特定技能の在留資格で外国人を受け入れている企業(特定技能所属機関)には、さまざまな場面で出入国在留管理庁長官への届出義務が課されています。この届出を怠ったり、虚偽の届出をしたりすると、罰則の対象になることもあります。本記事では、出入国管理及び難民認定法(入管法)第19条の18および第71条の4の条文内容に基づき、特定技能所属機関に求められる届出義務と、違反した場合の罰則について解説します。
特定技能所属機関とは
入管法第2条の5第3項は、特定技能雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関を指して、以降の条文で「特定技能所属機関」という用語を用いています。特定技能所属機関は、特定技能外国人と雇用契約を結ぶだけでなく、契約内容や支援計画について法律上の基準を満たす必要があります(詳しくは別記事「特定技能雇用契約に求められる基準とは」「一号特定技能外国人支援計画の作成義務とは」をご参照ください)。
随時届出:一定の事由が生じたときの届出(入管法第19条の18第1項)
入管法第19条の18第1項は、特定技能所属機関は、次の各号のいずれかに該当するときは、法務省令で定めるところにより、出入国在留管理庁長官に対し、その旨および法務省令で定める事項を届け出なければならないとしています。
一 特定技能雇用契約の変更(法務省令で定める軽微な変更を除く)をしたとき、もしくは特定技能雇用契約が終了したとき、または新たな特定技能雇用契約の締結をしたとき 二 一号特定技能外国人支援計画の変更(法務省令で定める軽微な変更を除く)をしたとき 三 第2条の5第5項の契約(登録支援機関への支援委託契約)の締結もしくは変更(法務省令で定める軽微な変更を除く)をしたとき、または当該契約が終了したとき 四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める場合に該当するとき
つまり、雇用契約の内容変更・終了・新規締結、支援計画の変更、登録支援機関への委託契約の締結・変更・終了といった、外国人の受入れ状況に重要な変化があった場合には、その都度届出をしなければならないということです。
定期届出:受入れ状況等に関する届出(入管法第19条の18第2項)
入管法第19条の18第2項は、特定技能所属機関は、前項の規定により届出をする場合を除くほか、法務省令で定めるところにより、出入国在留管理庁長官に対し、次に掲げる事項を届け出なければならないとしています。
一 受け入れている特定技能外国人の氏名およびその活動の内容その他の法務省令で定める事項 二 第2条の5第6項の規定により適合一号特定技能外国人支援計画を作成した場合には、その実施の状況(契約により登録支援機関に適合一号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託したときを除く) 三 前二号に掲げるもののほか、特定技能外国人の在留管理に必要なものとして法務省令で定める事項
これは、随時届出とは異なり、定期的に受入れ状況を報告することを求める規定です。受け入れている特定技能外国人の氏名や活動内容、支援計画の実施状況(自社で実施している場合)などを、継続的に出入国在留管理庁に報告する必要があります。
届出義務違反の罰則(入管法第71条の4)
これらの届出義務を怠った場合、どのような罰則が科されるのでしょうか。入管法第71条の4は、次のように定めています。
次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
一 第19条の18第1項(第1号に係る部分に限る)もしくは第2項(第1号に係る部分に限る)の規定による届出をせず、または虚偽の届出をした者 二 第19条の20第1項の規定による報告もしくは帳簿書類の提出もしくは提示をせず、もしくは虚偽の報告もしくは虚偽の帳簿書類の提出もしくは提示をし、または同項の規定による質問に対して答弁をせず、もしくは虚偽の答弁をし、もしくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、もしくは忌避した者
一号の対象は、入管法第19条の18第1項第1号(特定技能雇用契約の変更・終了・新規締結に関する届出)および第2項第1号(受け入れている特定技能外国人の氏名・活動内容等に関する届出)に限定されています。この部分の届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
二号は、出入国在留管理庁長官による報告徴収・立入検査(入管法第19条の20第1項)への対応義務を定めたもので、報告や帳簿書類の提出・提示を拒んだり、虚偽の報告をしたり、質問に答弁しなかったり検査を拒否・妨害・忌避したりした場合も、同様に30万円以下の罰金の対象となります。
なお、入管法第19条の18第1項第2号から第4号までの届出義務(支援計画の変更、登録支援機関との契約の締結・変更・終了、その他法務省令で定める場合)、および第2項第2号・第3号の届出義務(支援計画の実施状況、その他法務省令で定める事項)については、第71条の4の罰則とは別に、他の条文(過料規定など)が適用される場合があります。届出事項によって適用される規定が異なる点には注意が必要です。
指導・助言、報告徴収、改善命令の仕組み
罰則の前提として、入管法には特定技能所属機関に対する行政上の関与の仕組みも整備されています。
- 入管法第19条の19:出入国在留管理庁長官は、特定技能雇用契約の適合性、一号特定技能外国人支援計画の適正な実施などを確保するために必要があると認めるときは、特定技能所属機関に対し、必要な指導および助言を行うことができる
- 入管法第19条の20:出入国在留管理庁長官は、必要な限度において、特定技能所属機関やその役職員に対し、報告もしくは帳簿書類の提出・提示を命じ、出頭を求め、または入国審査官もしくは入国警備官に関係人への質問や事業所への立入検査を行わせることができる
- 入管法第19条の21:出入国在留管理庁長官は、指導・助言等で確保されるべき事項が確保されていないと認めるときは、特定技能所属機関に対し、期限を定めてその改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができ、この改善命令をした場合にはその旨を公示しなければならない
このように、届出義務違反は罰則の対象となるだけでなく、指導・助言や改善命令、さらには公示(企業名の公表)につながる可能性もあるため、企業としては軽視できないリスクといえます。
受入れ機関が実務上押さえておくべきポイント
- 特定技能雇用契約の変更・終了・新規締結があった場合は、速やかに届出を行う
- 一号特定技能外国人支援計画の変更があった場合も届出が必要
- 登録支援機関との委託契約を締結・変更・終了した場合も届出が必要
- 受け入れている特定技能外国人の氏名・活動内容等について、定期的な届出を怠らない
- 出入国在留管理庁からの報告徴収や立入検査には誠実に対応する
- 届出事項ごとに適用される罰則・過料の規定が異なることを理解し、社内の管理体制を整備する
よくある質問
Q. 届出を忘れていた場合、すぐに罰則が科されるのですか。
届出漏れが判明した場合には、まずは速やかに届出を行うことが求められます。罰則の適用は個別の事情によって判断されますが、届出義務違反そのものが罰則の対象となり得るため、日頃からの管理体制の整備が重要です。
Q. 支援計画の実施状況の届出も罰則の対象ですか。
入管法第71条の4の罰則は、第19条の18第1項第1号および第2項第1号に係る部分に限定されています。支援計画の実施状況等(第2項第2号・第3号)については別の規定が適用される場合がありますので、詳細は専門家にご確認ください。
まとめ
特定技能所属機関には、特定技能雇用契約や支援計画の変更・終了、登録支援機関との契約に関する随時の届出義務と、受入れ状況に関する定期的な届出義務が課されています。これらのうち一定の届出義務違反については、30万円以下の罰金という罰則が定められているほか、報告徴収・立入検査への非協力にも同様の罰則があります。届出漏れは罰則だけでなく指導・助言や改善命令、公示にもつながりかねないため、社内の管理体制をしっかり整備しておくことが重要です。具体的な届出事項や実務対応については、行政書士等の専門家にご相談ください。
