのもののうち、周辺の農地の営農条件に支障を生ずるおそれがないものとして省令で定めるものをいいます(農地法第43条第2項)。

届出をすると何が変わる?

項目届出をした場合(高度化施設用地)
農地法上の扱い農地と同様(施設での栽培を耕作とみなす)(43条運用通知 第1、「農地法の運用について」第1)
農地転用許可不要
農振法の開発行為の許可(青地の場合)不要(農振法第15条の2第1項第4号)
農地法の他の規定3条許可、遊休農地の措置、違反転用への処分など、農地法の全ての規定が適用される

「農地のまま」扱われるということは、権利移動には3条許可が必要であり、栽培が行われなければ遊休農地の措置の対象にもなる、ということです。メリットと同時に義務もついてくる点を押さえておきましょう。

青地(農用地区域)で農業用施設を整備する方法全般は、「青地(農用地区域)に農業用施設を建てる方法:用途区分の変更と開発行為の許可」で解説しています。


施設の基準─ 農地法施行規則第88条の3

届出の対象となる施設は、次の要件をすべて満たす必要があります(農地法施行規則第88条の3)。

  1. 専ら農作物の栽培の用に供されるものであること
  2. 周辺の農地の営農条件に支障を生ずるおそれがないものとして、次のいずれにも該当すること
  • イ 日照に影響を及ぼすおそれがないものとして、大臣が定める施設の高さに関する基準に適合すること
  • ロ 排水の放流先の管理者の同意があることなど、周辺の営農条件に著しい支障が生じないよう必要な措置が講じられていること
  1. 施設の設置に必要な他法令の許認可等を受けている(受ける見込みがある)こと
  2. 農作物栽培高度化施設であることを明らかにする標識の設置などの措置が講じられていること
  3. 所有権以外の権原(借地など)で設置する場合は、土地所有者の同意があること

基準1:「専ら農作物の栽培の用に供される」

43条運用通知は、一律の基準は設けないとしながらも、施設内で栽培と関連性のないスペースが広いなど、一般的な農業用ハウスと比較して適正でない場合は要件を満たさないとしています(43条運用通知 第2の1(1))。

また、営農計画書の生産量・販売量からみて、施設の規模が実態に即していないと考えられる場合、農業委員会は施設を適切な規模に見直すよう助言することが適当とされています(同(3))。

基準2イ:高さと日影の数値基準

屋根や壁面を透過性のない素材で覆う施設については、大臣告示(平成30年農林水産省告示第2551号)に基づき、次の点が確認されます(43条運用通知 第2の2(1))。

項目基準
高さ地盤面(おおむね30cm以下の基礎を施工する場合はその上部)から棟までが8m以内
軒の高さ地盤面から軒までが6m以内
日影周辺の農地におおむね2時間以上日影を生じさせない

「透過性のないもの」とは、着色フィルム、木材板、コンクリートなど日光を透過しない素材をいいます。「屋根又は壁面を覆う」とは、柱・梁・窓枠・出入口を除いた部分の大部分を被覆素材が覆っている状態です(同 ②③)。

日影の確認方法は、施設を新設するか、既存施設の底面をコンクリート化するかで異なります。

  • 新設する場合:春分・秋分の日の午前8時〜午後4時に、2時間以上日影が生じる範囲に周辺農地が含まれていないことを、日影図で確認
  • 既存施設の底面をコンクリート化する場合:施設の軒の高さと、隣接農地との敷地境界線からの距離が、次の表を満たしているかで確認
施設の軒の高さ敷地境界線から施設までの距離
2m以内2m
2m超〜3m以内2.5m
3m超〜4m以内3.5m
4m超〜5m以内4m
5m超〜6m以内5m

(43条運用通知 第2の2(1)④)

基準2ロ:排水と周辺への影響

施設から出る排水を河川や用排水路に流す場合は、その管理者の同意が必要です(農地法施行規則第88条の2第2項第7号イ)。土砂の流出や雨水の流入のおそれがある場合は、擁壁の設置などの措置が求められます。また、設置後に周辺の営農条件に著しい支障が生じた場合に是正措置を講ずる旨の同意書を提出します(43条運用通知 第2の2(2))。

基準4:標識

標識は、施設が農作物栽培高度化施設であることを表示し、耐久性のある素材で作られ、敷地外から目視で内容を確認できる大きさのものである必要があります(43条運用通知 第2の4)。


附帯設備・トイレ・事務所は含まれない

ここは誤解が多いポイントです。43条運用通知は、施設に設ける事務所、駐車場等の附帯設備について、次のとおりとしています。

高度化施設用地における農作物の栽培に通常必要不可欠なものとは言えず、当該農地から独立して他用途への利用又は取引の対象となり得ると認められる場合には、高度化施設用地として取り扱うことはできない。(43条運用通知 第2の6)

令和5年の地方分権改革の提案(宮城県ほか)でも、施設園芸用地に「トイレ・更衣室・作業用倉庫」を設置できるかが論点になりました。国は、「トイレ、更衣室及び作業用倉庫」を農地に設置する場合は、農地転用に該当すると回答しています(令和5年 地方分権改革に関する提案募集 提案事項 管理番号61)。

附帯施設が必要な場合は、別途、農地転用の許可(2アール未満の例外に当たるかも含めて)を検討する必要があります。農業用施設の許可不要の例外については「農業用倉庫・畜舎・ハウスを自分の農地に建てるとき転用許可は要る?」をご覧ください。

屋根に太陽光パネルを付ける場合

施設の屋根・壁面に太陽光発電設備を設置する場合は、次のいずれかに当たれば、高度化施設として扱われます(43条運用通知 第2の7(1))。

  • 売電しない場合:発電した電力を施設内の設備に直接供給し、発電能力が施設の瞬間的な最大消費電力を超えないこと
  • 売電する場合:農業経営改善計画の認定を受けた者(認定農業者)または青年等就農計画の認定を受けた者(認定新規就農者)が、その計画に位置付けた施設に設置すること

施設に附帯して地面に太陽光発電設備を設置する場合は、附帯設備と同じく、高度化施設用地としては扱われません(同(2))。


届出の手続き

届出書の記載事項(農地法施行規則第88条の2第1項)

  • 届出者の氏名・住所(法人は名称、所在地、業務内容、代表者)
  • 土地の所在・地番・地目・面積、所有者の氏名
  • 施設の面積、高さ、軒の高さ、構造
  • 施設を設置する時期

添付書類(同第2項)

書類備考
法人の登記事項証明書・定款法人の場合
土地の登記事項証明書
施設の位置・配置状況・標識の位置を示す図面施設の底面を「栽培施設」と「作業用通路・環境制御装置の置場等」のどちらに使うかも明示(43条運用通知 第3の1(2))
日影図(高さ基準に適合することを示す図面)屋根・壁面を透過性のないもので覆う場合。既存施設の底面をコンクリート化する場合は不要
営農に関する計画栽培時期、生産量、主な販売先、資金計画など
是正措置への同意書栽培されない場合の改築等、周辺に支障が生じた場合の是正措置
排水先の管理者、土地所有者の同意書該当する場合
他法令の許認可等を受けた(見込みの)書面該当する場合

受理されるまで着工してはいけない

43条運用通知は、農業委員会が届出者に次のことを十分に説明するよう定めています。

法第43条第1項の規定による届出は農業委員会において受理されるまでは届出の効力が発生しないことを届出者に対して十分に説明し、受理通知書の交付があるまでは、農作物栽培高度化施設の設置に係る行為に着手しないよう指導する。(43条運用通知 第3の2(5))

受理通知書は、遅くとも届出書の到達から2週間以内に届出者に届くよう事務処理を行うこととされています(同(6))。

権利を取得して設置する場合

農地を借りて(または買って)高度化施設を設置する場合は、3条許可の申請と併せて43条の届出が必要です(43条運用通知 第4の1(1))。また、施設を賃借する場合も、賃借人は高度化施設用地を使用収益する権利を持つことになるため、3条許可が必要です(同(3))。

増改築・建替えは再度の届出

設置した施設を増改築・建替えする場合は、改めて43条の届出が必要です(43条運用通知 第5)。


設置後の注意点─ 栽培をやめると「違反転用」に

栽培されていなければ遊休農地・勧告の対象

高度化施設用地は農地と同様に扱われるため、農業委員会の利用状況調査の対象になります。営農計画書で栽培が行われているべき時期に、次の状態であれば遊休農地と判断されます(43条運用通知 第4の2(1))。

  • 栽培が行われていない → 1号遊休農地
  • 栽培面積が営農計画書からおおむね2割以上縮小 → 2号遊休農地

栽培されていない場合、農業委員会は理由を聞き取ります。やむを得ない理由でおおむね1か月以内に栽培する意向があれば再調査となりますが、そうでなければ利用意向調査とあわせて、農作物の栽培を行うべき旨の勧告(農地法第44条)が行われます。勧告の「相当の期限」は6か月以内が原則です(同(4)③)。

栽培しないことが確実になると違反転用

勧告の期限を過ぎても栽培されない場合や、所有者等が栽培しない意思を示した場合などは、「農地を農地以外のものにする」行為に当たることになります(43条運用通知 第4の3(1)②)。転用許可を受けていないので、違反転用として都道府県知事等に報告され、原状回復命令などの処分の対象になりえます。

処分の対象は、施設の設置者です(「農地法の運用について」第2の7(2)ア)。

地主さんへの注意点
土地を貸して事業者に高度化施設を設置させる場合、43条運用通知は、農業委員会が土地所有者に対し、事業者が撤退した場合の混乱を防ぐため、原状回復の義務は誰にあるか、原状回復の費用は誰が負担するかなどを、あらかじめ当事者間で取り決めておくよう周知することとしています(第3の2(2))。契約書でしっかり定めておきましょう。

内部を倉庫や直売所に使うのもNG

施設の内部を倉庫や飲食店、直売所などとして利用することは、高度化施設用地を農作物の栽培以外の用に供することになります。一時的であっても転用許可が必要です(43条運用通知 第4の3(1)(2))。


まとめ

  • 農地法43条の届出をすれば、底面をコンクリートで覆った栽培施設も農地のまま扱われ、転用許可・農振の開発許可が不要
  • 基準は、専ら栽培用、高さ(棟8m・軒6m以内)と日影(2時間以上の日影を生じさせない)、排水の同意、標識、土地所有者の同意など
  • 事務所・駐車場・トイレ等の附帯設備は含まれない(別途転用許可の検討が必要)
  • 受理通知が届くまで着工しない。増改築・建替えは再届出
  • 栽培をやめると遊休農地の勧告、さらに違反転用として処分の対象になりうる

参考資料

  • 農地法(令和7年6月1日施行版)第43条、第44条、第51条
  • 農地法施行規則(令和7年7月28日施行版)第88条の2、第88条の3
  • 「農地法第43条及び第44条の運用について」の制定について(平成30年11月20日 30経営第1796号 農林水産省経営局長通知)
  • 「農地法の運用について」の制定について 第1、第2の7
  • 農業振興地域の整備に関する法律(令和7年6月1日施行版)第15条の2
  • 令和5年 地方分権改革に関する提案募集 提案事項(管理番号61)