「日本人と離婚してしまったら、日本にいられなくなるのでしょうか」というご相談は、当事務所に寄せられる相談の中でも特に切実なものの一つです。インターネット上では「離婚後は定住者ビザに変更できる」という情報をよく見かけますが、実際の制度はどのようになっているのでしょうか。
この記事では、出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づく「定住者告示」(平成2年法務省告示第132号)第5号ロ・ハの規定を確認しながら、「定住者」という在留資格の仕組みと、離婚がどのように関わってくるのかを整理します。
まず押さえておきたいこと:告示第5号は「配偶者」に関する規定
定住者告示第5号は、日系人の血統に連なる方の「配偶者」について定めた規定です。告示の条文を確認すると、次のように定められています。
五 次のいずれかに該当する者(第一号から前号まで又は第八号に該当する者を除く。)に係るもの
イ 日本人の配偶者等の在留資格をもって在留する者で日本人の子として出生したものの配偶者
ロ 一年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留する者(第三号又は前号に掲げる地位を有する者として上陸の許可、在留資格の変更の許可又は在留資格の取得の許可を受けた者及びこの号に該当する者として上陸の許可を受けた者で当該在留期間中に離婚をしたものを除く。)の配偶者
ハ 第三号又は前号に掲げる地位を有する者として上陸の許可、在留資格の変更の許可又は在留資格の取得の許可を受けた者で一年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留するもの(この号に該当する者として上陸の許可を受けた者で当該在留期間中に離婚をしたものを除く。)の配偶者であって素行が善良であるもの
(定住者告示 第五号)
やや複雑な条文ですが、この第5号ロ・ハが定めているのは、「日本人の子として出生した者」(第3号)や「日本人の子でかつて日本国籍を有した者の実子」(第4号)に該当することで一年以上の在留期間の「定住者」資格を得ている方——いわば日系2世・3世としての定住者資格を持つ方——の「配偶者」に、定住者としての地位を認める規定です。つまり、ここで想定されている「配偶者」は、日本人そのものと結婚した方ではなく、日系人としての定住者資格を持つ方と結婚した外国籍の配偶者を指しています。
条文が明記する「離婚した場合の取扱い」
この第5号ロ・ハには、いずれも「当該在留期間中に離婚をしたものを除く」という除外規定が組み込まれています。つまり、定住者資格を得るための婚姻関係が、在留期間中に離婚によって終了した場合には、この号による定住者資格の取得(またはその継続)の対象からは外れることが、告示上明記されているのです。
この規定から読み取れるのは、「配偶者」としての定住者資格は、あくまで婚姻関係が継続していることを前提に認められるものであり、離婚によってその前提が失われれば、この号に基づく地位も失われる、という制度設計です。
「日本人と離婚した場合」の在留資格はどう考えるべきか
ここで注意が必要なのは、今回確認した定住者告示第5号ロ・ハは、日系人としての定住者資格を持つ方の配偶者についての規定であり、「日本人と結婚し、日本人の配偶者等の在留資格を持っていた方が離婚した場合」を直接定めたものではないという点です。
日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格を得ていた方が離婚した場合の取扱いについては、別記事「『日本人の配偶者等』の在留資格が取り消される場合(配偶者活動6か月以上不履行)」および「離婚・DVがあっても在留資格が取り消されない『正当な理由』とは」で解説しているとおり、配偶者としての活動を6か月以上行っていないことを理由に在留資格が取り消される可能性がある、という別の枠組みで扱われます。
離婚後も日本での生活基盤があり、引き続き在留を希望する場合には、個々の事情(滞在期間の長さ、子どもの有無、就労状況など)を踏まえて、どのような在留資格への変更が可能かを個別に検討していくことになります。定住者告示に明記された類型に該当しない場合であっても、出入国在留管理庁による個別の審査の中で在留の可否が判断される場合があるため、まずはご自身の状況を専門家と一緒に整理することが重要です。
実務上のポイント
- 定住者告示第5号ロ・ハは、あくまで「日系人としての定住者資格を持つ方の配偶者」に関する規定であり、日本人との離婚そのものを直接扱う条文ではない点を正しく理解しておく必要があります。
- 婚姻関係の状況(在留期間中の離婚の有無)は、定住者としての地位に直接影響することが告示上明記されています。
- 日本人との離婚後の在留資格については、配偶者としての活動実績や在留状況など、個々の事情を踏まえた検討が不可欠です。
まとめ
- 定住者告示第5号ロ・ハは、日系2世・3世に該当する定住者資格保持者の配偶者に定住者の地位を認める規定であり、婚姻関係が在留期間中に離婚によって終了した場合はこの号の対象から除外されると明記されています。
- 「日本人と離婚した後の定住者ビザ」という文脈でしばしば語られる話題は、実際にはこの告示とは別の枠組み(在留資格取消しに関するルールや個別の在留状況の審査)で扱われることが多く、混同しないよう注意が必要です。
- ご自身の在留資格がどのように扱われるかは個別の事情によって大きく異なるため、離婚を検討している段階、あるいは離婚が成立した段階で、できるだけ早く専門家にご相談ください。
離婚は人生の大きな転機であり、在留資格の問題は特に不安が大きいものです。当事務所では、状況を丁寧にお伺いしたうえで、最適な選択肢をご提案しています。
出典:出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件(平成2年法務省告示第132号)第五号