「日本人の配偶者等」の在留資格をもつ方が、配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合、原則として在留資格取消しの対象になり得ることは、別記事でご説明したとおりです。しかし、離婚やDV(配偶者からの暴力)といった事情を抱える方にとって、これは非常に不安の大きい話です。

大切なのは、こうした事情があっても「正当な理由」があると認められれば、在留資格は取り消されないという点です。この記事では、出入国在留管理庁の「出入国審査・在留審査Q&A」Q78が示す「正当な理由」の具体例を、当事者の立場に寄り添いながら解説していきます。デリケートなテーマですので、ご自身の状況に不安がある方は、この記事を読んだうえで、できるだけ早く専門家や支援機関に相談されることをおすすめします。

「正当な理由」として認められ得る4つのケース

出入国審査・在留審査Q&AのQ78では、「正当な理由」の有無は個別具体的に判断されるとしたうえで、次のようなケースについては「正当な理由」があるものとして在留資格の取消しの対象とはならない場合があると説明されています。

(1) 配偶者からの暴力(いわゆるDV(ドメスティックバイオレンス))を理由として、一時的に避難又は保護を必要としている場合
(2) 子供の養育等やむを得ない事情のために配偶者と別居しているが、生計を一にしている場合
(3) 本国の親族の傷病等の理由により、再入国許可(みなし再入国許可を含む。)により長期間出国している場合
(4) 離婚調停又は離婚訴訟中の場合
(出入国審査・在留審査Q&A Q78より)

一つずつ、もう少し詳しく見ていきましょう。

(1)DV被害による避難・保護が必要な場合

配偶者からの暴力を理由に、家庭から一時的に避難したり、シェルターなどで保護を受けたりしている場合には、「配偶者としての活動を行っていない」状態であっても、それは本人の意思や責任によるものではありません。そのため、正当な理由があるものとして取消しの対象とはならないとされています。DV被害に遭われている方が、在留資格を失うことを恐れて相談をためらってしまうケースは少なくありませんが、この規定があることを知っておくことは、安心して支援を求める第一歩になります。

(2)子どもの養育など、やむを得ない事情による別居

離婚には至っていないものの、子どもの養育などの事情から配偶者と別居しているケースもあります。この場合、夫婦として同居していなくても、経済的に生計を一にしている(家計を共にしている)のであれば、正当な理由として考慮され得るとされています。

(3)本国の親族の傷病等による長期出国

配偶者の本国にいる家族が病気やけがをしたために、再入国許可(みなし再入国許可を含む)を得て長期間日本を離れているようなケースも想定されています。家族の事情でやむを得ず日本を離れている間、配偶者としての活動が形式的に行われていない状態になったとしても、それだけで不利益を受けることのないよう配慮されています。

(4)離婚調停・離婚訴訟中の場合

離婚が成立していなくても、調停や訴訟という法的な手続きの最中であれば、それ自体が正当な理由として考慮され得るとされています。離婚手続きには一定の時間がかかることが多いため、その間の在留資格が不安定にならないよう配慮された規定といえます。

大切なのは「個別具体的な判断」であること

出入国在留管理庁は、「正当な理由」の有無について「個別具体的に判断する」としています。つまり、上記の4つのケースはあくまで例示であり、これに当てはまらないケースであっても、事情によっては正当な理由として認められる可能性があります。逆に、形式的に上記のケースに近いとしても、個々の事情によって判断が分かれることもあり得ます。

そのため、「自分のケースはこれに当てはまるだろうか」と一人で判断せず、できるだけ早い段階で専門家に相談し、事実関係を整理しておくことが重要です。特にDVのような深刻な事情を抱えている場合は、在留資格の問題だけでなく、安全の確保が最優先です。警察や配偶者暴力相談支援センターなど、専門の相談窓口と連携しながら対応を進めることをおすすめします。

手続きの流れについて

在留資格取消しの対象になり得ると判断された場合でも、いきなり取消しが決定するわけではありません。入国審査官による意見の聴取の手続きが設けられており、対象となる方(またはその代理人)は意見を述べたり、証拠を提出したりする機会が与えられます。DVや離婚といった事情がある場合には、この意見聴取の場で、置かれている状況を丁寧に説明することが大切です。

まとめ

  • 「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ方が配偶者としての活動を6か月以上行っていなくても、「正当な理由」があれば在留資格は取り消されません。
  • DV被害による避難・保護、子どもの養育のための別居、本国親族の傷病による長期出国、離婚調停・訴訟中であることなどが、正当な理由として考慮され得るケースとして挙げられています。
  • 「正当な理由」の判断は個別具体的に行われるため、ご自身の状況を専門家に相談し、必要な資料や事情説明を準備しておくことが大切です。

離婚やDVといったデリケートな事情を抱えている方は、決して一人で抱え込まないでください。当事務所では、安心して相談いただける体制を整えています。まずはお気軽にご相談ください。

出典:出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」Q78