在留期限を超えて日本に滞在してしまっている、いわゆる「不法残留」の状態にある方の中には、「入管に自ら出頭して申告すれば、それだけで問題が解決するのではないか」と考える方が少なくありません。しかし、実際にはそう単純な話ではありません。この記事では、出入国在留管理庁が公表している「退去強制手続・出国命令制度・上陸拒否期間の短縮決定Q&A」の内容をもとに、不法残留中に出頭申告した場合に法律上どのような扱いになるのかを、行政書士の視点から分かりやすく解説します。
出頭申告をしても「問題が解消された」わけではない
出入国在留管理庁のQ&Aによれば、地方出入国在留管理官署(いわゆる入管局)に外国人の方が出頭申告をしても、直ちに不法残留等の状態が解消されるわけではないとされています。
出頭申告をされた方の中には、「入管局に不法残留等を申告したので、法律的には何の問題もなくなった。法違反の状態は解消された。」と誤解される方が多いようですが、これは正しい理解ではありません。
出頭申告というのはあくまで「自分から入管に事情を伝える」という行為であり、それ自体が在留を認める効力を持つものではないのです。法務大臣から特別に在留が認められない限り、入管法に違反している状態そのものに変わりはありません。
原則として就労も認められない
出頭申告をした後も、法律上の状態が解消されていない以上、原則として就労も認められていません。そのため、出頭申告をした後に、それまで働いていた工場や会社などで、入管法違反(不法就労助長など)により摘発される事例もあり得るとされています。
つまり、「出頭申告をしたから安心して今までどおり働いてよい」というわけではないということです。この点は、生活の糧を得る必要がある方にとって非常に重要な注意点といえます。
出頭申告後にはどのような手続きが想定されるか
出頭申告をした後は、状況に応じて、退去強制手続や、一定の要件を満たす場合には出国命令制度の対象になることが考えられます。出国命令制度は、入管法違反者のうち一定の要件を満たす不法残留者について、収容をしないまま簡易な手続により出国させる制度です(この制度の詳細は別記事で解説しています)。
また、事案によっては、法務大臣の判断により例外的・恩恵的に在留が認められる「在留特別許可」という措置が検討される場合もあります。ただし、これはあくまで個々の事情を総合的に考慮した上での判断であり、出頭申告をしたからといって必ず認められるものではありません。
出頭を検討する際に知っておきたいこと
出頭申告は、今後の生活を立て直すための第一歩となり得る一方で、その後の手続きの見通しを正確に把握しないまま行動すると、思わぬ不利益を受ける可能性があります。たとえば、
- 出頭のタイミングや準備状況によって、その後の手続きの流れが大きく変わること
- 出国を希望するか、日本での在留継続を希望するかによって取るべき対応が異なること
- 出頭後に就労を続けることが法律違反となり得ること
といった点は、事前にしっかり理解しておく必要があります。
まとめ:まずは専門家にご相談を
不法残留の状態にあるとき、出頭申告は法律上の状態を直ちに解消するものではなく、その後の手続きも個々の事情によって大きく異なります。誤った理解のまま行動してしまうと、かえって不利な結果を招くこともあり得ます。
ご自身やご家族が不法残留の状態にあり、今後どうすればよいか悩まれている方は、弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。専門家に相談することで、現在の状況を正確に整理し、出国命令制度の利用可能性や在留特別許可の見込みなど、取り得る選択肢について具体的なアドバイスを受けることができます。落ち着いて、正確な情報に基づいた行動を取ることが、今後の生活を守る第一歩です。