「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するには、原則として大学卒業やこれに相当する教育、あるいは長年の実務経験が求められます。しかし、情報処理技術の分野には特別な例外規定があり、一定の試験に合格しているか、一定の資格を有していれば、学歴要件を満たしていなくても要件をクリアできる仕組みが用意されています。
本記事では、「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件」(平成二十五年法務省告示第四百三十七号)の内容をもとに、この特例制度を解説します。
特例が設けられている理由
上陸基準省令では、技術・人文知識分野の業務に従事する場合、原則として関連する科目を専攻して大学を卒業していること、専修学校の専門課程等を修了していること、または10年以上の実務経験を有していることのいずれかが必要とされています。
しかし、この省令にはただし書きがあり、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示で定める情報処理技術に関する試験に合格し、または法務大臣が告示で定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、学歴要件・実務経験要件を満たしていなくても差し支えないとされています。ITエンジニアは実務能力を客観的な試験合格や資格保有によって証明しやすい職種であるため、学歴によらない柔軟な認定の道が設けられているのです。
対象となる試験・資格の範囲
告示では、対象となる試験・資格が国・地域ごとに詳しく列挙されています。主な区分は以下のとおりです。
日本国内の試験
- 情報処理の促進に関する法律に基づき経済産業大臣が実施する情報処理安全確保支援士試験
- 同法に基づく情報処理技術者試験のうち、ITストラテジスト試験、システムアーキテクト試験、プロジェクトマネージャ試験、ネットワークスペシャリスト試験、データベーススペシャリスト試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験、ITサービスマネージャ試験、システム監査技術者試験、応用情報技術者試験、基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験
- 通商産業大臣又は経済産業大臣が過去に実施した情報処理技術者試験(第一種・第二種情報処理技術者試験、特種情報処理技術者試験、テクニカルエンジニア各種試験など、告示に列挙された旧試験区分を含む)
海外の試験
告示では、日本国内の試験に加えて、次の国・地域で実施される試験も対象として挙げられています。
- 中国(システム・アナリスト、ソフトウェア設計エンジニアなど)
- フィリピン(基本情報技術者、応用情報技術者に相当する試験)
- ベトナム(基本情報技術者、ソフトウェア開発技術者、応用情報技術者に相当する試験)
- ミャンマー、台湾、マレーシア、タイ、モンゴル、バングラデシュ(基本情報技術者・応用情報技術者に相当する試験)
- シンガポール(サーティファイド・IT・プロジェクト・マネージャ(CITPM))
- 韓国(情報処理技師、情報処理産業技師)
これらはいずれも各国の情報処理技術に関する専門機関や政府機関が実施・認定する試験であり、日本の情報処理技術者試験の相互認証制度の枠組みにおいて位置づけられています。
特例を活用する際のポイント
- 対象試験の合格証明書等の準備:特例を利用する場合は、該当する試験に合格したことを証明する合格証書や成績証明書などの資料を準備する必要があります。
- 業務内容が情報処理関連であること:この特例はあくまで「情報処理に関する技術又は知識を要する業務」に従事する場合に適用されるものです。従事しようとする業務が情報処理関連であることを明確にしておく必要があります。
- 報酬要件は別途満たす必要がある:学歴要件が試験合格により代替されたとしても、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けるという要件は別途満たす必要があります。
該当性の判断に注意
告示に列挙されている試験は非常に細かく、実施主体の名称変更や試験区分の統廃合を経ているものも含まれています。自分が保有している試験合格証や資格が、告示に定められたどの区分に該当するのか判断が難しい場合もあるため、申請前に告示の内容を正確に確認するか、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
情報処理技術に関する業務に従事しようとする外国人については、大学卒業等の学歴要件を満たしていなくても、法務大臣が告示で定める情報処理技術に関する試験に合格している場合、または資格を有している場合には、「技術・人文知識・国際業務」の学歴要件を満たしたものとして扱われる特例が設けられています。対象試験は日本国内の情報処理技術者試験だけでなく、中国、フィリピン、ベトナム、台湾、韓国など複数の国・地域の試験にも及びます。IT関連の就職を目指す留学生や、海外で情報処理技術に関する試験・資格を取得している方は、この特例の活用可能性を確認してみるとよいでしょう。該当性の判断に迷う場合は、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。