特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、単に雇用契約を結ぶだけでなく、その外国人が日本での生活や仕事に適応できるよう支援する計画を作成する義務が課されています。これが「一号特定技能外国人支援計画」です。本記事では、出入国管理及び難民認定法(入管法)第2条の5の条文内容に基づき、この支援計画の作成義務とその内容について解説します。
一号特定技能外国人支援計画の作成義務
入管法第2条の5第6項は、次のように定めています。別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動を行おうとする外国人と特定技能雇用契約を締結しようとする本邦の公私の機関は、法務省令で定めるところにより、当該機関が当該外国人に対して行う、同号に掲げる活動を行おうとする外国人が当該活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援(「一号特定技能外国人支援」)の実施に関する計画(「一号特定技能外国人支援計画」)を作成しなければならないとされています。
つまり、特定技能1号の外国人と雇用契約を結ぼうとする受入れ機関には、職業生活・日常生活・社会生活の3つの側面から外国人を支援するための計画を、あらかじめ作成することが法律上義務付けられているということです。特定技能2号の外国人については、この作成義務の対象外とされている点にも注意が必要です。
一号特定技能外国人支援に含まれる内容
入管法第2条の5第7項は、一号特定技能外国人支援に含まれるべき内容について、次のように定めています。
一号特定技能外国人支援には、別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動を行おうとする外国人と日本人との交流の促進に係る支援、および当該外国人がその責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合において、他の本邦の公私の機関との特定技能雇用契約に基づいて同号に掲げる活動を行うことができるようにするための支援を含むものとするとされています。
この条文から読み取れる支援内容のポイントは、大きく2つに分けられます。
- 日本人との交流の促進に係る支援:地域社会に円滑に溶け込めるよう、日本人との交流機会を設けること
- 転職支援:本人の責めに帰すべき事由によらずに(たとえば受入れ機関側の都合による解雇や倒産などにより)特定技能雇用契約が解除された場合に、他の受入れ機関との契約に基づいて引き続き活動を続けられるよう支援すること
このように、一号特定技能外国人支援は、単に日常生活のサポートにとどまらず、万が一契約が解除された場合のセーフティネットとしての機能も求められている点が特徴です。
支援計画は法務省令で定める基準に適合する必要がある
入管法第2条の5第8項は、一号特定技能外国人支援計画は、法務省令で定める基準に適合するものでなければならないとしています。作成した計画が形式だけのものであってはならず、実効性のある内容であることが求められます。
支援計画の実施状況は在留資格審査にも関わる
一号特定技能外国人支援計画は、単に作成すればよいというものではなく、その内容が適正であることが、特定技能雇用契約に基づく活動を行う外国人の上陸審査等にも影響します。入管法第7条第1項第2号は、上陸のための条件として、別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動を行おうとする外国人については、一号特定技能外国人支援計画が入管法第2条の5第6項および第7項の規定に適合するものであることを含むとしています。つまり、支援計画の内容が不十分であれば、そもそも外国人の上陸自体が認められない可能性があるということです。
登録支援機関への委託
支援計画の実施は、必ずしも受入れ機関が自社で行わなければならないわけではありません。入管法第19条の22第2項は、特定技能所属機関は、契約により他の者に一号特定技能外国人支援の全部または一部の実施を委託することができるとしています。
また、前述のとおり、入管法第2条の5第5項では、特定技能所属機関が契約により登録支援機関に適合一号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託する場合には、当該特定技能所属機関は、支援計画の適正な実施に関する基準(第3項第2号)に適合するものとみなすとされています。自社に支援のノウハウやリソースが不足している場合には、登録支援機関に委託することで、この基準を満たすことができる仕組みになっています。登録支援機関の登録要件については、別記事「登録支援機関になるための登録要件・欠格事由」で解説していますので、あわせてご参照ください。
受入れ機関に求められる実務対応
一号特定技能外国人支援計画に関して、受入れ機関が実務上押さえておくべきポイントは次のとおりです。
- 特定技能1号の外国人と契約を締結する前に、支援計画を作成しておく必要がある
- 支援計画には、職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援内容を具体的に定める
- 日本人との交流促進に関する支援を計画に盛り込む
- 本人の責めに帰すべき事由によらない契約解除があった場合の転職支援についても計画に含める
- 自社で対応が難しい場合は、登録支援機関への委託を検討する
- 支援計画の実施状況について、出入国在留管理庁への報告・届出義務があることにも留意する(詳しくは別記事「特定技能所属機関に課される届出義務と罰則」を参照)
よくある質問
Q. 特定技能2号の外国人にも支援計画は必要ですか。
入管法第2条の5第6項は「別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動を行おうとする外国人」、つまり特定技能1号を対象としており、特定技能2号については支援計画の作成義務の対象とされていません。
Q. 支援計画の実施を委託すれば、受入れ機関としての責任はなくなりますか。
登録支援機関に支援業務の全部を委託した場合でも、特定技能雇用契約の適正な履行など、受入れ機関としての基本的な責務は残ります。委託によって基準への適合が図られる部分と、受入れ機関自身が引き続き負う責任がある部分を正しく理解しておく必要があります。
まとめ
特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、職業生活・日常生活・社会生活の各面から外国人を支援する「一号特定技能外国人支援計画」を作成する義務があります。この計画には、日本人との交流促進や、契約解除時の転職支援なども含める必要があり、法務省令で定める基準に適合していることが求められます。自社での対応が難しい場合は、登録支援機関への委託も選択肢となります。支援計画の作成・実施については専門的な知識が必要となる場面が多いため、行政書士等の専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
