外国人従業員が転職したり、出向したり、副業として別の会社でも働き始めたりした場合、「所属機関に関する届出」が必要になることがあります。この届出は、中長期在留者が受け入れられている機関の情報を出入国在留管理庁が継続的に把握するための制度で、対象となる在留資格や状況によって届出の要否が異なります。本記事では、出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」の内容に基づき、転職・出向・二重就労のケースごとに届出の要否を整理します。

所属機関に関する届出制度の基本

出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」によると、所属機関とは、現在の活動を行っている機関または契約した企業等のことを指します。届出の対象となる在留資格は多岐にわたりますが、代表的なものとして「技術・人文知識・国際業務」「研究」「介護」「興行」「技能」「特定技能」などが挙げられます(このほか「教授」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「教育」「企業内転勤」「技能実習」「留学」「研修」の在留資格をもって在留する方も対象です)。

同Q&AのQ4によれば、所属機関に関する届出は、「会社を辞めた」「新しい会社に入社した」等の届出事由の発生日から14日以内に提出する必要があります。また、Q3では、届出に係る資料(雇用契約書など)は不要とされています。郵送で提出する場合は在留カードの写しを同封する必要があります。

転職の場合の届出

外国人従業員が転職した場合、原則として所属機関に関する届出が必要です。出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」Q11によれば、転職しても在留期限がまだ残っている場合には所属機関に関する届出が必要であり、転職後の活動が、現に有する在留資格に該当する活動であれば、引き続き在留できるとされています。

ただし、届出の要否は、転職と同時にどのような手続を行ったかによって変わります。

  • Q9:転職と同時に在留期間更新許可を受けた場合でも、転職に係る所属機関の届出は必要
  • Q10:転職と同時に在留資格変更許可を受けた場合は、転職に係る所属機関の届出は不要

つまり、在留資格変更許可の手続の中で新しい所属機関の情報が申請内容に反映されるため、別途の届出は不要となる一方、在留期間更新許可はあくまで在留期間の更新にとどまるため、所属機関の変更については別途の届出が必要になるという整理です。

なお、Q6では「来月転職する予定ですが、先に届出を出すことができますか」という質問に対し、未来日を届出事由発生日とする届出はできず、実際に転職等の事実が発生してから届出をするよう案内されています。転職が確定していても、実際に退職・入社した後でなければ届出はできません。

出向の場合の届出

出向についても、原則として届出が必要です。出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」Q16によれば、「他の機関に出向することになりました。届出は必要ですか」という質問に対し、届出が必要であると回答されています。その理由として、出向先が管理する場所において、相当期間にわたり、出向先の社員として稼働することとなるため、現在の所属機関からの離脱と出向先への移籍の届出をする必要があるとされています。

つまり、単なる一時的な応援出張などとは異なり、出向先の指揮命令のもとで相当期間働く実態がある場合には、「所属機関が変わった」ものとして扱われるということです。

二重就労(ダブルワーク)の場合の届出

副業や兼業により、複数の会社で働くケースについても、出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」では明確な基準が示されています。

Q14では、「現在働いている会社で働きながら、別の会社でも3日間働くことになりました。届出は必要ですか」という質問に対し、届出は不要と回答されています。一方、Q15では、「現在働いている会社で働きながら、別の会社でも長期間働くことになりました。届出は必要ですか」という質問に対し、届出が必要であるとされています。

Q15の回答によれば、ダブルワークや別の会社を設立したことにより、所属機関が2か所以上になる場合は、別の会社への移籍の届出をする必要があります。その際、現在働いている会社を移籍前の機関として扱い、名称の後に「(二重契約)」と記載することとされています。つまり、短期間・一時的な副業であれば届出は不要ですが、長期にわたって複数の所属先を持つことになる場合には、その旨を届け出る必要があるということです。

派遣先が変わった場合

派遣社員として働く外国人従業員についても、独自の取扱いがあります。出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」Q17によれば、「派遣会社は変わらず、派遣先が変わりました。届出は必要ですか」という質問に対し、届出が必要と回答されています。活動機関を届け出る必要があるため、従前の派遣先からの離脱および新しい派遣先への移籍の届出を行う必要があるとされています。派遣元の会社が変わらなくても、実際に業務を行う派遣先が変わった場合には、活動機関の変更として届出の対象になる点に注意が必要です。

届出が不要なケースもある

一方で、所属機関自体に実質的な変更がない場合には、届出は不要とされています。たとえば、Q12では「所属機関は変わりませんが、契約内容が変わりました。届出が必要ですか」という質問に対し、活動機関や契約機関が変わった場合に届出をするものであり、契約内容の変更のみであれば届出は不要とされています。また、Q13では、新規の上陸許可を受けて予定していた機関に予定どおり所属した場合も、届出は不要とされています。

届出内容の記載方法

実際に届出を行う際の記載方法についても、Q&Aで案内されています。Q31によれば、「新たな機関における活動の内容」には仕事の内容を記載すればよく、大学教授などの職業名を記載しても差し支えないとされています。

まとめ

外国人従業員の転職・出向・二重就労の場面では、所属機関に関する届出の要否をケースごとに正しく判断する必要があります。転職の場合は原則届出が必要(ただし在留資格変更許可を同時に受けた場合は不要)、出向の場合は届出が必要、二重就労は長期にわたる場合のみ届出が必要という整理がポイントです。届出を怠ると罰則の対象となる可能性もありますので、人事担当者としては、従業員の就労状況の変化を把握した際に、都度届出の要否を確認する体制を整えておくことが望まれます。個別の状況については、行政書士等の専門家にご相談されることをおすすめします。