育成就労制度で外国人を受け入れる企業のことを「育成就労実施者」と呼びます。これは技能実習制度における「実習実施者」に相当する立場ですが、育成就労制度では新たな要件がいくつか追加されることになります。
この記事では、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」の記述に基づき、育成就労実施者に求められる要件を整理し、技能実習制度からの変更点を含めて解説します。
育成就労実施者の要件は技能実習制度の要件を引き継ぐ
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」によると、育成就労制度も技能実習制度と同じく人材育成を目的とする制度であることから、受入れ機関ごとの受入れ人数枠を含む育成・支援体制等の要件については、技能実習制度のものを基本的に引き継ぐとされています。
つまり、これまで実習実施者として技能実習生を受け入れてきた企業にとって、まったくゼロから体制を作り直す必要があるわけではありません。ただし、これに加えて新たに設けられる要件があるため、その内容を正確に把握しておく必要があります。
新たに設けられる要件
同Q&Aでは、育成就労実施者に新たに求められる要件として、次のようなものが挙げられています。
1. 行方不明者を発生させていないこと
過去1年以内に、育成就労実施者または監理支援機関の責めに帰すべき事由により、育成就労外国人の行方不明者を発生させていないことが求められます。外国人の失踪・行方不明は技能実習制度でも大きな問題とされてきましたが、育成就労制度でもこの点は受入れ機関の要件として明確に位置づけられています。
2. 同種業務の労働者を離職させていないこと
過去1年以内に、育成就労外国人に従事させる予定の業務と同種の業務に従事していた労働者を離職させていないことが要件とされています。ただし、労働者が自発的に離職した場合などは除かれます。これは、外国人材の受入れを理由に日本人・既存労働者の雇用機会が奪われることを防ぐための規定と考えられます。
3. 労働・社会保険・租税に関する法令の遵守
労働関係法令、社会保険関係法令、租税に関する法令をきちんと遵守していることが求められます。これは外国人材の受入れに限らず、企業経営の基本ですが、育成就労実施者としての適格性を判断するうえで明示的な要件として位置づけられています。
4. 送出機関等からの不当な利益供与を受けていないこと
送出機関等から、社会通念上相当と認められる程度を超えて、金銭・物品その他の財産上の利益の供与や供応接待を受けることなどを行っていないことも要件です。送出機関との不透明な関係を排除し、外国人からの不当な費用徴収につながる構造を断つ狙いがあると考えられます。
5. 労働条件等の待遇説明を直接またはオンラインで実施
育成就労外国人と雇用契約を締結するにあたり、労働条件等の待遇について、直接またはオンラインで説明を行っていることが求められます。書面の交付だけでなく、口頭での説明機会を設けることが重視されています。
6. 受入れ対象分野別の協議会への加入
受入れを行う産業分野ごとに設置される協議会への加入も要件とされています。分野別の協議会は、各分野における適正な受入れの実現に向けた情報共有や連携の場として位置づけられており、加入は受入れ機関としての基本的な条件になります。
受入れ人数枠の要件も忘れずに
育成就労実施者の要件には、上記のような遵守事項に加えて「受入れ人数枠」の考え方も含まれています。常勤職員数に応じた受入れ上限が設けられ、優良な育成就労実施者であれば人数枠の拡大が認められる仕組みです。受入れ人数枠の具体的な計算方法については、別記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
今から準備しておきたいこと
これらの要件のうち、行方不明者の未発生や離職者の未発生に関する要件は「過去1年以内」という実績を問うものであるため、施行日が近づいてから慌てて対応できるものではありません。日頃からの適正な労務管理、外国人材への丁寧な対応が、育成就労実施者としての適格性に直結することになります。
まとめ
育成就労実施者に求められる要件は、技能実習制度の実習実施者要件を土台としつつ、行方不明者の未発生、既存労働者の保護、法令遵守、送出機関との適正な関係、待遇説明の実施、分野別協議会への加入といった新たな要件が加わる形になっています。制度移行に向けて、自社の受入れ体制がこれらの要件を満たしているか、早めに確認しておくことをおすすめします。
育成就労実施者としての体制整備についてご相談がある企業様は、外国人材の在留手続に詳しい行政書士までお気軽にお問い合わせください。
