外国人を雇用する企業の人事担当者や、転職を考えている外国人労働者から「就労資格証明書は必ず取らなければいけないのですか」という質問をよく受けます。結論から言うと、就労資格証明書の取得は法律上の義務ではありません。しかし、取得しておくことで採用や転職の場面での安心材料になる書類でもあります。本記事では、出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」の内容をもとに、就労資格証明書の性質と取得の要否について解説します。
就労資格証明書とは何か
出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」Q68によると、就労資格証明書とは、雇用主と外国人双方の利便性を図るため、外国人が希望する場合に、その方が行うことができる就労活動を具体的に示す証明書とされています。つまり、「この人はこの内容の仕事であれば正式に就労が認められています」ということを、出入国在留管理庁が公式に証明してくれる書類です。
在留カードには在留資格の種類は記載されていますが、「具体的にどのような業務内容であれば、その在留資格に該当する活動として認められるのか」までは、カード単体からは判断しきれない場合があります。特に「技術・人文知識・国際業務」のような在留資格は、認められる活動の範囲が抽象的な表現で定められているため、個別の業務が該当するかどうかの判断が難しいことも少なくありません。こうした場面で威力を発揮するのが就労資格証明書です。
取得は義務ではない
同Q&Aでは、就労資格証明書は外国人が希望する場合に交付されるものであるため、就労資格証明書の交付を受けていないと就労活動ができないというものではないと明記されています。就労可能な在留資格や資格外活動の許可を有していることを、旅券の証印や在留カード等で確認できれば十分とされています。
つまり、外国人労働者が就労資格証明書を持っていないからといって、それだけで違法な就労をしているということにはなりません。在留カードや資格外活動許可書の内容から、行っている業務が在留資格に合致していると判断できるのであれば、法律上の問題はないということです。
それでも取得しておくメリットがある場面
義務ではないとはいえ、就労資格証明書の取得が実務上役立つ場面は少なくありません。代表的なのが転職のケースです。
出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」Q36では、「日本で働いており、在留期限は2年先なのですが、転職しました。仕事内容は前の仕事と同様ですが、(例えば)『技術・人文知識・国際業務』の在留資格で行うことができる活動に含まれるかどうかを確認したい」という質問に対し、就労資格証明書の交付申請を行うことで証明を受けることができると案内されています。
転職後、在留期間の更新や在留資格の変更手続をすぐに行うわけではないケースでは、転職後の業務が現在の在留資格の範囲内に収まっているかどうかが不明確になりがちです。そこで、あらかじめ就労資格証明書の交付を受けておけば、本人にとっても雇用主にとっても「この業務内容であれば問題なく就労できる」という安心材料になります。
雇用主側から見ても、面接や採用の段階で就労資格証明書の提示を求めることで、その方の業務内容が在留資格に合致しているかどうかを、出入国在留管理庁のお墨付きという形で確認できるというメリットがあります(雇用時の確認ポイントについては別記事「外国人採用の面接で確認すべき在留資格・在留カードのチェックポイント」もご参照ください)。
申請先に関する注意点
就労資格証明書の申請先については注意が必要です。出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」Q37によると、就労資格証明書は住居地を管轄する地方出入国在留管理局等に申請する必要があり、勤務先所在地を管轄する地方出入国在留管理局では申請できないとされています。勤務先が住居地と異なる管轄区域にある場合でも、あくまで申請先は本人の住居地を基準に決まる点に注意しましょう。なお、この取扱いは在留期間の更新申請や在留資格の変更申請の場合も同様です。
就労資格証明書を取得しておくべきケース
以上を踏まえると、次のようなケースでは就労資格証明書の取得を検討する価値があります。
- 転職により業務内容が変わったが、在留期間はまだ十分に残っており、すぐに在留期間更新や在留資格変更の手続を行う予定がない場合
- 転職後の業務内容が、現在保有している在留資格の活動範囲に含まれるか判断に迷う場合
- 雇用主側が、採用予定の外国人の業務内容が在留資格に合致しているかを客観的に確認したい場合
一方で、在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請を行う予定がある場合には、その申請の中で業務内容の適合性が審査されるため、別途就労資格証明書を取得する必要性は低いといえます。
よくある質問
Q. 就労資格証明書を取得していないと、転職時に何か不利益がありますか。
取得していないこと自体が直接的な不利益になるわけではありませんが、業務内容が在留資格に合致しているかどうかが不明確なまま就労を続けることになるため、万が一の際に説明がしづらくなるリスクはあります。心配な場合は取得を検討しましょう。
Q. 就労資格証明書はどこで申請できますか。
本人の住居地を管轄する地方出入国在留管理局等で申請します。勤務先の所在地を管轄する官署では申請できませんので注意してください。
まとめ
就労資格証明書は、外国人が希望する場合に交付される任意の証明書であり、取得しなければ就労できないというものではありません。しかし、転職などにより業務内容が変わった際、在留資格との適合性を明確にしておきたい場合には、取得しておくことで本人・雇用主双方にとって安心材料となります。申請先は住居地を管轄する地方出入国在留管理局等である点にも注意が必要です。個別の状況によって判断が異なりますので、詳細は行政書士等の専門家にご相談ください。
