出入国在留管理庁のウェブサイトには、不法入国や不法残留などの退去強制事由に該当すると思われる外国人についての情報提供を呼びかけるページがあり、条件を満たせば通報者に「報償金」が交付される制度が設けられています。あまり知られていない制度ですが、外国人の適正な在留管理を支える仕組みの一つとして、入管法施行規則にも明記されています。

この記事では、出入国在留管理庁が公表している「退去強制手続・出国命令制度・上陸拒否期間の短縮決定Q&A」の内容をもとに、この情報提供・報償金制度がどのような仕組みになっているのか、行政書士の視点からわかりやすく整理します。

通報の方法

同Q&AのQ41によると、不法入国や不法残留などの退去強制事由に該当すると思料する外国人を知ったときは、電子メール又は最寄りの地方出入国在留管理官署に直接連絡することとされています。

なお、通報者からの問い合わせであっても、提供した情報に関する調査の状況や、退去強制令書が発付されたかどうかといった問い合わせには一切応じられないとされています。つまり、通報後にその外国人がどうなったのか、通報者側から経過を確認することはできない仕組みになっています。

匿名での通報は報償金の対象にならない

Q42では、匿名の通報でも報償金をもらえるかという点について説明されています。それによると、報償金を交付するためには通報者の氏名や職業等(国又は地方公共団体の職員であるかどうか)を確認する必要があるため、匿名の通報の場合は報償金の交付対象にはならないとされています。

また、通報が国又は地方公共団体の職員がその職務の遂行に伴い知り得た事実に基づくものであるときも、報償金の対象とはならないとされています。つまり、公務員がその職務上知り得た情報を通報しても、報償金は交付されないということです。あくまで一般の方からの自発的な情報提供を対象とした制度であることがうかがえます。

通報すれば必ず報償金がもらえるわけではない

Q43によると、実際に報償金を交付するか否かは、通報の内容等を踏まえ、個別の事案に応じて判断されるものであり、通報すれば必ず報償金が交付されるわけではないとされています。情報の具体性や、その後の調査・摘発への寄与度など、様々な事情が総合的に考慮されるものと考えられます。

報償金の交付可否はどうやって分かるのか

Q44では、報償金をもらえるかどうかをどうやって知ることができるのかが説明されています。報償金を交付することとなった場合は、地方出入国在留管理官署から通報者に対して連絡があるとされています。一方で、報償金を交付しない場合は、地方出入国在留管理官署から通報者への連絡は行われません。

つまり、通報後にしばらく連絡がない場合は、交付されないと判断されたということになります。通報者側から進捗を問い合わせても回答が得られない制度設計になっているため、この点はあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。

報償金の金額

Q45によると、報償金の額は、入管法施行規則第60条において「1件につき1,000円以上、5万円以下」と規定されています。金額に幅があり、具体的にいくらになるかは事案ごとに判断されるものと考えられます。決して高額な謝礼を期待できる制度ではなく、あくまで適正な出入国管理に協力してもらうための仕組みとして設計されていることがうかがえます。

報償金制度は差別や偏見を助長するものではないか

Q46では、報償金制度が外国人に対する差別や偏見を助長するのではないかという懸念について、出入国在留管理庁の見解が示されています。

それによると、我が国にいる外国人の一部には、不法入国や不法上陸をした人、在留期間を経過して不法残留をした人、不法就労をした人などがいるとした上で、報償金制度は、そのような退去強制事由に該当する者を摘発する上で、一般の方からの積極的な協力を期待して設けられた制度であると説明されています。また、法令に従い手続を進めた結果、退去強制が確定した者は速やかに我が国から退去することが原則であり、法令に違反する者に対して厳格に対応していくことは、外国人との秩序ある共生社会の実現のために必要であるとした上で、入管法の報償金制度は外国人に対する差別や偏見を助長するものではない、との立場が示されています。

実務上の注意点

この制度は、あくまで退去強制事由に該当すると思料される具体的な情報提供を対象とするものであり、単なる推測や感情的な通報を目的としたものではありません。また、通報者自身の身元確認が必要となるため、匿名での情報提供では報償金の対象にはならない点にも注意が必要です。

なお、勤務先の外国人従業員の在留資格について疑問がある場合など、企業の採用担当者としては、通報という手段の前に、在留カードの確認や就労資格証明書の取得など、適正な在留資格の確認を行うことが基本になります。不法就労助長罪のリスクを避けるためにも、日頃から在留資格のチェック体制を整えておくことが重要です。

まとめ

不法滞在者に関する情報提供・報償金制度は、電子メールや地方出入国在留管理官署への直接連絡によって通報でき、条件を満たせば1件につき1,000円以上5万円以下の報償金が交付される仕組みです。ただし、匿名の通報や公務員が職務上知り得た情報による通報は対象外とされ、通報すれば必ず交付されるわけでもありません。制度の仕組みを正しく理解した上で、適正な出入国管理への協力を検討することが大切です。

外国人材の受入れや在留資格に関するご相談は、外国人の在留手続に詳しい行政書士までお気軽にお問い合わせください。