はじめに
トラック・バス・タクシーなど自動車運送業の分野は、深刻な人手不足を背景に特定技能の対象分野に追加されました。もっとも、この分野でドライバーとして働くには自動車運転免許の取得や国内での実地の講習・指導が不可欠であり、他の特定技能分野とは異なる特有の準備プロセスが必要になります。
この記事では、「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件」(いわゆる特定活動告示、法務省告示第131号、最近改正令和8年4月8日法務省告示第31号)の第五十五号および別表第十六に基づき、自動車運送業分野で特定技能外国人を受け入れる前段階の「準備」の仕組みについて解説します。
自動車運送業分野には「準備」のための在留資格がある
同告示の第五十五号では、別表第十六に掲げる要件のいずれにも該当する者が、特定技能(法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に係るものに限る。)の在留資格への変更を受け、自動車運送業分野に属する技能を要する業務に従事する活動を行うことを目的として、次のような活動を行うことができる「特定活動」の枠組みが定められています。
- 法務大臣が指定する本邦の公私の機関と締結する雇用に関する契約(「特定自動車運送業準備雇用契約」)に基づき、講習及び指導(旅客自動車運送事業運輸規則第38条第1項及び第39条に規定する指導監督、同規則第38条第2項に規定する特別な指導、同条第5項に規定する指導、同条第2項に規定する適性診断を含む)を受けること
- 自動車運送業分野に属する技能を要する業務に付随する業務に従事すること
- 別表第十七に掲げる免許(大型・中型・準中型・普通自動車免許、大型・中型・普通自動車第二種免許等)を受けるために自動車教習所において自動車の運転に関する教習を受けること
つまり、特定技能(自動車運送業分野)としてすぐに就労を始めるのではなく、まずはこの特定活動の在留資格のもとで、必要な運転免許の取得や、旅客自動車運送事業運輸規則に基づく指導・適性診断などの「準備」を行う仕組みが用意されているということです。この準備の枠組みは、法務大臣が別に定める基準に適合する支援計画に基づき、職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援を受けられる環境のもとで実施されます。
別表第十六に定められた要件
この特定活動を行うためには、告示の別表第十六に掲げる次のような要件のすべてに該当する必要があります。
- 18歳以上であること
- 健康状態が良好であること
- 特定技能(自動車運送業分野)で従事する業務に必要な相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていること
- 本邦での生活に必要な日本語能力、及び当該業務に必要な日本語能力を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていること
- 退去強制令書の円滑な執行に協力するものとして法務大臣が告示で定める外国政府又は地域の権限ある機関の発行した旅券を所持していること
- 特定技能(1号)の在留資格をもって本邦に在留したことがある者にあっては、当該在留資格による在留期間が通算して5年に達していないこと
- 申請人またはその配偶者・直系若しくは同居の親族その他社会生活において密接な関係を有する者が、特定自動車運送業準備雇用契約に関連して保証金の徴収その他名目を問わず金銭等を管理されず、かつ違約金を定める契約等の不当な財産移転を予定する契約が締結されておらず、締結される見込みもないこと
- 特定自動車運送業準備雇用契約の申込みの取次ぎ等に関して外国の機関に費用を支払っている場合、その額及び内訳を十分に理解して当該機関との間で合意していること
- 申請人が国籍または住所を有する国・地域において遵守すべき手続が定められている場合、当該手続を経ていること
- 食費・居住費その他名目を問わず定期に負担する費用について、対価として供与される利益の内容を十分に理解した上で合意しており、費用の額が実費相当額等の適正な額であり、明細書等の書面が提示されること
- 労働者派遣の対象とすることを内容とする特定自動車運送業準備雇用契約を締結していないこと
これらの要件は、特定技能制度全般で見られる「保証金徴収の禁止」「費用の透明性確保」といった外国人保護の考え方を、自動車運送業分野の準備段階にもそのまま適用したものと言えます。
受入れ企業が押さえておくべきポイント
自動車運送業分野での特定技能外国人の受入れを検討する企業は、通常の特定技能雇用契約の準備に加えて、次の点を踏まえた準備が必要になります。
- 法務大臣が指定する機関であること:特定自動車運送業準備雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関は、法務大臣が指定するものに限られます。また、雇用契約自体も、法務大臣が別に定める特定自動車運送業準備雇用契約及びその相手方となる機関の基準に適合するものである必要があります。
- 旅客自動車運送事業運輸規則に基づく講習・指導体制の整備:単なる日本語講習や生活支援だけでなく、旅客自動車運送事業運輸規則が定める指導監督・特別な指導・適性診断といった運輸業特有の教育プロセスへの対応が求められます。
- 免許取得のサポート:外国人が日本の運転免許(大型・中型・準中型・普通自動車免許等)を取得するための自動車教習所での教習受講についても、受入れ体制の一部として計画しておく必要があります。
まとめ
自動車運送業(ドライバー)分野で特定技能外国人を受け入れるにあたっては、いきなり特定技能雇用契約を締結して就労を開始するのではなく、特定活動の在留資格のもとで運転免許の取得や旅客自動車運送事業運輸規則に基づく指導・適性診断といった準備プロセスを経る仕組みが用意されています。この準備段階に関する要件は、法務省告示の別表第十六に詳細に定められており、保証金徴収の禁止や費用の透明性確保など、外国人保護の観点からの要件も含まれています。
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