在留特別許可は、本来であれば退去強制の対象となる外国人に対して、例外的に日本での在留を認めるという、いわば最後の砦のような制度です。今回は、出入国在留管理庁の「退去強制手続・出国命令制度・上陸拒否期間の短縮決定Q&A」のQ31・Q33・Q34をもとに、在留特別許可の基本的な仕組みと、国際結婚のケースで考慮される事情について解説します。

在留特別許可とは何か

退去強制手続Q&AのQ31では、在留特別許可について次のように説明されています。

在留特別許可は、退去強制事由(入管法第24条)のいずれかに該当し、本来、我が国から退去される外国人に対して、法務大臣が例外的・恩恵的に在留を許可する措置です。在留特別許可をするかどうかについては、個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に考慮した上で判断されます。(退去強制手続Q&A Q31より)

つまり、在留特別許可は「権利」として当然に認められるものではなく、法務大臣の裁量による「例外的・恩恵的」な措置であるという点が大きな特徴です。退去強制事由に該当している以上、原則として退去させられる立場にある方に対し、諸般の事情を踏まえて特別に在留を認めるかどうかが判断されます。

また、同じQ31では、「退去強制令書を発付された外国人は、速やかに本邦から退去することが原則となるため、退去強制令書が発付された後の事情変更等は原則として考慮されません」とも述べられています。つまり、在留特別許可を検討してもらうためには、退去強制令書が発付される前の段階で、しかるべき手続きの中で事情を主張していく必要があるということです。

日本人と結婚していれば必ず許可されるわけではない

国際結婚をしている方からよくいただく質問が、「日本人と結婚していれば在留特別許可がもらえるのではないか」というものです。この点について、退去強制手続Q&AのQ33では次のように説明されています。

退去強制事由のいずれかに該当する場合には、原則として退去強制されることとなります。日本人と結婚していることや家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性は、積極要素として考慮されますが、これらの事情があったとしても在留特別許可になるとは限りません。
これらの事情のほか、日本人との結婚に実態があるのかどうか、子どもを監護養育している実態があるのかどうかを含め諸般の事情を総合的に考慮した上で在留特別許可をするかどうかについて判断されます。(退去強制手続Q&A Q33より)

ここで重要なのは、日本人との結婚や、日本で生まれ育った子どもの存在は、あくまで「積極要素」として考慮される事情の一つに過ぎないという点です。それだけで自動的に在留特別許可が認められるわけではなく、結婚の実態(本当に夫婦として生活しているか)や、子どもの監護養育の実態(実際に親として子どもの世話をしているか)なども含めて、総合的に判断されます。

制度が悪用されないための配慮もある

さらに、退去強制手続Q&AのQ34では、次のような質問と回答が示されています。

在留特別許可になるために、日本人と結婚していたり、日本で生まれたり幼少期から日本で生活している子どもがいるなどの事情が利用されることになりませんか。
(回答)退去強制事由のいずれかに該当する場合には、原則として退去強制されることとなり、在留特別許可は、飽くまでも例外的・恩恵的な措置にとどまります。その上で、在留特別許可をするかどうかの判断に当たっては、他の不法滞在者に与える影響を含めた諸般の事情を総合的に考慮し、適正に運用しています。(退去強制手続Q&A Q34より)

この回答からもわかるように、出入国在留管理庁は、結婚や子どもの存在を形式的に利用しようとするケースが生じないよう、諸般の事情を総合的に考慮する運用を行っています。裏を返せば、実態のある婚姻関係や親子関係であることを、きちんと資料をもって示すことが重要だということです。

実務上のポイント

国際結婚のケースで在留特別許可を検討する際には、次のような点が重要になります。

  • 婚姻の実態を示す資料:同居の実績、生活費の分担状況、写真や連絡記録など、夫婦としての生活実態を客観的に示す資料を準備することが望ましいでしょう。
  • 子どもとの関係を示す資料:養育費の負担状況、学校行事への参加、通院への付き添いなど、監護養育の実態を示す資料も重要です。
  • 早期の対応が重要:退去強制令書が発付された後は、原則としてそれ以降の事情変更が考慮されません。不法滞在の状態に気づいた時点、あるいは退去強制手続が始まった早い段階で、専門家に相談することが望まれます。

まとめ

  • 在留特別許可は、退去強制事由に該当する外国人に対して、法務大臣が例外的・恩恵的に在留を認める制度です。
  • 日本人との結婚や子どもの存在は積極要素として考慮されますが、それだけで許可されるとは限らず、結婚や親子関係の実態が重視されます。
  • 退去強制令書が発付された後は原則として事情変更が考慮されないため、できるだけ早い段階での対応が重要です。

在留特別許可に関するご相談は、ご本人やご家族にとって非常にデリケートで不安の大きいものです。当事務所では、事情を丁寧に伺いながら、必要な資料の整理をサポートしています。お一人で悩まず、まずはご相談ください。

出典:出入国在留管理庁「退去強制手続・出国命令制度・上陸拒否期間の短縮決定Q&A」Q31、Q33、Q34