育成就労制度の話をすると、必ずと言っていいほど出てくる疑問が「特定技能制度と何が違うのか」というものです。どちらも人手不足分野で外国人を受け入れるための制度であり、名前だけを見ると混同しやすいのですが、制度の狙いも仕組みも大きく異なります。
この記事では、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」の記述をもとに、育成就労制度と特定技能制度の違いを整理し、受入れを検討する企業がどちらの制度を前提に準備すればよいのかを考えるヒントを提供します。
共通点:どちらも深刻な人手不足への対応策
まず押さえておきたいのは、育成就労制度と特定技能制度は「深刻な人手不足に対応するための制度である」という点で共通しているということです。出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」でも、この共通点が明記されています。
しかし、共通しているのはそこまでで、対象とする外国人材の位置づけや在留期間、受入れ企業に求められる義務には明確な違いがあります。
違い1:求められる技能・専門性のレベル
もっとも大きな違いは、受け入れる外国人に「入国の時点で」どの程度の専門性や技能を求めるかという点です。
- 特定技能制度:一定の専門性や技能を有し、「即戦力となる人材」を受け入れることを想定した制度
- 育成就労制度:入国時点ではそうした専門性や技能は求められない制度
つまり、特定技能はすでに一定レベルのスキルを持つ人材を採用する制度であるのに対し、育成就労は日本で働きながら特定技能1号レベルまで育てていく制度、という違いがあります。
違い2:在留できる期間の上限
在留期間の上限にも明確な差があります。
- 育成就労:原則3年
- 特定技能1号:原則5年
- 特定技能2号:在留可能な期間の上限なし
育成就労で3年間就労した後、技能や日本語能力の試験に合格すれば特定技能1号へ、さらに要件を満たせば特定技能2号へとステップアップしていく流れが、制度全体を通じて想定されています。特定技能2号に上限がないのは、より高度な熟練技能を持つ人材として長期的な就労が見込まれるためです。
違い3:外国人保護の仕組みと受入れ企業の義務
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」では、両制度の運用上の違いとして次のような点も挙げられています。
育成就労制度では、
- 育成就労計画の認定制度
- 監理支援機関の許可制度
など、適正な育成就労の実施を担保する仕組みが設けられているほか、外国人が送出機関に支払う費用が不当に高額にならないようにする仕組みも導入されており、外国人保護に関する制度が手厚く整備されています。
一方、特定技能制度では、受入れ企業(特定技能所属機関)に対して外国人への「支援義務」が課される仕組みになっています。これは、生活オリエンテーションや相談対応、日本語学習の機会提供などを企業自身(または登録支援機関への委託により)行う義務です。
このように、育成就労制度は「育成の過程」に着目した保護の仕組みが中心であるのに対し、特定技能制度は「就労中の生活・キャリア支援」に着目した義務が中心になっている、という違いがあります。
受入れを検討する企業はどちらを選ぶべきか
すでに一定の技能・知識・日本語能力を持つ外国人を即戦力として採用したい場合は特定技能制度が、逆に日本で一から技能を育てながら長期的な人材確保につなげたい場合は育成就労制度が、それぞれの制度趣旨に合致しています。
なお、育成就労で3年間の育成を経た外国人は、要件を満たせば特定技能1号へ移行できる仕組みになっており、両制度は「別々の制度」というより「連続するキャリアパス」として設計されている点も見逃せません。この移行要件については別記事で詳しく解説しています。
まとめ
育成就労制度と特定技能制度は、どちらも人手不足対応という共通の目的を持ちながら、求める技能水準・在留期間の上限・企業に課される義務という点で明確に役割分担がなされています。自社がどのような人材を求めているのかを整理したうえで、どちらの制度を軸に受入れ体制を組むべきか検討することが重要です。
制度選択や受入れ準備でお悩みの企業様は、外国人材の在留手続に詳しい行政書士にご相談ください。
