外国人が日本で起業しようとする場合、会社設立や事業所の確保、銀行口座の開設といった準備には一定の時間がかかります。しかし、通常の在留資格「経営・管理」は、事業がすでに開始されているか、少なくとも事業所として使う施設が確保されていることが前提となっており、準備段階の外国人がすぐに取得できる在留資格ではありません。
そこで設けられているのが、特定活動の在留資格による「起業準備」の仕組みです。この記事では、出入国在留管理庁の資料「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件」(特定活動告示)の第四十四号の内容に基づき、外国人起業活動管理支援計画による起業準備ビザについて解説します。
特定活動告示第44号の内容
特定活動告示第四十四号によると、この活動は次のように定義されています。
「経済産業大臣が認定した外国人起業活動管理支援計画(外国人起業活動促進事業に関する告示にいう外国人起業活動管理支援計画をいう。)に基づき、起業準備活動計画(同告示にいう起業準備活動計画をいう。)の確認を受けた者が、二年を超えない期間で、本邦において当該起業準備活動計画に係る貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為を行う活動及び当該活動に附随して行う報酬を受ける活動又は本邦において当該起業準備活動計画に係る貿易その他の事業の経営を開始した後引き続き当該事業の経営を行う活動(風俗営業活動を除く。)」
やや長い条文ですが、要点を整理すると次のようになります。
- 経済産業大臣が認定した「外国人起業活動管理支援計画」に基づいて実施される制度であること
- 外国人自身の「起業準備活動計画」について確認を受ける必要があること
- 在留期間は2年を超えない範囲であること
- 活動内容は、事業所の確保などの起業準備行為、またはそれに付随する報酬を受ける活動
- 事業の経営を開始した後は、引き続き当該事業の経営を行う活動も含まれること
- 風俗営業に関する活動は対象外であること
つまりこの制度は、経済産業省が認定した支援機関(自治体や創業支援団体など)のサポートを受けながら、外国人が日本で起業準備を進め、実際に事業を開始した後もそのまま事業経営を継続できる仕組みになっています。
配偶者・子の在留も可能
特定活動告示第四十五号では、この起業準備活動を指定されて在留する者の扶養を受ける配偶者または子が行う日常的な活動についても、特定活動の対象として定められています。これにより、起業準備のために来日する外国人が家族を帯同することも可能になっています。
なぜこのような制度があるのか
背景には、優秀な外国人起業家を日本に呼び込みたいという政策的な狙いがあると考えられます。前述のとおり、通常の経営・管理ビザは、事業所の確保や一定の資本金・常勤職員といった要件を満たす必要があり、起業の準備段階にある外国人がいきなり取得するのは容易ではありません(経営・管理ビザの具体的な要件については、別記事「経営・管理ビザの要件(資本金・常勤職員)とは」で解説しています)。
そこで、地方自治体などが実施する起業支援プログラムに参加し、経済産業大臣の認定を受けた計画に沿って準備を進める外国人については、特定活動という形で一定期間(2年以内)の滞在を認め、その間に事業所の確保、資金調達、許認可の取得といった準備を行えるようにしているわけです。
経営・管理ビザとのつながり
この起業準備活動には、実務上見逃せない重要なポイントがあります。出入国在留管理庁の資料「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」(上陸基準省令)の経営・管理の項を確認すると、経営・管理ビザの要件のひとつである「事業の経営又は管理について3年以上の経験」について、次のようなカッコ書きが付されています。
「特定活動の在留資格(法第七条第一項第二号の告示で定める活動のうち本邦において貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為を行う活動を含む活動を指定されたものに限る。)をもって本邦に在留していた期間がある場合には、当該期間を含む。」
つまり、この起業準備の特定活動で日本に在留していた期間は、経営・管理ビザの「3年以上の経営管理経験」の要件を判断する際にカウントされるということです。これは、起業準備段階から実際の経営開始、そして経営・管理ビザへの移行までを一連のキャリアパスとして制度上つなげる設計になっていることを示しています。
制度利用の流れ(イメージ)
条文の内容から、制度利用の大まかな流れは次のようになると考えられます。
- 地方自治体などが実施する外国人起業活動促進事業に参加し、起業準備活動計画について経済産業大臣(実務上は経済産業局等)の認定・確認を受ける
- 認定された計画に基づき、特定活動(起業準備)の在留資格で来日・在留し、事業所の確保、法人設立準備、資金調達などを進める
- 準備が整い次第、事業を開始し、引き続き特定活動のまま事業経営を継続することも可能(在留期間は通算2年以内)
- 経営・管理ビザの要件(事業所の存在、資本金等3000万円以上、常勤職員の雇用など)を満たした段階で、経営・管理ビザへの在留資格変更を行う
実務上の注意点
この制度を利用するためには、まず経済産業大臣が認定した「外国人起業活動管理支援計画」を実施している自治体・支援機関を見つけ、そのプログラムに応募して起業準備活動計画の確認を受ける必要があります。誰でも自由に申請できる制度ではなく、対象となる自治体や支援機関の公募スケジュール、審査基準を事前に確認することが重要です。
また、在留期間の上限が2年である点にも注意が必要です。この期間内に事業を軌道に乗せ、経営・管理ビザへの移行、あるいは高度専門職ビザへの移行などにつなげていく必要があります。準備段階から出口(在留資格の移行)を見据えたスケジュールを組むことが、事業の安定的な継続にとって重要になります。
まとめ
外国人起業活動管理支援計画による起業準備ビザは、経済産業大臣の認定を受けた支援計画のもとで、外国人が最長2年間、特定活動の在留資格により日本での起業準備や事業経営を行うことができる制度です。この期間は経営・管理ビザの「3年以上の経営管理経験」要件にも算入されるため、起業準備から本格的な事業経営、経営・管理ビザ取得までを見据えたキャリア設計が可能になっています。
海外から日本での起業をお考えの方、あるいは自治体の起業支援プログラムへの参加を検討されている外国人の方は、在留資格の選び方や申請スケジュールについて、外国人在留手続に詳しい行政書士までお気軽にご相談ください。