在留資格「高度専門職」は、学歴・職歴・年収などの項目をポイント化し、合計70点以上で認定される仕組みです。この在留資格には、就労資格の中でも優遇措置が多く用意されており、経営者としてこの制度を活用したいと考える外国人の方も少なくありません。
高度専門職のポイント計算には、活動類型ごとに異なる配点表が用意されており、経営・管理に該当する活動(いわゆる「経営者区分」)には、他の区分にはない「地位」の項目や、独自の「特別加算」の項目が設けられています。この記事では、出入国在留管理庁の資料「出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令」の内容に基づき、経営者が活用できる特別加算の内容を解説します。
高度専門職の3つの区分とポイント制
同省令によると、高度専門職の在留資格に係る活動は、大きく3つに区分されています。
- 高度学術研究活動(イ):研究、研究の指導、教育を行う活動
- 高度専門・技術活動(ロ):自然科学・人文科学分野の専門的知識・技術を要する業務等
- 高度経営・管理活動(ハ):事業の経営または管理に従事する活動
このうち、経営者にあたるのは3つ目の「高度経営・管理活動(ハ)」です。この区分では、学歴・職歴・年収・地位・特別加算の各項目についてそれぞれ配点があり、合計70点以上であること、かつ活動機関及び外国所属機関から受ける報酬の年額の合計が300万円以上であることが基準とされています。
経営者区分ならではの「地位」項目
経営・管理活動の区分に特有の項目として「地位」があります。同省令の配点表では、次のように定められています。
- 活動機関の代表取締役、代表執行役または業務を執行する社員(代表権を有する者に限る)として事業の経営・管理に従事する:10点
- 活動機関の取締役、執行役または業務を執行する社員として事業の経営・管理に従事する(上記に該当する場合を除く):5点
つまり、代表権を持つトップの立場であるほど高い点数が得られる仕組みです。この「地位」項目は、研究者や技術者の区分にはない、経営者区分に固有のポイント項目である点が特徴です。
経営者区分の「年収」項目
年収についても、経営者区分は他の区分より高めの水準で配点が設定されています。
- 3000万円以上:50点
- 2500万円以上3000万円未満:40点
- 2000万円以上2500万円未満:30点
- 1500万円以上2000万円未満:20点
- 1000万円以上1500万円未満:10点
高度専門・技術活動の区分では年収400万円台から40点満点まで配点があるのに対し、経営者区分では最低ラインが1000万円からとなっており、より高い報酬水準が前提とされていることがわかります。事業の代表者としての責任の重さを反映した設計といえるでしょう。
経営者が使える特別加算の項目
そして今回特に注目したいのが「特別加算」の項目です。特別加算は、学歴・職歴・年収・地位だけでは測れない、事業の質や社会的意義を加点評価するための仕組みで、経営者区分には次のような加算項目が用意されています(該当する項目を積み上げて加点できます)。
- イ:活動機関が中小企業者であって、かつ、イノベーションの創出の促進に資するものとして法務大臣が告示で定める法律の規定に基づく認定等または補助金交付等の支援措置を受けている:20点
- ロ:活動機関が(中小企業者に限らず)イノベーションの創出の促進に資する認定等または支援措置を受けている(イに該当する場合を除く):10点
- ハ:申請等の日の属する事業年度の前事業年度において、活動機関(中小企業者に限る)に係る試験研究費等比率が100分の3を超えること:5点
- ニ:業務に関連する外国の資格、表彰その他の高度な専門知識・能力・経験を有していることを法務大臣が認めるもの:5点
- ホ:本邦の大学を卒業し、または大学院の課程を修了して学位を授与されたこと:10点
- ヘ:日本語を専攻して外国の大学を卒業、または高い水準の日本語能力を試験で証明:15点
- ト:一定の日本語能力を試験で証明(ホ・ヘに該当する場合を除く):10点
- チ:将来の成長発展が期待される分野の先端的な事業を担うと法務大臣が認めるもの:10点
- リ:法務大臣が告示で定める大学を卒業、または大学院課程を修了して学位を授与されたこと:10点
- ヌ:国等が実施する所定の研修を修了したこと:5点
- ル:本邦の公私の機関で貿易その他の事業の経営を行う場合、当該事業に自ら1億円以上を投資していること:5点
- ヲ:金融の機能強化に資するものとして法務大臣が告示で定める業務に従事すること:10点
- ワ:地方公共団体からの補助金交付等の支援を受けており、当該地方公共団体における高度人材外国人の受入れ促進に資すると法務大臣が認めるもの:10点
中小企業者のイノベーション促進支援措置に関する加算がポイント
これらの中でも実務上よく使われるのが、イとロの「中小企業者のイノベーション促進支援措置」に関する加算です。この加算は、自社が中小企業基本法上の中小企業者に該当し、かつ、法務大臣が告示で定めるイノベーション創出促進のための法律に基づく認定(例えば経営革新計画の承認など)や、関連する補助金交付等の支援措置を受けている場合に適用されます。
中小企業者に該当する場合は20点、中小企業者に限らず認定等・支援措置を受けている場合は10点と、中小企業者であることそのものが高い加点につながる設計になっています。スタートアップや中小規模の会社を経営する外国人経営者にとっては、学歴・職歴・年収だけでは70点に届かない場合でも、この特別加算をうまく活用することで基準点をクリアできる可能性があります。
特別加算を活用する際の実務上のポイント
特別加算の多くは「法務大臣が告示で定めるもの」に該当するかどうかがポイントとなります。どのような法律に基づく認定、どのような補助金が対象になるかは告示で個別に指定されているため、自社が受けている支援措置や認定がポイント加算の対象に該当するかどうかを、事前に確認しておくことが重要です。
また、複数の特別加算項目を組み合わせて申請することも可能ですので、経営者としての実績を棚卸しし、学歴・職歴・年収・地位に加えてどの特別加算が使えるかを整理することで、70点という基準点への到達可能性を高めることができます。
まとめ
高度専門職ポイント制において、経営者区分には「地位」という固有の加点項目があるほか、中小企業者のイノベーション促進支援措置に関する加算(20点・10点)をはじめとする豊富な特別加算の項目が用意されています。学歴・職歴・年収だけで70点に届かない場合でも、自社が受けている認定や支援措置を丁寧に洗い出すことで、加点の道が開ける可能性があります。
高度専門職ビザのポイント計算は項目が多岐にわたり、どの加算が自社の状況に当てはまるかの判断が難しい場合も多くあります。経営者としての高度専門職ビザ取得をご検討の方は、外国人在留手続に詳しい行政書士までお気軽にご相談ください。